【The Beatles 研究室・復刻版】Let It Be[A-4]I Me Mine
今回はアルバム「レット・イット・ビー」からジョージの曲、「アイ・ミー・マイン」を取り上げてみます。
映画レット・イット・ビーの中で、この曲が演奏されているシーンがあり、ジョンとヨーコがそれに合わせて踊っていた記憶がありますので、当然その当時録音されていたものだと思っていました。
しかし、実際はレコーディングはされておらず、その後アビーロードが制作され、お蔵入りになっていたレット・イット・ビーをサウンド・トラック・アルバムとして復活させる際に、映画で使われていたこの曲を再度レコーディングすることになったようです。
ですから、レコーディングは1970年の1月3日です。ほぼ一年後になってしまったわけです。
ジョンは海外に旅行していたらしく、残り三人で録音されたようです。しかし、ポールは自宅の農場にいて、その場にいたはずがないと言う人もいます。
ただ、私が聞いた限りでは、シャウトするコーラスはポールの声のように感じます。ひょっとして、キーボードもポールかも。
いまさらながら集まった三人のレコーディングの前にジョージが声明のようなものを読み上げます。
「すでにお聞き及びのことと思いますが、○○はグループを脱退しました(架空の名前・・デイブ・ディー・グループのことを仮に使っているらしい)。○○と○○とそれに私は、これまで二の次となっていたこの秀作の仕事を、今後も続ける所存であります。」・・と。ジョンの事実上の脱退と自分の境遇を言っているのだと思います。
気付かなかったのですが、この声明はアンソロジー3のこの曲を聞くと、イントロ前に入っていました。
さらにこの曲は、自分勝手なわがまま男のことを歌っており、レット・イット・ビー撮影時のポールのことを歌っていたことは見え見えです。よく、ポールは録音に付き合ったものだと思います。
まぁ、考えようによっては、ジョージが「自我にとらわれる人間の業」をインド哲学的な観点で歌っていると、とれなくもないのですが。
曲は、ほんとうは1分ちょっとの長さでしたが、プロデューサーのフィル・スペクターは、テープ操作で二度繰り返し部分を作り2分以上の曲に作り変えています。これはレット・イット・ビー・ネイキッドのアルバムでもそのまま踏襲されています。
サウンドはフィルがオーケストラも加え、けっこう荘厳な感じになっています。
でも、ネイキッドのプレーンなバージョンでも、この曲の良さは生きていて、そっちもOKだと思いました。
ギターはエレキとアコギが2本ずつ、ジョージはかなり忙しかったことと思います。あと、エレピとオルガンも入っているようですが、これはポールもからんでいるかもしれません。
ワルツからロックンロールに突如変貌する部分は、やや強引かもしれませんが、リンゴの巧みなドラムにより、事なきを得ています。いつも思うのですが、リンゴによって曲が体裁を保つことができたケースは多々あります。
この、リズムが変わる際のリンゴの両手打ちは、片手じゃないかと思うくらい両手のピッチがピッタリ合っていて、驚異のピッチ感覚です。
解散状態にあったビートルズが1970年代最後に残した、レコーディング曲でした。
〈追記〉2021/10/15
まずはアンソロジー3に入っていたバージョンを聞き直してみました。
これは当初録音したままの短いバージョンです。
とてもシンプルでジョージのボーカルもエコー等がほとんど掛かっていなくて、明瞭に聞こえ、息づかいまでわかる感じ。
ポールのベースもよく聞こえ、歌っているようなリラックスしたプレイの感じが伝わってきます。
リンゴのドラムは全体にやや後ろにいる感じです。
次に2009年リマスター・ステレオ版。
音は全体によく制御されているように聞こえます。
リンゴのタムの音がかなり強調されているようです。
ハイハットの刻みも生々しく聞こえてきます。
歪んだエレクトリック・ギターの音もとてもいい。
ジョージとポールのコーラスも二人がはっきりとわかるくらい表現されています。
フィル・スペクターが加えたオーケストレーションは、昔LP盤で聞いていた記憶よりも抑えめな気がします。
最後にレット・イット・ビー・ネイキッドを聞き直してみました。
全体のバランスがとてもよく、“ノリ”がいい。
アコースティック・ギターの音がフレーズもよくわかるくらいに聞こえています。
歪んだエレクトリック・ギターの音は、とてもシャープな印象です。
ポールのベースは太く感じ、重厚感が出ています。
リンゴのハイハットもほど良い感じでシャープさを少し抑え、全体の流れに沿った感じで流れていきます。タムの音はそれほど強調されていませんでした。
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