「落語家論/柳家小三治」を読みました。
『落語家論/柳家小三治著(ちくま文庫)』を読みました。
もともとは、「民族芸能を守る会」という小さな会のごく一部の人しか読まないような会報の巻頭に、先代の林家正蔵が毎月文章を寄せていたのを小三治さんが引き継いだものだそうです。
日付が入っているのですが、昭和56年頃から小三治さんは書き始められています。
単行本としては、2001年に芸能研究室というところから刊行され、この「ちくま文庫」による文庫化は、2007年となっています。
小三治さんが四十代になった頃の文章ですが、落語に対しては実に真面目に取り組んでいることがわかりました。
むしろ、噺家なのに“真面目過ぎる”と感じるくらいでした。
それほど落語というものが“いいもの”であり、生涯掛けてやるものであるという自信が感じられました。
だから、当時の若手への苦言はとても厳しいし、しつけや、師匠に仕えること、厳しい修行についても「自分も苦しかったし、出来ればやりたくないなんて思ったが、今にすれば全てが自分の落語に繋がっているのだ」ということを自信を持って力強く書かれています。
自分が小さん師匠に弟子入りした頃は、四十代、五十代っていうと、すっかり“おじさん”“おじいさん”に見えたけど、自分がその歳になってみると、二十代の頃とまったく気持ちは変わっていない・・と、自分で驚いている場面もありました。
そういった気持ちの中でも、「若いときから、ものの感じ方、味わい方の感性が少しずつ磨かれ、貯えられてきて、パーッと一斉に花ひらいてくるとたとえたらいいか」と、書かれていますが、そんな感覚が出てくるのでしょうね。
男とは? 女とは? 人間とは? 生きるということは? 世の中とは? 落語とは? と、自分に問いかけてみても、何ひとつとしてまだわかっちゃいない。
そういうことの枝葉はわかってきたが、幹は依然としてあの頃のままとしか思えない・・とも書かれていて、人間いくつになっても“わからないこと”ばかりですが、でもそれを知りたくて、知ろうとして生きていくんだな、などと思いました。
小三治さんは、趣味も広く、豊かな人間性を感じさせるいい噺家で、派手に大向こうにウケるようなこともせず、私も好きな人でした。
私は、落語を聞くのも趣味ですが、現在は自分の体調もあって、なかなか寄席には行きずらい状況なので、小三治さんほかの音源をしばらくはUSEN放送などで聞いてみようと思っています。
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