「トイレの輪 ~トイレの話、聞かせてください~」を読みました。
『トイレの輪 ~トイレの話、聞かせてください~/佐藤満春著(集英社文庫)』を読みました。
これは、著者の佐藤満春さん(お笑いコンビ「どきどきキャンプ」の一員であり、トイレ博士としてイベント出演したりもしている)が、トイレの話を様々な人から聞いていくというものです。これまたブックオフにて110円で購入ヽ(=´▽`=)ノ
インタビューの相手は、ロケで辺境の地に行くことが多い、オードリーの春日さんとか、ノンフィクション作家、冒険家、小説家、トイレメーカーの方、建築家などと多彩です。
大まかに感想を言うと、世界中で日々トイレで用を足すことが出来るのは、ついこの間まで50%に満たず、最近やっと良くなってきたとは言え、せいぜい60%だという。
要するに外で、どこか探して用を足しているのだそうで、特にこれは女性にとってきついと思われ、犯罪にも結びついているとのこと。
また世界を冒険をしているような人は、日本の行き届いたトイレはやり過ぎだということで、椎名誠さんの本などを読んでいても、この話題はよく出て来ました。
劣悪なトイレ状況が今でも世界中にあり、日本人の感覚で世界の旅に行ってしまうと、旅なんて出来ませんぞ!というような結論に達し、そりゃそうだろうけど・・ということになります。
トイレメーカーの方々は世界のトイレ事情を改善し(各国の電気や上下水道事情が悪く課題は多いが)、より快適で、頑丈で、清潔な状態を保ちやすいものを日々つくっていて、それはそれで、人類にとってありがたいことだと大きく頷きました。
また、1980年代頃に多かったとのことですが、“奇妙奇天烈”で“ウケ”をねらったような奇抜なトイレを求めて日本中を巡っている方もいました。
これも実に興味深く、トイレ自体が何畳もある、まるで部屋のようなトイレや、日本庭園みたいな広いスペースに便器ひとつ、みたいなトイレもありました。
で、私が(著者もだった)一番共感したのは、小説家の朝井リョウさんのトイレ話でした。
朝井さんは、すぐに便意をもよおしてしまうので、外出が怖いというか、出歩くと、もうトイレがどこにあるか気になり、仕方なく外に出ることがあると、便意のための“大ピンチ”がやってくるという・・これはたぶん、多くの人が大なり小なり持っている悩みなんじゃないかと思ったのです。
だから、作家という自宅にいてトイレの間近で仕事ができる、その状態が一番いいのだ、というのです。
そのために様々な世界に出て行ったり、人に会ったりする機会を失ってしまっても、それでもその安定した状態がいいのだとおっしゃっています。・・わかる気がする。
この本の中で朝井さんがカミングアウトする、『大事故』の話には、涙が出るくらい気の毒なエピソードが載っていました。
朝井さんが現在のような小説家としての確固たる地位にいる現在で、しかも朝井さんが最も大切に思う人生の大先輩が東京から離れる門出の幹事を引き受けた場での「大便」にまつわる大失態を起こしてしまうのです・・それを書こうにも、もし自分がこの立場だったらと思うと、想像するだに怖ろしく、書くことができません。
この便意が“近い”というのは、文中でも書かれていますが、精神的なものも大きな影響を与えているということで、私にも思い当たる出来事が何度かあります・・だから、朝井さんの気持ちはものすごくよくわかり、著者もこの本の中で一番共感しているのが手に取るようにわかりました。
トイレ話といって、侮ることなかれ!
実に人間にとって奥深い内容の本でした。
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