「作家と家元/立川談志」を読みました。
『作家と家元/立川談志著(中公文庫)』という本を読みました。
文庫オリジナル編集のもので、2021年に発行されています。
過去の作家との対談を何編かまとめたもので、古いものだと1960年代のものもありました。
1960年代に吉行淳之介と対談しているものなどは、談志はかなり勢いがあり、“突っ張って”いる様子がよくわかります。
色川武大との対談もありましたが、色川さんは古い時代の芸人に興味があり、互いに知らないことを伝え合ってとても喜んでいる様子がうかがえました。
談志は、そのときに「この人の命は長くはない」と感づいていて、それも文になっていました。
そしてそのとおりになってしまった。
景山民夫についても弟子として登場していますが(※立川流「Bコース」ってやつです)、なんだか落語を難しく考え過ぎじゃないかとも思いましたが、私の考えが浅すぎるのか・・。
最後は石原慎太郎との対談もありますが、石原氏は当時都知事なのに、不用意な発言も多く、「北朝鮮がやらかす前にやっちまえ」みたいな発言は双方が勢いづいて、聞くに堪えない・・。
互いに通じ合っているようで、全然理解していないようなものも感じました。
この二人に対談は、途中でイヤになってしまいました。
一番“話になっていた”のは、年下の伊集院静氏との対談でした。
どちらかと言えば伊集院氏が話題をうまく抑えつつ、話をできるだけ冗談の方向へと飛んでいかないようにしている様子がうかがえました。
カネを得る方法として、
「今のファンドの連中なんかを見てると、とにかくてめえのもんじゃねえものをどっかへ移す。そこから得るものを狙ってるっていうんで、モノは何でもいいという・・死の商人とは言わないけども、やつらはその程度のものだろうと底が見えてしまう」
という話に持っていったのが伊集院氏でした。
このあとどんどん話は、人の、社会の、本質的なものに迫っています。
全体を読んでみての感想は、立川談志は晩年に近づくに連れ、“考え過ぎ”で“意固地”な印象になっていく。
それを見て、周囲の人たちは、“逃げて行った”り、“理解しよう”としたり、“理解不能”で投げ出したり、なんとか“立川談志というものを確立させたい”と願う人がいたり・・だったということがわかりました。
私は・・昭和40年代の頃の談志の落語をテレビやラジオから何本も録音して繰り返し聞いていたので、あの頃の落語に夢中な感じの談志が好きでした。
晩年はちょっと“偏屈”になり過ぎな気がして(※そっちが好きだというファンも多いとは思いますが)、あまり近づいて聞きたい感じにはとうとうならなかったのでした。
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