中江有里さんの「残りものには、過去がある」を読みました。
『残りものには、過去がある/中江有里著(新潮文庫)』を読みました。
ブックオフでたまたま見つけたのですが、読んでみたらすごい作品でした。
いくつもの短編が集まってひとつの作品になっています。
それはある二人の結婚式会場に集まってきた人たち、夫婦や親子、独身者、謎の叔母と姪、そして結婚式に来れなかった人、もちろん結婚する二人もそれぞれがそれぞれに今までの人生経験が有り、それぞれの物語を持っていて、それらが短編になり、集合したものがこの作品です。
結婚する二人が中心になっているのかと思うと、スピンオフ的に周囲の人たちの物語が短編になっていて、それがスピンオフどころか完全に感情移入してしまうくらいの濃い内容で、どの短編にも夢中で入り込んでしまいました。
特に新婦と従妹との深刻になってしまった関係が綴られていた短編には、ラストで私は声をあげて泣いてしまいました。
互いに心の中に死んでしまいたいほど苦しいものを持ちながら生きてきた二人の気持ちが一気に溶け出して心が通じ合うシーン、ぜひ読んでいただきたい。
その他どの短編もつらい恋愛や、過去の過ち、人との信頼関係など、全身にそれぞれの登場人物の生き方を感じながら読みました。ドキドキして思わずページを閉じてしまうようなこともありました。
今まで読んできた小説は、主人公と、直に主人公に関わる重要人物中心に書かれていて、それなりに共感しながら読んできましたが、この物語は、「人は皆、誰もが大きな困難をくぐり抜けたり、つらい経験をしたり、哀しい恋愛をしたりしている」のだということが切々と書かれていて、自分の人生に照らし合わせてみたりすると、自分だけではないのだと少しほっとしたり、でも登場人物に共感して切ない思いになったり、なぐさめられたり、勇気づけられたりしました。
なんだか新年早々素晴らしい作品を読めて新鮮な気分です。
よい本を読みました。
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