「ニホンゴキトク」という久世輝彦さんの本を読みました。
『ニホンゴキトク/久世輝彦著(講談社)』という本を読みました。
1996年刊行の本です。
「ニホンゴキトク」というのは“日本語危篤”っていうことなんです。
この本が刊行された1996年頃に、「この日本語はもう“瀕死”の状態で“死に絶える”だろう」と久世さんが感じている“日本語”を拾い集め、かつてはこんなときに使われていた、あるいはこんな使い方をするとその様子がとても良くわかったり、感じたりしたものだ・・というようなことが丁寧に書かれていました。
2022年現在、死んでしまったと思われる言葉もいくつかありました。
特に久世さんがその言葉を拾い集めるときに参考にされていたのが、かつて一緒に仕事をされていた向田邦子さんの著者からや、コラムニストの山本夏彦氏の著書、さらに幸田文さんとその娘の青木玉さんの著書です。
久世さんが強調されているのは、言葉や言い回しというものは理屈が通って相手に伝わればそれでいいというものではない、ということでした。
言葉は感じるもの。色気、匂い、肌触り、可笑しみ、のどかさ、涼しさ・・、虚しさ、熱い思い、誰かに告げたい幸せ・・など、いろいろな言葉で伝えたいじゃありませんか(#^.^#)
でも、日本語はどんどん言葉を少なくし“記号化”しているようです。
例示されている言葉で、「英語でなんと言うのだろう」というものがありました。
「できごごろ」「面変わり(おもがわり)」「甲斐性」「生半可」「昵懇(じっこん)」などです。
これに代わる英語ってあるんだろうか?としばし考えてしまいました。正確には無いと思う。
「すがれる」という言葉を知っていますか。使ったことがありますか。
草や木が枯れはじめること、あるいは盛りを過ぎて衰えを見せはじめることをいうのだそうです。
哀れでもの悲しい気持ちがしみじみ伝わってくる・・という。
私がこの「すがれる」という言葉を当たり前のように使っているのを聞いたのは、なぎら健壱さんだけです。言葉の前後関係から意味するところはその時わかりました。
それ以来聞いていないので、もう“すたれ”てしまったのか。
“すたれる”自体も瀕死の言葉か。
「汽車」も使われなくなっちゃいましたね。
昔の歌謡曲にはよく使われていた。
久世さんの理解するところでは、汽車は長距離を走るもの、電車は通勤等比較的近距離を走る列車を当時は指していたとのこと。
汽車の「汽」は蒸気機関のことを言っているのかと思いましたが、でも昔はちがったみたい。
鉄道の歴史を遡ると、鉄道発達初期の頃は、蒸気機関車が長距離を受け持っていたと思われるので、一般的に上記のような理解がされていたのだと思います。
私が思いつくのは「花嫁」「さらば恋人」などですが、1970年代の「なごり雪」でもいきなり「汽車を待つ君の横で僕は・・時計を気にしてる」で始まります。
電車じゃ・・だめだよねぇ(^_^;)やはりこれも“長距離”を意識しているのだと思います。
250頁以上にわたり、いろいろな、“無くなりそう”な日本語について書かれていたこの本、しみじみと読みました。
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