「父の縁側、私の書斎/檀ふみ」を読みました。
『父の縁側、私の書斎/檀ふみ著(新潮文庫)』を読みました。
私同様、本好きの妻とブックオフでいろいと物色しているときに、私が阿川佐和子さんの本をよく読んでいるので、妻から「檀ふみさんの本はどうだ?」と手渡されたので買ってみたものです。これまた格安にて。
2004年に刊行されたものの文庫化ですから、檀さん五十代に入った頃の本です。
この本は、檀ふみさんが父の檀一雄さんの思い出と共に、一家が暮らしてきた家の間取り図も再現して家族の様子なども振り返っているもので、幼少期にまで遡る思い出はなんだか昭和の懐かしい家族の風景が彷彿として、読んでいてこちらもしみじみとしてしまいました。
仲良しの阿川佐和子さんの父親もかなり強烈な人でしたが、この檀一雄さんもそれを何倍も上回る強烈さでした。
お金もないのに土地を買ったり、家を買ったり、増築につぐ増築を重ねたり、その金の工面を奥さんが(ようするに檀ふみさんのお母さんです)が、丹羽文雄氏の家にお願いに行ったりする様子も書かれていました。
ポルトガルに何年も家族をおいて行ってしまったり、日本にいても女のところに行ってしまって家にも帰らなかったりですが、・・でも檀ふみさんはそんなに悪口を書いていないんですよね。
割といい思い出を持っていて、それを大切にしています。
阿川さんといい、檀さんといい、作家の娘の気持ちはよくわからないのですが、でも基本的に父親が好きだったんでしょうね。
家の間取り図を示しながら思い出を綴っていると、すでに書きましたが、その表現が実に巧みで、家の中の光景と、家族の様子がよく伝わってきました。
そういうのって、書いている本人ばかりが思い出に浸っているような文章が多いのですが、檀さんのこの本での文章はそうではありません。
人間って、さまざまな思い出、記憶は、風景やそのときにいた部屋、家などの映像記憶と共によみがえって来ます。まさにこの本はそんな感じでした。
普通から考えたら、檀一雄さんはとんでもない父親なのだと思われますが、でも檀ふみさんにとってはかけがえのない“父親像”として記憶されているのだと思いました。
自分の家のことではないのに、懐かしい気持ちにさせてくれた本でした。
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