阿川佐和子さんの「旅の素 -さわこのこわさ-」を読みました。
『旅の素 -さわこのこわさ-/阿川佐和子著(旅行読売出版社)』を読みました。
これはけっこう古い本で、1996年から1999年まで「旅行読売」に連載されていた「さわこのこわさ」に加筆、再構成し、1999年に刊行されたものです。
まだ阿川さんも若く、学生時代の合宿を思い出したり、外国に出掛けたときのエピソードなども語られていますが、どれも“若気の至り”みたいな話が多く、ただでさえ“うっかり”エピソードの多い阿川さんですが、今よりもっと強烈なエピソードがたくさん語られていました(^^;)
文中で阿川さんが“ハッと気がついた”と、おっしゃっていたことで、私も同感したことがありました。
それは新幹線や、飛行機のおかげで、能率良く仕事をしやすくなったが、実はその、今まで一か月かかったであろう距離を、二時間で移動できるなど、スピードが飛躍的にアップしたことによって自らに起こっている状況について語っているところでした。
速くなった分、会う人、見る景色などの情報の増え方が膨大な量に及んでいる・・。
それは、人間の頭で感じたり、見たり、考えたりするスピードをはるかに超えているんじゃないか、というわけです。
そんな速さの中にいるのって、身体に良くないんじゃないかと思うとおっしゃっています。
私もまったくの同感。
人間自身の能力で移動する際に、目に入り、肌に触れ、心に感じるものの大きさこそ、本当に身につくものなのではないだろうか、技術的進歩と、人間の感性や感受性の進歩とは、必ずしも一致しないのではないか・・そんなことを感じられています。
私も、今の人達が仕事の中でも様々な悩みを抱えている一因はこのことがあるんじゃないかと思っていたのです。
便利だ、便利だ、時間が速くなった、処理能力が上がった・・といっても、それで“楽”になった人なんていないんじゃないでしょうか。
みんな余計に悩み、苦しんでいるような気がします。
それは今言われている「AI」によって飛躍的に仕事が楽になるっていう話にも当てはまるんじゃないかと思います。
どんなものが出来ても、それで単純に人が楽になるわけではない・・ということです。
楽しい本でしたが、上記の部分を読んで、こんなことを考えたのでした。
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