【誰のためというわけでもなく、自然体で動ける人の話/過去に会った人、過去にあった出来事について振り返る №62】
過去に会った人、あった出来事についての回顧文シリーズ。
よくも続いたなと思いますが、もう62回目の回顧です。
今回も二十数年前の耐震工事の担当者だったときの話です。
次年度施工予定の小学校を回り、どこをどういうふうに工事するか建築部の技術屋の職員と共に校長先生に説明しに行ったのですが、そこでの話です。二つの学校であった話ですが、二校とも女性の校長先生でした。
ひとつ目【A校】
校内の教室を一部屋ずつ回っていた時です。
校長先生A:「耐震工事の前にこれを見なさい。(ボールを教室の床に置くと、ボールがコロコロと転がり出しました、さらに教室後ろにあるランドセルなどを入れる造り付けの用具入れを指さしました)床が水平じゃないんですよ。さらに寸法も測らずに造ったのか、生徒のランドセルも入らない用具入れ、なんですかこれはっ!」
激怒されていました。
私:「これは今回の耐震工事とは関係ないので、別問題として課に報告します。」
校長先生A:「そうじゃない、何を言ってるんですか。これはあなたが造ったのです。あなたが何も考えず造ったものです。どうしてくれるんですか。」
・・この学校は市の人口が急増していたときに当時の公団が施工して市に移管したものですが、実際に建てられたのは、私が4~5歳くらいの時です。
このあとも、ずっと私がやった、私の責任だと言い続けて反省を求め、帰りにクルマに乗り込む時にもクルマの窓にすがりついてきて「人間としてどうなのか、あなたは!」と食い下がられ、私はクルマから降りて、「そうじゃないんです先生、学校が出来たのは30年も前のことで・・私の話を聞いてください」と先生の肩に手を掛けようとしたときに技術屋の先輩が私を羽交い締めにして・・
「お前が謝れ。そして明日また来るぞ。答えを持って。」と言われたのです。
そして翌日。
技術屋の先輩と二人でもう一度その学校に行ったのですが、学校に向かうクルマの中で
先輩:「耐震工事と共に各教室の床を削って水平を取る工事をする。各教室の用具入れもランドセルやその他生徒さんが入れるものの大きさを測って全部入るものに造り替える。お前がやることは予算の算段をすることだ。財政と交渉して予算を取って来い。それから、校長先生にはお前が素晴しいアイデアを出したので聞いてくれと電話してある。お前が考えてやることにしたと先生には説明しろ。それが一番いい解決方法だ。」
私:「それじゃ、先輩の考えだということと、これからの先輩の苦労が・・。」
先輩:「そんなことどうでもいいの。俺の言ったとおりに今からやるんだ、いいな。」
というわけで、先輩の言うとおりに説明し、さらに私の追加アイデアで、工事中移動するうさぎ小屋と小鳥小屋がくたびれていたので、予算内で新品に造り替えることを提案すると、・・・頑なだった校長先生(美人)の心は氷解!
すべて先輩のおかげでした。でも、先輩は特別に何かしたという意識はまったく無いようでした。当たり前のことだという感じでした。
ふたつ目【B校】
そこは学校の半分だけ工事して、数年後に残りの耐震数値がややいい方について工事予定だったのですが、上級官庁からの“オトナの都合”の予算やり繰りのため、工事直前に学校全体を工事することになり、その説明に行きました。
校長先生B:「冗談じゃない。半分のつもりで引っ越し、その他校長室、事務室などは使えるということで、校庭も半分使える授業を組み、先生方も準備出来ている。どうしてもやるなら私の首を獲ってからやりなさい。工事が始まってもこの校長室から出て行きませんよ、私は。」
・・となってしまい、“こじれ”に“こじれ”ました(T_T)
で、話を課に持ち帰り、また出直すことになったのですが、帰りのクルマの中、ここの技術屋さんの担当もあのA校でお世話になった先輩でした。
先輩:「おい、あの隣にあった使われていない旧校舎。物置になっていて、中はホコリを被ってたけど、あれを簡易的に改装して校長室と事務室を造るぞ。学校の機能の一部をあそこに持ってくれば先生も納得するかもしれない。それから現行の校長室もとても女性の校長が居るような部屋じゃなかった。ぼろぼろだ。あれも耐震工事中にきれいにしよう。それならきっと納得してくれる。お前のやることは・・。」
私:「予算を工面することと、あの物置になっている旧校舎内の物の移動と移動先を考えることですね。」
先輩:「そうだよ、わかってんじゃないの。」
というわけで、またもや先輩は「こいつが寝ずに考えた方法を聞いてください。」と校長先生に言ってくれて、今回も解決してしまったのです'(*゚▽゚*)'
今でもあの先輩に感謝しているのですが、あの工事から十数年して私の異動先の部署でばったり会ったときに、あの時のお礼を言ったら・・
先輩:「へぇ、そんなことあったっけ。それより今のお前の仕事で教えてもらいたいことがあるから来たんだよ、ちょっと教えて・・。」
というわけで、先輩としたら、何か困りごとが起こっても、いつもそうしていた当たり前のことだったのです・・きっと。だから別に覚えておくようなことでも無かったのでしょう。
自然体で動き、結果として皆が助かっているという・・すごい人でした。
再会したときも、その時の仕事を全力でやっておられました。
私の忘れられない人になりました。
後日談。A校、B校の女性の校長先生とは、私が相談部門に異動したときに二人同時に、結婚相談員として私の課にやって来ました( ̄O ̄;)
お二人とも私のことをよく覚えていてくれて、「あらぁ、〇〇さんじゃないの。」「〇〇さんがいてくれたら、安心だわ。」「また面倒みてね。あのときみたいにね。」
・・ということになりまして(^_^;)
仲良くそこで二年間お仕事ご一緒させていただきました。
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