三國連太郎さんの対談本、奥が深過ぎて、少しだけ潜って帰って来ました。
『「芸能と差別」の深層/三國連太郎・沖浦和光〔対談〕(ちくま文庫)』を読みました。
1999年に解放出版社から刊行された上・下巻本を合本し、改題のうえ2005年に文庫化されたものです。
ブックオフにて安価購入。
俳優の三國連太郎さんと、比較文化論・社会思想史が専門の沖浦和光さんの対談本ですが、内容は表題どおり奥深く、俳優・・芸能・・わざおぎ・・シャーマンとさかのぼって行き、芸能の原始とシャーマニズムにまで話は進み、それは「芸能」と「差別」の関係へと発展していくのです。
私も最初のうちはなんとか付いていったのですが、歴史的なことや、宗教、過去からの芸能の変遷など、まるで勉強不足で途中から置いてけぼりになりました…σ(^_^;)
「芸能」はもともと「芸態」であって、国家組織ができる以前から芸態者の団体があったとのことで、その歴史をつぶさに調べると、日本の奴隷階級の起源と変遷がよくわかる・・ということにまで話が及びます。
芸能の起源は、呪術師であるシャーマンの所作にある、と、沖浦氏。
俳優は「わざおぎ」と読み、「俳」は「遊戯」すること。
「優」は神事に発した「遊楽」を指し、のちに演技する者を意味するようになったそうです。
・・なんとなく、聞いたことはある・・。
新春の祝福芸・萬歳から万才への変遷なども書かれていて、今現在の万才を見聞きしている身からすると、とても興味深い。
また神社の祭礼には必ず大道芸人や門付芸人の姿をかつては見かけたが、そこから香具師(やし)と的屋(てきや)にも話が及んで来ます。
第二次大戦前夜に発表された永井荷風の『墨東綺譚』に浅草を中心とする芸能とそれにまつわる様々なことが書かれていて、とても貴重だということにもふれていました。
『墨東綺譚』、もう一度読んでみようかと思いました。
途中で付いていくことが出来なくなったこの本ですが、三國さんの「芸能」「俳優」というものに対する眼差し、考え方に接し、そこまで突き詰めて生きているのか、演技をしているのか、とあらためて感じることの多い本でした。
文中に異なる視点から同様のことを研究していた小沢昭一さんについても書かれていましたが、小沢さんの関連本も何冊か持っているので、この本と比較しつつ、もう一度読んでみる価値がありそうだ、と思ったところで、今日の感想はおしまい。
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