「迷走生活の方法/福岡伸一」を読みました。
『迷走生活の方法/福岡伸一著(文芸春秋)』を読みました。
中江有里さんが、朝のNHKラジオの本の紹介コーナーで“おすすめ”していたので、早速読んでみました。
著者、福岡伸一さんは、生物学者で、あまりテレビを見ない私は存知上げませんでした。面目ない。
この本で言う「迷走生活」とは、秘かなパワーを持つ“迷走”神経を活性化し、些事にとらわれず、朗らかに長生きする生活のこと、だそうです。簡単に言うとd(^_^o)
こんなご時世の中、コロナウイルスについても当然書かれていました。
想像ではあるが、元々は野生動物の身体に棲み着いていて、その野生動物にはほとんど危害を与えていなかったウイルスだったのでしょう。
でも、人間が生活圏を広げるために開発を行ったことで、これまでは存在していた生態学的なバリアがなくなり、接触する機会が生まれてしまった・・というわけです。
そして、人間の国際的な動きに乗じてここまでの急拡大となってしまった・・。
先生が言っていることの大きなことは、ヒト以外の生物はみな、種の保存が唯一無二の目的で、基本的に個体はそのためのツールでしかないが、ヒトだけは個体の生命の価値に気づいて、それを最大限尊重する道を選んだ・・そうですよねぇ。
逆に個と種のあいだに、国とか民族といった別の帰属システムを作り出してしまったので、ややこしいことになってしまったわけです。
現代人は、社会的・人間的なストレス環境に置かれて、それも恒常的なものになっていて、もう逃げられない。
その慢性的ストレス反応が、免疫システムをたえずいためつけてしまう・・という、福岡先生の考えがここでコロナと結びついてきます。
そして、また福岡先生の独特な視線が飛び出しました。
あの1970年の大阪万博、『太陽の塔』は、岡本太郎一流のアンチテーゼだったのだ、と。
お祭り広場を覆う大屋根を突き抜けて屹立する塔の姿自身に、縄文土器の火炎のような、太古の生命のダイナミズムが性的なまで体現されている一方で、苦悶と闇を内包しながら私たちの行く末を暗示していたのではないかと。
これは、今になって映画にもなったりしていましたが、「太陽の塔」について、そういう見方をする考え方が指摘されています。
私もそう思うのです。
「人類の進歩」に、ただ明るい未来が見えているわけではなかったのです。
それは今も変わらない。
もういくらなんでも、こういう考え方をする政治家が現われてもよさそうですが、出て来ないです。
いまだに、“右肩上がり”の成長を目指している人ばかり・・。
というわけで、この本の、ほんの一部のご紹介だけでも、これだけ話が広がります。
中江有里さんに教えていただいて、そして読んでよかった本です。
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