「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。
『日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス著・吉野美耶子訳(中公文庫)』を読みました。
ブックオフで目について、安価にて。
著者、桐谷エリザベスさんは、アメリカで心臓と肺の研究をされ、大学病院で血液専門家として働いていた方で、休暇で来日し、その後1983年に日本人と結婚されています。
1985年から2001年まで東京の下町、台東区谷中にある大正時代に建てられた長屋に住み、その後フリージャーナリスト、NHK二カ国語放送アナウンサーなどをされています。
桐谷さんは、エアコンなどもない、汲み取り式トイレの京都の住まいにも何の違和感もなく過し、読んでいるだけで日本の古くからある生活様式がとても好きで、ご本人に“合って”いたのだと思いました。
読んでいて、「そうか」とあらためて気づいたことがありました。
例えば京都の五重の塔の写真で、周囲の電線・電話線の撤去があり、撤去前と撤去後の写真を見て、単にこんなに見栄え良くなったのか、という話ではなく、実は撤去前から電線などを脳裏から消して見ていたことに気づいているのです。
これは私たち日本人には、ほとんど備わっている能力なんじゃないでしょうか。
電線などが気になって仕様が無い、という人もいるかもしれませんが、ふだんは全くと言っていいほど私も意識していません。
そして、この話で出て来たように、五重の塔などの鑑賞物に勝手に視線がクローズアップしたりして、それそのものの美しさを愛でることができます。決して特殊能力なんかじゃなくて・・。
それに、ごちゃごちゃしている下町に行った時などには、電柱・電線などはむしろ“味わい”を増す付属品的なものになっていることに気づきます。
不思議なことです。
桐谷さんは、それを下町の人と人の人情のつながりになぞらえています。そういうこともあるかもしれない。
また、自然現象が特有の文化的営為を生むことになる、ともおっしゃっていて、今や日本人でも鈍感になっている金属やガラスで出来た風鈴の音に涼しさを感じたり、くず桜やところてん、かき氷などの夏にはおなじみの透明感のある食べ物にも、“目の錯覚”をおこす不思議な力があるとおっしゃっています。「みただけで涼しくなるような気がする」と。
うちわや、蚊取り線香などにも夏の香りを感じています。どっちが日本人だかわからなくなってきました(^_^;)
この本を読んでいると、私たち日本人がほぼ忘れかけている、季節の情緒などを思い出すことが出来ます。
どんどん生活形態が変化している中で、どれほど忘れてしまったことがあるのだろうか・・と思いました。
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