太田和彦さんの「風に吹かれて、旅の酒」を読みました。
『風に吹かれて、旅の酒/太田和彦著(集英社文庫)』を読みました。
いつも旅と居酒屋中心のお話になる太田さんの文ですが、今回読んだ印象は、人生のけじめをあちこちでつけている、という感じでした。
自分の学生時代の作品を画集にして残す作業をしたり、故郷・松本の大学で一時教鞭をとっていた時の生徒達との再会(松本修学旅行と呼んでいた)を果たして、かつての生徒達の成長に目を細めたり、平成三十年度の文化庁長官表彰「日本の食文化について独自の視点による著述活動に対して」を受けた時の様子が書かれてあったり(居酒屋を通した食文化への寄与が最大の理由ですとの担当職員の話によろこんでいた)、かつての日本映画を次々と見て、往時の映画を振り返ったりもしていました。
あまりに、過去の整理をしているようで、ちょっと心配になりましたが、いやいや、これも太田さんが元気に“やりたくて”やっているのでした。
これでいいんだと思いました。ずぼらなようでキチッとしている太田さんらしいのです。
映画の振り返りの中で、昭和二十年代の映画に「喜劇・とんかつ一代」とか、「とんかつ大将」だとか、当時は「とんかつ」で映画が出来てしまうのだ、と驚くようなところもありました。
「とんかつ」って、ルーツは外国なのであろうに、すっかり日本の文化になっていますが(カレーやラーメンもそうかもしれない)、その頃の映画は、丁度「とんかつ」が文化になった頃だったのかもしれません。
太田さんは句会にも入っていて、いくつかの句を載せています。
扇風機黙る二人に風おくる
っていう句なのですが、私は同じ句会に入っていて紹介されていた戸田菜穂さんの
赤い爪足で向きかえ扇風機
にググッと惹かれました(^_^;)
さらに戸田さんの
百合の香にすべてゆだねる夜もあり
・・っていうこれは・・さらに艶っぽいです。
というわけで、今回は、お酒というよりも、今後に向けた太田さんの心構え的な内容のものになっていました。
枯淡の境地か、今後の太田さん、ますます楽しみです。
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