9人の作家による、お酒のある風景の小説・エッセイ「もう一杯、飲む?」を読んだ。
『もう一杯、飲む?/角田光代・島本理生・燃え殻・朝倉かすみ・ラズウェル細木・越谷オサム・小泉武夫・岸本佐知子・北村薫 著(新潮文庫)』を読みました。
タイトルに書いたように、「お酒のある風景」をテーマに、9人の作家らが小説、エッセイを書いたものです。
作家もいれば、農学博士も、漫画家もいるという布陣です。なので、読んで見ると私の好みの作品もありましたが、そうでないものもありました。
一番“ズキン”と心に来たのは、角田光代さんの「冬の水族館」でした。
付き合いだした男女だったが、男は二週間後に結婚することを黙っていた。
問い詰めると男は本当のことを言って、いったんは別れるが、また数年後男には子供も出来ているのに、また会うことを始める男女。
やがて、それからも何年も経って、もう友達みたいになってしまった男女だが、とりあえず日帰りで温泉に入りに行ったりする。
緊張感もあまりないまま二人が行ってみると、温泉場は工事中で入れなく、たまたまあった水族館に行くことにする。それもやる気なくどうでもいい感じで。
その、なんとも言えない関係の中、二人が飲むビールの味は・・。
これはすごい、大人の物語で、大人でなければ書けない物語でした。
もうひとつ印象に残ったのが、越谷オサムさんの「カナリアたちの反省会」でした。
まさにこの本の仕事で酒のことを書こうとして深夜のファミレスでパソコンに原稿を書こうとしている著者の近くの席にやってきたアマチュアバンドのメンバーが主役になります。
バンドのメンバーは、反省会を始め、ソフトドリンクから話が白熱してきてアルコールに。
メンバーそれぞれが互いに思っていたことを打ちあけ始めると、なんだか私もバンドをやったことがあるけど、「なんでオレたちこんなことやってるんだろう」となってきて、その感じがとてもリアル。
最後は人と人の心の大切なふれ合う瞬間が垣間見えて、素敵なお話になっていました。
私も今度、酒の上でのお話、何か書いてみようかな、なんて変な心持ちになりました。
酒にはいつもドラマがついてきますからねぇ。
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