「旅だから出逢えた言葉 Ⅱ/伊集院静」を読みました。
『旅だから出逢えた言葉 Ⅱ/伊集院静著(小学館文庫)』を読みました。
著者の伊集院さんが、旅に出て感じたこと、出会った人達からの心に響いた言葉などを綴ったものです。
伊集院さんが小説誌で対談をしたのは、故郷が同じ山崎まさよしさん。故郷は山口県防府市です。
同郷であるということと、伊集院さんのお父さんがかつて沖仲士(港湾での荷役の仕事)をしていたことがあったのですが、山崎さんも若い頃に同じ会社でアルバイトしたことがあるからだそうです。
山崎さんのシャイで繊細で、人柄が良く、真っ直ぐな性格に、「だからああいう歌を作れるんだ」と感じた伊集院さん。
インタビュアーに「おふたりの故郷はどんなところでしょうか」と聞かれ、今までも田舎で何もないところで上手く応えられなかった伊集院さんですが、山崎さんが少し考えてから、「夕陽の綺麗な町です」と応え、思わず息を飲んだそうです。
「どうしてあんなに何度も見ていた夕陽に気付かなかったのだと思った。たしかに夕陽が美しい町だ」・・と。
なんだかこれだけでいい話、いい言葉だと思いました。
伊集院さんが大学に入り、東京に出て来て出会った文学部の野口定男先生の言葉に、私も思わず「いいな」と思いました。
「これから皆さんが、この学舎でなすべきことは“探求”です。人間が何をして来たか、人間が何を考えて来たかを識ることが、皆さんは何であるかを識ることになります。」
私も常々思ってきました。
「人というものは何であるのか、自分は何ものなのか、それを知りたいがために、私は本を読んだり、勉強したり、様々な人との出会いを繰り返し、話を聴き、また聞いてもらい、動いて来たのです」
また別の話題。
伊集院さんが現在住んでいる仙台の鮨屋の主人が井上ひさしさんの色紙を見せてくれて(通常は井上さん、色紙など出されてもまず書かないのだそうです)、そこには
「難しいことを易しく 易しいことを深く 深いことを面白く」と書かれていたのだそうです。
“原稿棒読み”“人の質問に答えられない”どこかのエラい人に噛み締めてもらいたい言葉です。まずは人への話し方からやってもらわないと。
田辺聖子さんの言葉も響きました。
「私は戦後ほどなく作家になって、その頃は戦争で、夫を、家族を、恋人をなくした女性がいて、その人たちを元気づける小説が書きたかったの」
これを受けて、伊集院さん
「作家の何たるかが学べる一言である。人間には本当に必要なものがある。それを提供できる仕事を、本物の仕事というのではないか」
この言葉も今の政府の方々に聞かせたい言葉です。“馬の耳に念仏”だろうけど。・・おっと馬に失礼だった。
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