「太宰治の辞書/北村薫」を読みました。
いろいろありつつ、本はなんとか少しずつ読んでいました。
今回は『太宰治の辞書/北村薫著(創元推理文庫)』です。これもいつもどおりブックオフで110円で購入。
読み始めてすぐに著者の本に対する、そして作家に対する深い愛情と知識を感じました。
本好きの私がこの人の文を読むと、まるで本の世界にどっぷりとつかり、世界でいちばん居心地のよい空間にいるような気分になりました。
とてもわかりやすく、テンポは早くも遅くもなく、歩くような調子。
読みやすいっ!さらに私が今まで知らなかったことが次から次へと記されていて“本”脳に心地よい刺激を与えてくれました。
この本に書かれていたエピソードなどの部分でいちばん強くひかれたのが、太宰の「女生徒」という作品についてのものでした。
著者も最初知らなかったのですが、この「女生徒」という作品、私も知りませんでした。
でも、著者がこの作品を教えてくれた友人からもらった本、「女生徒」という作品はどの部分も珠玉の文が太宰によって書かれていて、さらに驚くことに、これは太宰のファンであった女性が太宰に送った日記をもとに作られたものであったことがわかります。
日記に書かれていた女生徒のいろいろな出来事や心象などを一日にまとめ、こんな美しい文があるのか、と思うくらいの作品に仕上げられています。
著者もすっかりこの作品に魅せられ、やがて青森県近代文学館には、翻刻された「有明淑の日記」という原本があることにたどり着きます。
で、これまたびっくりですが、その原本をたずねて出かけていくわけです。
文学に魅せられ、本に魅せられ、太宰に魅せられている著者だからこその行動だと思いますが、読んでいるこちらもドキドキしながら著者の行動を追っていくわけです。
そして太宰の作品に書かれていた文が、本文の日記のどこにあたるのか、など丁寧に見比べていきます。
原本の文章もきらめくような良いものですが、さらに太宰がそれを珠玉の美しい文章に変えていく過程がつぶさにわかりました。
久しぶりに素晴らしい本に出会えたといううれしさでいっぱいになりました。
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