三本和彦さんが亡くなられた。
自動車評論家というか、自動車業界全体に対するジャーナリストという印象の三本和彦さんが亡くなられたと聞きました。
三本さんと言えば、TVK(神奈川テレビ)の「新車情報」という番組を思い出します。
私が若い頃、それまで全く興味のなかったクルマに興味を持ち始めたのも、この番組の三本さんの“辛口”批評を見聞きしてからでした。
“歯に衣着せぬ”とは、この番組の三本さんのことを言うんじゃないか(^_^)というくらいの遠慮会釈のないクルマに対する評価は、他の“メーカーの提灯持ち”みたいな一連の番組とは一線を画すものでした。
各メーカーの開発担当者も、この番組に出るときには気合いが入っていて、三本さんとは丁々発止のやり取りがあり、緊張感もありました。
また、時には三本さんからの叱咤やお褒めの言葉に互いに笑顔になったりという場面もあり、今はもう無い“きちんとした”番組でした。
私が今思い出せる番組内での三本さんの言葉は以下のとおりです。
◎「デザインは機能のパッケージングである」
・・・機能もないのにデザイン優先で作られたクルマには厳しかった。
ボディの後輪部にブレーキへのエア・ダクトみたいなものがフェラーリみたいにくっつけられた国産車、実は“ただの飾り”だったりすると三本さんは怒りました。
80年代に流行った車のリアトランク・リッドに「ガーニッシュ」なんていって“真っ赤なプレート状のもの”が貼付けられていると、「マグロの切り身みたいなもの付けて、これのどこがいいんですか?!」っとやってくれた時には「そのとおりっ!」と喝采しました。
「デザインのためなら、バンパーをガラスで作って美しくしたい」と言った大馬鹿者の開発担当を一喝したこともありました。なんのためのバンパーだと。
◎「ラム圧(走行風圧)で車内の換気が出来ないクルマが多いのはいかん」
・・・三本さんが試乗時にこう言うと、三菱のシグマ・ハードトップの開発主査の方が、「三本さんは、まったく無駄なことをしておられる。ファンを回せばいいのだ」と返答。「風圧で換気できなくて、それでもクルマか」とやり合っていたのも思い出します。
◎「馬力は麻薬だが、安全のための貯金だと思え」
・・・試乗時に「馬力はあればあるほど良く感じ、まるで麻薬だ。でも、この馬力を安全のための貯金だと思えば、実に余裕ある安全運転ができる」・・とおっしゃっていたのも思い出します。
まだまだ思い出すことがありますが、いずれも1980年代のことでした。
三本さんの上記番組や、著書も参考に私も楽しくクルマに乗ってきました。
「クルマのドアを閉めるときは、閉まる10センチ前でいったん止め、それから静かに閉めるのが大人のマナーだ」というお言葉も覚えています。そのとおりに今もしていますよ、三本さん。今まで厳しく、楽しい評論、ありがとうございました。
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