【「東京でも揺れた大震災当日」のお話/過去に会った人、過去にあった出来事について振り返る №20】
過去に会った人、あった出来事についての回顧文シリーズ。
今回は、2011年3月11日のあの日、東京勤務時の話です。
14時46分、私たちは執務室にいました。
ぐらぐらっと来たかと思ったら、どんどん激しい揺れになり、大きなガラスが入った窓枠がグギグギ、ガガガガッと、ものすごい金属音を発し、棚にあったファイル、書籍が吹っ飛び、床に投げ出され、エレベーターホールからはエレベーターが壁にぶつかり、ガコン・ガコンとものすごい音が聞こえてきました。
女性職員は机の下に入り悲鳴をあげました。
私が窓の外を見ると、高層ビルがまるでコンニャクのようにクネクネと揺れていました・・。
お台場方面を見ると、あれっ!火の手が上がっている・・。
ホテル上階にあるウチの事務所ですが、下を見ると、ホテル庭の池の水がザブンザブンと外に飛び出していました。それに、人々が外に出て路上にあふれ、歩道上には収まりきれなくなって車道まで拡がっていました。
私は防災用ラジオのスイッチを入れ、情報を得ようとしました。
エレベーターは止っていたのですが、所属長の上司Aの指示で(その下の上司Bは年休を取っていなかった。いなくてよかった、二人とも事務所にいたら、その場は滅茶苦茶になっていたと思う)、階段で9階の事務所フロアから1階のロビーへ全員で降りました。
1階では、道行く人たちをホテル側が呼び込み、椅子をすすめ、水を出し、大型モニターを用意して、テレビの情報を見られるようにしていました。でも、私たちにはやらねばならないことがあるので、十数分くらい居て、また9階の事務室に戻りました。
事務室に入り、私が大きな余震が何度も起こる中、逃げ道確保のため、二箇所あるドアを開けてストッパーを噛ましたら、
上司A:「みっともない。オロオロするな、ドアはきちんと閉めろ。普通にしていろ。」
・・部屋から出られなくなったらどうするんだと思いながら閉めました。
普通じゃないよ今の状況、ふつうにしていられるかっていうの。
でも上司命令ですから仕方ありません。
たぶん、こういうときにどうしたらいいのか、何を命令したらいいのか、動転してわからなくなり、ふつうにしていることくらいしか考えられないのでしょう。子供のような人だから。
電車はすでに止まり、外の路上は人であふれています。
女性職員:「東京の各省で働いているウチの市の職員・安否確認をしましょう。」
の声に、皆で各省にいる職員に電話し、安否確認。また、今夜は各省の職場に泊まるのか、泊まれなければウチの事務所に来て泊まるのかも確認しました。
声をあげてくれた女性職員は、いざという時のために用意していた外を歩くときのためのスニーカーや、夜の寒さをしのぐアルミ箔のような材質の体に巻くものなどをロッカーから出し、皆から「おおっ」と声があがりました。防災意識の高さに驚きました。
当時、話題になりましたが、皆東京に住んでいる人たちは何とかして遠くても自宅まで歩いて帰宅しようとしていました。
なので、他市の事務所も同じフロアに入っているのですが、男性職員は何キロでも歩いて帰るのだと帰路についてしまい、残されたのは危険を感じて事務室に残った他市の女性職員でした。
女性一人事務室にいるのはあぶないと、他市の残ってしまった女性職員を呼び込み、ウチの事務所各部屋にソファを並べて泊まれるようにしたり、会議室には段ボールを敷き詰め、男性はそこに雑魚寝するようにし、女性陣は“ボス用の部屋(ボスが上京したときの広いきれいな部屋)”で過すようにしたのです。
そして、このビルはホテルなので、ホテル側に電話して毛布を貸して貰えるようにしました。
この間、上司Aからは何の指示もなし。すべて私たち職員の考えでした。
さらに、電車復旧の見通しがないため、夕食と翌日の朝食、昼食まで準備しようと、階段を使い9階まで二往復してコンビニで飲料と共に調達(でも、この時点で弁当やおにぎり、サンドイッチなどは棚から無くなっていました。なのでカップ麺やインスタント味噌汁、スープ、パスタなどを購入)。
さらに事務室内にあった非常食なども集め、備えました。
この間も上司Aは何の指示もしない。
他市の女性職員から
「ひとつ問題があります。それは・・〇〇さん(私のこと)に私のすっぴんが見られてしまうということです。」と(^^;)。
爆笑のあと、私はそのときはコンタクトレンズを外します。外すとほとんど何も見えません、ということでなんとか落着。
皆で智恵を出し、ああしよう、こうしようと話し合いをしていたら、
上司A:挙動不審な感じで、目は泳いで「時間になったから、このへんで私は帰るよ。」
全員:・・・・・・・・(・_・;
私:(心の中 → 何言ってんの!私たち職員、しかも他市の女性職員もウチの事務所で面倒みようとしているのに、それを見捨ててどこに行くんだ!それに地震発生からほとんどあんた何も指示を出していないじゃないか、ドア閉めてふつうにしていろって何だったんだよっ!)
私:「電車は動いていないし、千葉には帰れませんよ。どこに行くんですか?」
上司A:「カプセルホテルか何かを探して泊まろうと思う。」(私の心の中 → 歩ける範囲にそんなところ無いよ、日比谷公園では帰宅難民用焚きだし始めたってニュースが今流れてるよ)
前々から、あやしいと思っていたが、ほんとうはどこか“しけ込む”あてがあるんでしょう、“武士の情け”でだいたいどういうところかわかっているけど、書かずにおくけど。
で、私達に目も合わせず逃げるように部屋を出て行ってしまいました。
このあと、土日がどういうことになるのかもわからないのに、部下を見捨てて出て行ったのです。
このときばかりは、ほんとうにあきれました。人の上に立つ者がする行為ではないと、怒りと共に感じたのでした。
結局、皆で携帯の余震を知らせる“ギュッギュッ”という警告音をひと晩中聞きながら不安な夜を過しました。
翌日午後に少しずつ電車は動き始め、午後に解散したのですが、動いているとは言え、たいへんな混雑状況と遅滞で、私が自宅に着いたのはその7時間後でした。
疲れました・・。
そう言えば、上司Aから「みんなどうなった?」などの心配してくれるような電話などは一切ありませんでした。どういう人なんだ!
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