「なんらかの事情/岸本佐知子」を読みました。
『なんらかの事情/岸本佐知子著(ちくま文庫)』を読みました。
2012年に刊行されたものの文庫本化です。またもやブックオフにて安価購入。
読み始めたときには、エッセイだと思って“ふんふん”と読んでいたのですが、途中から“???”となり始めました。
いろいろなエピソードが語られているうちに、途中から雲行きが怪しくなってきて、これはただの迷走なのか、妄想なのか、現実とは思えない展開になり、読んでいるこちらが不安になるのです。
変わらない日常が描かれているのかと思っていると、そこがだんだんとアナザー・ワールドに・・しかも一瞬にして変わってしまい、そのあっけにとられるというか、不気味な感覚は独特のものでした。
友達にこういう人がいたらとても怖い・・。
四谷にある洋食屋で、美味しいからしょっちゅう行っていたのだが、いつも満員だったそのお店、ある日のランチ時、入ったらお客さんがひとりもいなくて、カウンターの上にずらっと料理が並んでいて、お店の人もいない・・。
無人の厨房の奥で五個もあるガス台の火がぜんぶついていて、ぼうぼうすごい勢いで燃えていた。
怖くなって出て来ちゃった。・・っていう話を友達の話として語っているが、本当は本人の話なのか、あるいは作り話なのか、とにかくどこまでが本当かわからない。
日常使っているあらゆる道具などを見ていると、なぜ人がこんなものをわざわざ作っているのかという思いがどんどん病的に掘り下げられ、こんな“ばかばかしい物”使うのも恥ずかしいというような気持ちになって、傘ひとつ買うこともしなくなってしまう著者。
夜中に起きて、水を飲もうと台所に行ったときに、泡立て器やフライ返しを見て、それが何なのかぼうっとして理解出来ず、泡立て器を電球だと思って頭に乗せたが、灯りは点かず (・_・;・・フライ返しは「フック船長の手の先なのでは」と思い、フック船長がその義手を使って朝食を皆のためにつくっているところを想像してニヤニヤ笑うとか・・、もうとても気持ち悪いのです。
当分、この人の本は読まないかもしれませんが、時が経てば、またこの感覚が恋しくて岸本さんの本を探すことになりそうです。
後味が苦いような、妙な読後感を持つ本となりました。
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