山崎まゆみさんの「女将は見た」を読みました。
『女将は見た -温泉旅館の表と裏-/山崎まゆみ著(文春文庫)』という本を読みました。
著者、山崎さんは、世界32ヶ国の温泉を巡り、「温泉での幸せな一期一会」をテーマに、雑誌や新聞、テレビ、ラジオなどでレポートを続け、大学でも「観光温泉学」の講師をされているとのこと。
今回は、旅館、ホテルのいわゆる「女将さん」を中心に様々な話を聞きながら、現在の温泉旅館・ホテルについて書かれていました。
「女将」というのは、単なる経営者でもなく、代表者でもなく、「地域の看板」であるということが多くの場合、あるようでした。
もともと温泉旅館をやっていた親のもとに生まれて、東京の大学、会社勤務などを経て地元に戻り女将になった人や、嫁いできて女将になった人などの苦労話は並大抵の頑張りではないものを感じました。
また、近年特に、災害や今回のウイルス感染下での旅館、ホテルのあり方なども実に積極的で、明るい話題も伴っての行動・手腕に驚きました。
著者が開いた「女将五人での座談会」は、読んでいるだけでにぎやかな話し声が聞こえてきそうな活発なものでした。
ご夫婦で宿泊された方に女将がお礼状を書いたら、奥さんから「主人はそちらに泊まったことはないはずです。誰と泊まったんですか。」というような電話が来てしまい、あわててしまった話なども飛び出していました。
「ご主人は“名のある方”なのですか」と聞き、「まあそうです」と奥さんが答えると、「きっとご主人がお付き合いの中で配られた名刺のお名前を気取って使われたのだと思います」などと咄嗟の機転でお話したら、奥さま「まあ、そうかしら」と機嫌を直したというエピソードなども語られていました。
本の内容は、老舗の旅館を守っていかなければならない厳しい状況のことや、新しいことを始めたときの周囲との軋轢などについて、多くの頁が割かれていましたが、でも次から次へと登場する女将さんの生き方には、こちらも元気が出るような思いでした。
こんな世情ですが、勇気の出る、いい本だと思いました。
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