野村克也さんの「名選手にドラマあり」を読みました。
『名選手にドラマあり -脳裏に焼き付くあのシーン-/野村克也著(小学館新書)』を読みました。
2014年発行のもので、これもブックオフで手に入れました。
野村さんの現役時代、あるいは監督時代についても周囲は名選手ばかりだったと思います。
その名選手について野村さんがつぶさに“観察”した様子が書かれていました。
リーグは違っても王、長嶋との対戦はオープン戦や日本シリーズであったわけですが、ノムさん独特のバッターへの“ささやき”戦術は二人には効かなかったそうです。
王さんはささやきを聞くことは聞くのですが、ピッチャーと向き合うとおそろしいほどの集中力でささやきなど頭の片隅にも無くなっていく、・・長嶋さんは逆に質問し返してきたりして、ささやきなど“どこ吹く風”(*^_^*)、やはりものすごい集中力でバッティングするのだそうです。
南海でバッテリーを組んでいた皆川投手と苦手だった左打者用に新しい変化球を模索していく様子などは、捕手としての野村さんが投手と二人三脚で対策を練っていく過程がとても面白かった。
最終的なテストはオープン戦の王さんに試し、見事に内角の新変化球(今で言う「カットボール」)で詰まらせ、「王に通用するなら、どんな打者でも大丈夫」と二人で確信を持った話も書かれていました。
そして皆川さんは苦手な左打者を克服して、通算221勝をあげたのでした。
南海の監督兼選手を“クビ”になったときには、それまで来ていた“盆暮れのつけ届”や、年賀状さえも来なくなったと書かれていましたが、あの阪急・近鉄で監督をされていた「西本幸雄」さんだけは年賀状をくれ、「頑張れ」のひと言が書かれていて、それは野村さんの宝として「今でも大事にしている」と書かれていました。いい話です。
また、野村さんが2002年から三年間、シダックスという社会人野球チームの監督をした頃に感じたことが書かれていましたが、「これほど純粋な野球があったのか」とあらためて思ったとのこと。
社会人野球はトーナメント形式で、高校野球のように“後がない”、プロ野球のように百何十試合のうちの一試合という意識がない。
野球を私物化するプレーも皆無。
個人の成績によって給料が変わるわけではない。
常にフォア・ザ・チームに徹する清々しさは野球の原点のように思えた。
と書かれていて、強く印象に残りました。
“プロ”なのに上記のような「フォア・ザ・チームに徹する清々しさ」を感じる団体がある・・と私は即座に思ったのが「宝塚歌劇団」でした。
人間だから人に対する好き嫌いや、嫉妬、いろいろな思いはあるのかもしれませんが、でもトップスターが下級生でも、自分が端役しか回ってこなくても、トップスターを中心に舞台を最高のものにしようといつも“全力投球”な人たちの集まり、それが宝塚歌劇団です。この歌劇団もいつまでもこの清々しさをなくさないように続いていってもらいたいものだとあらためて思いました。
というわけで、長くなりましたが、野村さんのこの本は人間関係の機微なども描かれていて貴重なものでした。
いい本を読みました。
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