「祇園白川 小堀商店 いのちのレシピ/柏井壽」を読みました。
『祇園白川 小堀商店 いのちのレシピ/柏井壽著(新潮文庫)』を読みました。
475頁もありましたが、ずっと面白く最後まで読みました。
百貨店の相談役である小堀善次郎という人物が、役所の職員や芸妓、和食店主ら四人の非凡な舌を持つ者を従えて後世に伝えるべきレシピを集めるという話です。
けっこうスリリングだったり、情に訴えるものだったり、ストーリー的には面白いドラマを見ているような展開なのですが、この物語の中には、現在のグルメ的なものばかり追い求める料理番組や雑誌、書籍その他をどこか批判的な眼差しで見ている部分を感じました。
それに旅館などの宿泊施設にしても、今の様子はちょっとおかしいんじゃないかと、たぶん作者が感じていることが物語の中に織り込まれているように思いました。
そんなことも、キャラの濃い登場人物達が読んでいるこちらをエンターテインメント的に楽しめる形で演じるように書かれていて、実に楽しく読めました。
また、出てくる料理はとても地味だったり、屋台で食べられるようなものであったりもするのですが、料理人の細やかな気配りでもってつくられるもので、「ぜったいに食べてみたい」と思わせるものでした。
料理の表現も上手いし、つくる人間の描き方、そしてそれを真剣に、優しく見守る登場人物の心情も巧みに書かれていて、読んでいること自体がとてもうれしく感じるような作品でした。
どうやら、もう一冊このシリーズが出ているようなので、見つけたらまたそれも読んでみたいと思います。
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