「今日もいち日、ぶじ日記/高山なおみ」を読みました。
『今日もいち日、ぶじ日記/高山なおみ著(新潮文庫)』を読みました。
これもブックオフにて安価購入。
著者、高山さんは吉祥寺「諸国空想料理店 kuukuu 」のシェフを経て料理家に。
その後、文筆家としてレシピ集、エッセイ、日記などの著書を刊行しています。
今回の「今日もいち日、ぶじ日記」は、平成23年3月の東日本大震災後、7月に入ってから高山さんが夫と幌付ジープに乗って被災地を巡ったときの日記と、住まいの東京から離れた山奥に土地と古い民家を求めて出掛け、それを夫婦して手に入れ、その後に少しずつ家、土地ともに手を入れていく時の日記に大きく分かれて書かれています。
いずれも、料理家の高山さんらしく、毎日食べたものについて必ず記載されていて、それがこの400頁にも及ぶ日記に“生き生き”とした印象を持たせています。
あのとき何を食べた、っていうのはけっこう見逃しがちですが、大切なことなんですよね。
震災後の現地を訪れた部分の日記には、そのとき現地での片づけの様子や、町の姿、人々がどんな暮らしをしていたか、また宿泊した宿の人、泊まっていた復興に携わっていた人達、その人達から聞いた震災当日の明暗を分けた行動などの話などが、高山さんらしい決して重くない筆致で書かれていて、資料的な価値もありながら、人の心の細部までにふれるようなこともあり、真剣に身を乗り出して読みました。
後半の山奥に土地と古民家を得てからの話では、自然の中で傷みの激しい古民家を夫婦で徐々に使えるようにしていく姿が、たいへんそうだけど、楽しく書かれていました。
私などは、もともと田舎育ちなので、近所の人達がいろいろなものを持ち寄ってくれたり、「梅の実など勝手にもいで漬けるといいよ」なんて言ってくれるのは当たり前の時代に育ったわけですが、高山さん夫婦には新鮮だったようです。
何よりも大自然の中、空気が澄んでいて、天気の良い日もあれば、雨の日もあり、寒い日もある・・という当たり前のことに新鮮な驚きを感じている高山さんの心と身体の動きの変化が逆にこちらには新鮮でした。
ただの日記と思うなかれ、とても読み応えのあるものでした。
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