「巡査の日記帳から」という本を読みました。
『巡査の日記帳から/深沢敬次郎著(ぶんりき文庫)』という本を読みました。
著者の深沢さんは、ほんものの巡査さんです。
1925年生まれ。18歳のときに特攻隊員として沖縄戦に参加、餓死寸前にアメリカ軍の捕虜となりました。
終戦後、職も無く、警察官試験があるから受けろと親に言われて受験し、警察官となった人です。
山の中の小さな警察署に勤務となり、その後、派出所勤務、刑事、鑑識、内勤、巡査などの仕事をされるのですが、読んでいるといつも自然体で自分の心に正直な方です。
出世などにも興味なく、淡々と警察官としての仕事をされていたことがうかがえました。
上司に気に入られなければ駄目ということも、昇進試験の問題はそういう人に漏らされているということも暗に書かれていましたが、そんなことはどうでもよかったのだと思います。
山中で殺人事件が起これば、現地で遺体と共に本署から鑑識含めた部隊が来るまで遺体と共に一夜を明かしたり、村全体の選挙違反が疑われると、正直にどうやって票を固めるのか正面から聞きに行ったり、凶悪な犯人と向かい合ったときにも、深沢さんの人間力むき出しで話をして、相手の心に入り込み逮捕したりしています。
書かれていることは、小説のように何か“ヤマ”があったり、“落ち”があったりするわけでもなく、本当に起こったこと、その時に深沢さんが感じたこと、そして現場の実際の様子や、時代背景などについても淡々と書かれているのです。
“リアル”な部分だけで真っ直ぐに進んでいくような文で綴られた「日記帳」で、今「過去に会った人、出来事」をブログに書いている私にはとても参考になりました。バイブルと言ってもいいくらい、素晴しい文だと思いました。
また、著者が退屈をまぎらすために本を読んでいたのですが、犯罪捜査のために著名な作家や学者の話を聞く機会に恵まれると読書に拍車がかかり、本を手放すことができなくなったと書かれていて、さらに犯罪者からも貴重な体験を聞かせてもらう中(深沢さんの人柄がそういうものを引き出していた)で、深沢さんの“人間力”というか、魅力がどんどん増していったのだと思いました。
それがこの本の文にあらわれています。
いい本を読むことが出来ました。
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