柴田錬三郎さんの「わが青春無頼帖」を読みました。
『わが青春無頼帖 -増補版-/柴田錬三郎著(中公文庫)』を読みました。
もともとの文が書かれたのは1960年代のものです。
私は柴田さんの著書を読んだことがなく、昔、テレビでクイズの回答者として出演されていて、とても人間味のある語り口調や、ウイットに富んだ回答が印象に残っています。
あのとき、かなりのおじいちゃんに見えたのですが、そんな歳ではなかったようです。
人生の年輪が表われていたんだな、と、この「青春無頼」な告白を読んだあとで思うことになりました。
戦時に、輸送船の備砲小隊付きの衛生兵として乗船し、その際に魚雷の攻撃に遭って沈没。
バシー海峡を泳ぎ、駆逐艦に救い上げられ命を取り留める話は、その惨状とは裏腹に、夢の中にでもいるような虚無状態であったと書かれていました。
後の「眠狂四郎」に通じるのか・・と思ってしまいましたが、「そんなインタビューでの質問をよく受ける」とご本人が書かれていました。
終戦後の柴田さんの作家生活というか、カストリ誌への原稿書きや、少年少女向けの原稿書きなどで食いつなぎ、そんな中で様々な人と出会い、様々な人が死に、様々な女性と“さまざまな関係”( ̄O ̄;)になり・・というところが柴田さん独特の筆致で書かれていて、こんな凄まじい生き方(次々に現われる女性と関係を結び、さらにその女性がどういう人生になっていったかの描写も凄い)をした人が、私がテレビで見た、あんな穏やかな表情をしていたのだ、と驚きました。
柴田さんの無頼帖のあとには、無頼帖に書かれていた事実そのものと言ってもいい私小説が数編付け加えられていて、そちらは小説仕立てになっているので、余計ドキドキするようなシーンばかりでした。
随筆含め、最初から最後まで読んでいるこちらが、時代もずいぶん違うのに、あっという間に引っ張り込まれるような感覚でのめり込みながら読みました。
すごい迫力の本でした。
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