【The Beatles 研究室・復刻版】The Beatles (White Album)[B-3]Blackbird
15年以上前の文なので細部の表現・事実についてはお見逃しください。
今回は、アルバム「ザ・ビートルズ(通称:ホワイト・アルバム)」から、「ブラック・バード」を取り上げます。
ポールがインドで書いた曲で、ジョンが「ジュリア」でスリーフィンガーを使ったのと同様に、この曲についてもドノヴァンから教わった奏法を用いています。
同じ奏法を使いながらも、二人の“違い”もよくわかってファンにはとても面白いと思います。
録音はポールのみで、楽器はギターのみ。打楽器に聞こえるのは、ポールが足でリズムを取っている音です。(※この足でリズムを取っている“タップ音”のようなものもEMIのライブラリーにあった足音の音源を使っている、というようなことを書いている本もあります。でも、にわかには信じられない・・)
ちょっと聞いた感じでは、何気ないどこかで聞いたような良い曲、といった印象を受けます。
でも、よく考えてみてください。こんな良い曲、誰が書けるでしょうか?アルバムの中では、通り過ぎてしまうような場所にいて、ちょっとした佳曲となっていますが、実は他のアーティストにもカヴァーされる名曲なのです。
つまり、それがポールのすごいところなのだと思います。名曲をさらっと書き、そっと置いておくのです。まさに天才、まさに名人。
エフェクトとして入っている鳥の鳴き声は、EMIスタジオのライブラリのものだそうです。入れて良かったと思います。気ままなブラックバードが大空を飛ぶ光景が目に浮かぶようです。
ポールは、ビートルズ解散後も、ライブでこの曲を取り上げています。きっと本人も気に入っているのだと思います。
ホワイトアルバムを最初に聞いたときには、この曲のところで「おっ・・」と思いました。あとでアルバム全部を聞き終わったら、この曲を聞き直してみようと思ったことを思い出します。
ポールのソングライティングの素晴らしさをあらためて感じる名曲です。
〈追記〉2022/07/14
ポールのギター奏法は、「スリー・フィンガー」というよりも、実際は「ツー・フィンガー」で弾いていて、ジ・アルフィーの坂崎さんが名人芸的にポールのこのブラック・バードの演奏を再現しているのを見たことがあります。
特に人差し指の“前方に弾く”ような独特の弾き方が「あぁ、ポールがステージ上でこの弾き方していたな」と思い出させるものでした。坂崎さんのビートルズに対する探求は、その他いろいろありますので、また別の曲のときにご紹介します。
この曲のインスピレーションが、バッハの「リュート組曲ホ短調・第5曲プーレ」だというポールの発言が残っているようです。
クラッシック・ギターでよく演奏される曲だそうで、メロディとベースラインがハモるところに惹かれたとポールが言っています。
また、この曲が黒人の公民権運動への応援歌なのでは・・というのも、ファンのあいだでは知られているようです。私はよく知らなかったのですが。
ジョンのように直接的に歌わずに、ブラック・バードになぞらえて象徴的にしているのがポールらしいのかもしれません。
では、その後音源もいろいろ出回りましたので、あらためて新しい音源を聞いてみました。
2009年ステレオ・リマスター盤は、ポールの足踏みの音もきれいに入っているし、ダブル・トラックのボーカルもバランスよく入っている。
鳥の声のエフェクトは、モノよりもやや遅く始まるが、音自体は同じものです。
2009年リマスター・モノラル盤は、ステレオよりもとても落ち着いた印象。
ポールのボーカルもダブル・トラックがあまり強調されていません。
足のタップ音は、割とはっきりと入っていると思います。
鳥の声のエフェクトは、いったんブレイク後にギターが始まると同時に開始され、こちらの方がすっきりとしています。
ステレオ、モノともに、同じところでイントロ部分が差し替えられ、曲の途中のギター演奏部分を貼付けてイントロとしています。
いったん、モノのミックスを終えたあと(当時は、ビートルズのメンバーが実際に最後のミックスまで取り組んでいたのはモノの方で、こちらがオリジナルと言っていい訳です)、ステレオ・ミックスの作成時にイントロ差し替えがあり、モノも、その後ステレオと同じくする必要が生じて(モノとステレオのイントロが異なって販売されるのを避けるためと思われる)、両者同様のイントロ差し替えとなったようです。
アンソロジー3に入っているバージョンを聞いてみました。
かなり“生”の音そのままに録音されていて、ギターのラフに弾かれている部分もそのまま。
ポールのボーカルも加工はされていないと思います。
曲自体は、ほとんど完成されている状態です。
続いて、スーパー・デラックス・エディションの「イーシャー・デモ」のバージョン。
ADTを使い、ポールのダブル・トラック・ボーカルがものすごく強調されています。
ギターの音も割とワイルドで音量も大きい。運指や、つま弾きの様子も生々しく聞こえます。
このバージョンはプリミティブ・バージョンだが、本番よりもいいくらいです。
とてもポールらしい曲に聞こえました。
さらにスーパー・デラックス・エディションの「セッションズ」に入っているバージョン[Take 28]。
きっちりと、まずはスタジオで録っている感じ。
ギターも丁寧に弾かれている。
ボーカルもダブル・トラックにはまだなっていない。
ポールが、「こんな感じ」って弾いている様子が伝わってきます。
スーパー・デラックス・エディションのメインとも言える「ジャイルズ・マーティン・リミックス」。
丁寧にこの曲の良さを表現しようとしている感じ。
あまりダブル・トラック部分は強調せず、ボールの“歌いっぷり”を堪能できるようなミックスだと思います。
ギターも実に自然で強調のない演奏に聞こえます。
余計なエコーも極力取り去っているようです。
最後は、マッシュアップ・アルバム「LOVE」ミックス。
これはイントロだけいただいて、曲に入ると「イエスタデイ」になってしまいます。
「素材」としてイントロだけ使われていますが、“いい音”でギターが入っていました。
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