五木寛之さんの「他力」を読みました。
『他力/五木寛之著(講談社文庫)』を読みました。
1998年に刊行され、2000年に単行本化されたものです。
20年以上も前の本ではありますが、いくつも私の心に響く部分がありましたので、それらを列挙してみたいと思います。
《非常時》
非常時とは、国家的、国際的に重大な危機に面した時、と捉えることができると思いますが、国家や社会の危機だけではなく、自殺、離婚、自己破産、失業、犯罪、汚職など、私たちの“魂の非常時”も非常時であると書かれています。
つまり、今、私たちは外側からも内側からも二重の“非常時”に直面しているのだ、と。
現状のウイルス感染拡大や、今回の豪雨による被害・災害など、常に私たちが直面しているこの“非常時”についての考え方が従来の考え方だけではいけないのではないか、ということが書かれていたのです。
《自分を信じ、自分を愛することからはじめる》
世界では各地で内戦が起こり、地球規模の環境破壊も起きている。世界が末期的症状にあえいでいる。
ひとりひとりの人間が「自分はどう生きるのか」を問われている、とおっしゃっていました。
それに対して「自分を信じ、自分を愛することから始めるしかないのではないか」と。
一生に誇るべきことをなしとげた人は、謙虚に感謝すればよく、もしできなくても恥じることはなく、生きることそのものが大変なことなのだから、それだけでほめられてもいい、ということでした。
どんな人生でも、それなりに一生懸命、必死で生き続けてきたことに違いはない、とおっしゃっています。
私にも心のささえになる言葉でした。
《人生は自分で放り出すほどにはひどくない》
空気も水も、ミカンでさえも陽射しをたっぷり吸収して金色に輝いていたミカンではなくなっていて、自然の中で生きている実感が、若い人には伝わりにくいのではないか、ということも書かれていました。
今の中高生に、「人生は喜びと希望に満ちている」と言っても、たぶん届かない。
むしろ、「人生は自分で放り出すほどにはひどくない」という言い方のほうがましかもしれないと。
《人生をどう制御して減速していくのか》
五木さんが若い頃は、クルマにスピードを求めていたが、今は、ブレーキを踏んだときに、グウッーと後ろから襟首をつかまれるような心地よい快感があって、それからビロードの布の上をすべりながら徐々にスピードを落としていくような感じ、ブレーキングの優れたクルマがいいとおっしゃっています。
ようするに「減速の美学」が大切な時代なのではないかと。
自分の人生をどう制御して減速していくか、という方向に注目すべきだとおっしゃっていて、私も同感しました。今、まさにそういう時期に私自身があるのです。
《民衆は愚かなものなのか》
戦中、戦後のこの国の指導者たちばかりが愚かで、民衆はその被害者である、というふうに言い切るわけにはいかないという考え方でした。
あのころの私たちは(おそらく戦時下のこと)、たしかに主体性がなく、ほとんど自明の状況を判断する知力すら欠けていたと認めざるをえないでしょう、ともおっしゃっていて、これは今現在の状況についても言えるのではないでしょうか。
「国がやるって言ってるんだから、大丈夫でしょう」ではなく、私たちが自ら考えて、危機意識を持って現状を考えることが、国の方向を変えることにつながるのではないでしょうか。
・・だから、微力だけど、ほんとうは書きたくないけど、私も自分の考えたことを、このブログで書いているのです。
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