「杉原千畝 情報に賭けた外交官」を読みました。
『杉原千畝 情報に賭けた外交官/白石仁章著(新潮文庫)』を読みました。
外務本省の意向に抗いながら1940年に日本への通過査証を発給し、六千人ともいわれるユダヤ難民の命を救った人物、「杉原千畝」については、テレビなどでその話を聞いたことがありました。
その果てに、戦後、外務省から逐われてしまう運命に。
でも、一切の釈明もしようとしなかった杉原。
夫人の幸子さんが『六千人の命のビザ』を千畝没後に上梓していますが、そのヒューマンな部分だけでなく、『インテリジェンス・オフィサー』としての杉原千畝に迫っているのがこの本でした。
インテリジェンスって、ここ何年かで、特に佐藤優さんの著書や発言などでよく耳にするようになりました。
インテリジェンスとは、膨大で雑多なインフォメーションから選り抜かれ、分析し抜かれた“ひとしずく”の情報を言う・・のだそうです。
この“ひとしずく”が国家が熾烈な国際政局を生き抜くための業の元となり、インテリジェンス・オフィサーは、ダイヤモンドのような情報を見つけ出し、国家の舵を取る者を誤りなき決断に導くことを使命としているわけです。
自らを厳しく律し、決して情報源を明かさないのがインテリジェンス・オフィサー。
情報の入手経路が分かってしまえば、相手側に災厄が及んでしまい、時には命まで喪われることに・・。
杉原が、命のヴィザと引き換えに、全欧の情報網から掴みとった一級のインテリジェンスは、本国統帥部に容れられませんでした。
杉原情報網を引きついだストックホルムの駐在武官小野寺信が発した「ヤルタ密約」の緊急電も、統帥部自ら破り捨てた疑いが濃いとのこと。
この本を読んでも、記録的には、杉原の情報収集の様子は完全に消されていて、逆にものすごく興味がわきました。
読めば読むほど、杉原千畝という人の「謎」の魅力に引き込まれるのです。
丹念に外務省に残された記録や、世界に存命している杉原と関わりを持った人の証言や証拠物件などから当時の杉原の仕事や、人となりに迫る内容の濃い本でした。
また後日読み返せば、もうひとつ別の杉原千畝が見えてきそうだ、とも思いました。
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