平松洋子さんの「ステーキを下町で」を読みました。
『ステーキを下町で/平松洋子著・谷口ジロー画(文春文庫)』を読みました。
読んで見て驚いたのは、ふつうのグルメ本的な「あそこの〇〇食べてみたら、ああうまかった」みたいなテレビ番組によくあるような脳天気なものではなかったことでした。
たとえば、豚丼のルーツ探しに帯広へ飛ぶのですが、なぜ「帯広で豚」なのか、歴史をたずね、「豚丼」というアイデアにたどり着いた過程や、名物料理にしていこうという現地の人達の頑張り、そしてそれを世代的に継いでいく様子、地元の人達と観光でやってくる人達の様子まで、丹念に書かれています。
もちろん、その名物料理「豚丼」を食べてみての、感想自体も素晴しい文章で書かれていました。
添えられている谷口ジローさんの漫画もいい効果を出していました。
岩手県三陸沿岸を走る三陸リアス線の久慈駅名物「うに弁当」を訪ねた際には、震災わずか五日後に意地と信念で運転再開を果たして日本中から拍手をあつめたその起点駅・久慈駅に行き、震災の影響で存続が危うくなった名物弁当がどういう経緯で復活したのかを書かれています。
震災時にはもちろん弁当どころではなかったのですが、命からがら非難してきた人達に「焚きだし」を必死にしていたそうです。
やがて電話が通じるようになると「お母さん、元気でよかった」とお店に電話がかかってくるようになったそうです。
「もう辞めようと思っている」というと、「今度行くからがんばって」の声をもらい、お見舞い金までもらうようになり、「辞めます」って言えなくなり、今年だけは・・と、なんとか頑張っているうちにかつてのお客さんが大学合格の報告に来たり、野菜を分けてくれたりで、結局何だかんだで続けることに・・、なんて話も書かれていました。
こんな話題がいっぱいのこの本、下北半島に鮟鱇(あんこう)の「雪中切り」を見に行ったり、沖縄に一度食べるとやみつきになる「沖縄すば(そば)」を食べに行ったり、日本中いったりきたりの旅と、そこで出会う人達との交流も楽しく、最後まで一気に読みました。
心も温かくなる本でした。
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