「ロシア点描 -まちかどから見るプーチン帝国の素顔-/小泉悠」を読みました。
『ロシア点描 -まちかどから見たプーチン帝国の素顔-/小泉悠著(PHP研究所)』という本を読みました。
私、不勉強で著者の小泉悠さん(東大先端科学技術研究センター専任講師)を存知上げなかったのですが、ラジオでこの方のお話を聞いて、とてもわかりやすく、おもしろいお話をされる方だと思ったのです。
書店でこの「ロシア点描」を見つけたので、さっそく読んでみることにしました。
過去、ロシア科学アカデミーなどにも在籍していた小泉さんは、ロシアにも住まれたことがあり、しかも奥様はロシア人ということで、ロシアの日常の様子などが(今までニュースやその他報道では見聞きすることが出来ないような身近な話題)、そのまま書かれていて、とても面白かった。
スーパーでの買物の仕方、レジがどんな様子か、どんなものが売っているのか。
帝国からソ連、さらに現在のロシアに至るまでの一般の人達の住居の変遷、商売の仕方なども過去の建物などを壊して改築しようとすると、その痕跡が現われて「ああ、昔はこんなことをしていたのだ」などと驚く様子も書かれていました。
この部分を読むだけでも、とても興味深く、ロシアの人達の生き方、物の考え方が今までの知識だけでは想像できなかったところまでわかるような気がしました。
また、元外交官でロシアと関わってきた、あの佐藤優さんが現役時代のロシア人とのやり取りについて書かれた書籍を過去に読んだことがあるのですが、そのときとはロシアの役人達のやり方も、かなり変化を見せていることがわかりました。
とんでもない量の「酒」を飲んで信頼を得た後に、やっと相手との信頼関係が出来るというようなことも、近年はあまり無くなっているようだということがわかりました。
ただし、変わっていないと思ったのは、一度信頼関係を築き上げたあとは、かなりの親密な人間関係となり、意外なほど深いところまで情報を得ることが出来たり、便宜を図ってもらえる・・というのは、変わっていないようでした。
それから、ロシアの地下鉄というものは、かつてドイツとの戦争の時に防空壕的な意味での発展をしていて、地下 70~80メートルくらいに展開されていたこともあり、その名残りがまだある。
また、かつてはロシア政府用の第二地下鉄網が、通常の地下鉄とは別にあったとか、国の重要な大学の地下には政府が地下で運営できるようなものが作られていたとか、地下にはまだまだ謎というか、未知の部分があるようです。
このご時世、そんなことを調べようとしたら、怖いことになるかも・・。
そして、その防空壕として使われる地下鉄の駅・・というと、今現在のウクライナの戦争報道で再現されているのです。
今になって、こんなことになるとは、誰も想像していなかったのではないでしょうか。
余談ですが、私が東京勤務時、国会議事堂や議員会館など、地下道で繋がっていることを仕事上の使用で知りました。
一般人は入ることが出来ませんが、あの大きな地下施設は、まだまだいろいろなところに繋がっているんじゃないかということは想像に難くありません。
日本も何か戦時や戦後にいろいろ考え、地下の戦略的世界があるのかも・・と思いました。
最後に、ロシア人って、ちょっと近寄りがたくて、こわい感じがしていたのですが、実はちょっと仲良くなると、“おせっかい”なくらいに、いろいろ面倒を見てくれたり、心配してくれたり、良くしてくれる人達なのだ、ということもわかりました。
わかりやすくて、読みやすく、今まで知らなかったことがたくさん書いてあり、著者の人柄までわかる、楽しい本でした。
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