【南先生の玉手箱_0040_ 渡辺貞夫再発見 音楽演奏はうまくても感動はない】
私の中学時代の担任で美術の先生の現役時代の資料やメモなどの文書を掘り起こして活字化する作業。
今回は、平成15年6月12日の日付が入った「紙面研修」と書かれた綴りの中にあった一文のご紹介です。
以下、先生の文章です。
テレビでやっている人間ドキュメント、偶然に見た人が感動をして話してくれた。
内容が Jazz 若手ミュージシャンを育てるジャズ・ライブ・ツアーで、リーダーはあの渡辺貞夫。
サックス奏者として国際的にも有名な彼だった。
外国ものばかり聴いている中で、時々弟の渡辺文男氏はカルテット、又はクインテットでよく聴きに一宮ライブハウスに行ったものだが、兄さんのサックスについては、私ごと、あまり興味を持っていなかったのだが、この番組の録画テープを見せてもらってびっくり。
知らなかった。彼のすごさの一面を見せてもらった。
本物つくり、若手をしっかりと育てているビッグスターであること、日頃知っているつもりで理解していないことがたくさんあるものだ。
70歳過ぎた渡辺貞夫が、17歳・高校卒業の横山君とか言う青年を連れての演奏ツアーにでかけた時の様子を45分番組構成で見せてもらった。
他のピアノとベースのサイドメン二人は30歳くらいのプロである。
ジャズは特に譜面があっても、ないような、むしろ譜面のとおりではほとんどの場合、感動はないものです。
でも、これはジャズ以外でも同じことだと思っています。!
小学校時代からジャズドラムを叩いていたようで、自分でできる曲が2000曲以上あるとのこと。
レパートリーひとつとってみても、これは天才と言ってあたりまえで、本当にすごい男、又ジャズ界では宝ものであるにちがいないと思う。
全国ツアーの出発から録画がはじまった。
プロとはじめてのリハーサル、譜面的に考えれば何の心配もなくできるようなものと思うのだが、それがダメと言うか、どうにもならない。おまえは考えてばかり、またリズムをきちんと叩くばかりで。何の感動も伝わって来ない。
まいったなあ、今日は最悪だよなあ、もっと考えないで自由に大きくゆったりと、又、詩文で歌うように愉しくやってくれよ。
メンバーお互いが、曲の雰囲気を盛り上げるってことなのかも知れない。
いくらうまく叩いたってそんなのは何にもならないんだから、もっとステージの上で自分が生き生きと気持ちを開いて裸にならなければダメだよ。
頭じゃなくて、心のことか、とにかくきちんとリズムをとっていても、どうにもならない、よく言う言葉だが、自分なりのアドリブ編曲ができなければ、そしてメンバーお互いのかけひき、まあ言葉では説明できないところであるから、本人が体で感じとる問題であります。
さすがだと思いました。
全国ツアーのおわりの頃、やっと横山君の顔が明るく、ステージで気持ちよさそうに叩ける部分が見えてきた。
もちろん、同じ曲でも見ちがえるように内容が充実してきた。
聴く側もそれが分らなければ、他人の演奏についてどうのこうのと言えるものではないが、音楽の良さは特にライブにあると思っている。
スタジオ録音のものにはあまり興味がない。
ライブの中の生き生きとした盛り上がりと、メンバーの気持ちのやりとりがたまらなくいいものである。
あと10年?横山君はすごい男になると思う。
以上、先生の文でした。
私と先生の共通項のひとつに、“ジャズ”というキーワードがあります。
だから、今回活字化した文については、なんだかよくわかりました。
特にジャズって、「譜面」があったとしても、あまり大事じゃないんですよね。
アドリブもあるし、譜面の“行間”の演奏を聞くのもひとつの楽しみです。
そんなことについての、先生の感覚がわかる文章でした。
そして、渡辺貞夫さんについての再認識も。
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