「赤塚不二夫のことを書いたのだ!!/武居俊樹」を読みました。
『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!/武居俊樹著(文春文庫)』という本を読みました。
ブックオフで見つけたものです。2007年発行となっていますので15年以上前なので、著者がこの文を書いている時点では、赤塚先生は入院はされていたもののご存命です。
漫画家、「赤塚不二夫先生のことを書いたのだ」とタイトルにありますが、著者の武居氏が編集者として赤塚先生と35年に渡り連れ添った中で、先生の生い立ちから漫画家になるまでの苦悩、苦闘、担当編集者になってからの先生の漫画がどのように作られていったかの詳細な描写、出版社同士の戦いの中での先生の様子、先の奥さんと再婚後の奥さんの話、先生の仕事場の戦場のような様子、その他女性関係や毎日繰り出して飲んだくれる姿など、内容は多岐に渡り、重く・・、つらく、読んでいるだけでこちらの具合が悪くなってくるようなものでした。
赤塚不二夫先生といえば、私には少年時代から親しんだ漫画がたくさんありますし、アニメ化されたものもいくつも見ていました。
手塚治虫先生、藤子不二雄先生に並び、私の漫画と共に過ごした時間の大切な漫画家です。
先生は終戦後母親、兄弟姉妹と共に満州から帰国しますが、父親は抑留されたままで、後に帰国することになります。
満州でのあまりにも過酷な状況や、引き上げ前後に妹を二人亡くしていることを知り、驚きました。
帰国後もたいへん厳しい生活だったことがわかりましたが、読んでいるだけで気絶しそうに苛烈なことが書かれていました。
東京に出てきてからの仕事の話や、その中で漫画を描き続け、やがて手塚先生に会いに行き、そこからまた苦労して漫画家になるまで・・そこまでで読んでいて倒れそうになりました。
著者の武居氏が赤塚先生の六代目編集者として赤塚先生の仕事場を訪れてからの話は怒涛のように展開し、戦場のような仕事とお酒、アイデアを生み出していく様子が映画のラッシュを見ているように目まぐるしく繰り広げられ、それらが文章化されていました。
出版社同士が先生の連載作品を奪って自分の週刊誌に移動させてしまったりする話も、これを読んで初めて知りました。
これらのことについてここで書くのもいいかもしれませんが、私には赤塚先生がアシスタントとして入れた人たちを成長させ、一本立ちさせ、有名漫画家にまでなるところが一番心に残りました。
実際には弟子をひとり立ちさせると自分の“片肺”がもぎ取れられるようで、たいへんなことになるわけですが、それでもあえてその人のためにそうする姿が大変印象的でした。
人に対してもよく動く人でしたが、レコード会社を作ったり、映画に携わったり、クルーザーを買って、たったの二回しか乗らなかったり、キャンピングカーも一度も乗らないのに買ってしまったり、とにかくよく動きます。
信じていたスタッフに何億円も横領されたりもしましたが、とにかくアグレッシブに行動した人だと思いました。
あのタモリさんも、「私は、赤塚先生の作品のひとつです」と自らのことを先生の弔辞として読み上げていました(実際はアドリブだったらしい)。
プロデュース能力にも長け、創作されたギャグについては日本一だったと思いますし、何と言っても漫画に登場するキャラクターが素晴らしい。
しかも、その秀逸なキャラクターは主人公ではなく、脇役です。
イヤミや、ニャロメ、ちび太、レレレのおじさん、ココロのボス、めんたまつながりのお巡りさん、ダヨンのおじさん、はた坊、最高なのは脇役なのに主人公になっている「バカボンのパパ」・・タイトルは「天才バカボン」で、バカボンが本来の主役なのに・・実に面白い(*^^*)
それに、「シェーッ」をはじめとする流行語的な決め言葉も数々生み出しました。
「これでいいのだ」とか「賛成の反対なのだ」とか「〇〇だ、ニャロメ!」などなど、ほとんど天才的です。
ビートルズも来日時にヒルトンホテルで「シェーッ」のポーズをしている写真が残っています。
これらを思い起こすと、この本の過酷な内容については少し忘れ、笑顔になることができます(#^.^#)
赤塚不二夫先生の作品、私の子供時代をとても愉快なものにしてくれました。
先生、ありがとうございました。
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