【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Waltz For Debby / 1961》 Bill Evans Trio
十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ビル・エヴァンス・トリオのアルバム、「ワルツ・フォー・デビー」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。
Bill Evans/p
Scott Lafaro/b
Paul Motian/ds
①My Foolish Heart
②Waltz For Debby
③Detour Ahead
④My Romance
⑤Some Other Time
⑥Milestones
ジャズを聴く人で、このアルバムを知らない人はひとりもいないであろう超有名盤であり、本当の名盤でもあります。
逆にジャズを知らない人が、知ったかぶりをするときにもよく使われるアルバムであり、ジャズを聴いたことのない人が、「これがジャズだ」と言われて、こういうものばかりがジャズだとだまされるアルバムでもあります。
良くできているが、耳に心地よいだけあって、その奥深さに気づかずに終わってしまうことが往々にしてあるのではないか、ということが言いたかったのですが・・・。
それにしても、一曲目からビクター・ヤングのポップ・チューン「マイ・フーリッシュ・ハート」を取り上げたにもかかわらず、リリカルでいて、幻想的な世界にいざなってくれます。
ここから、二曲目の「ワルツ・フォー・デビー」、三曲目の「デトゥー・アヘッド」までは、それこそうっとりしている間に、“あっという間”に過ぎ去ります。
三曲目のちょっと“けだるい午後”な感じの演奏には、身も心もエバンスの音楽に捧げてしまいます。
ライブ会場である、ヴィレッジ・ヴァンガードのお客さんは、ジャズの歴史の中でも最高のひとときを過ごしていたわけです。うらやましい話です。
曲の合間にグラスのぶつかる音が聞こえたりしますが、まるでそれはこの曲の一部でもあるかのように、おあつらえ向きにグッド・タイミングで効果音となっています。まさに奇跡の一日だったのではないでしょうか。
このコンサートの10日後、ベースのスコット・ラファロは自動車事故で亡くなり、最高のパートナーをエバンスは失ってしまうのですが、そのことも余計にこの日のこのライブが特別な一瞬だったのではないか、と思わせるのです。
四曲目の「マイ・ロマンス」で演奏がスインギーになり、こちらも思わず体が動いてしまうような感じになります。きっとお客さんもそんな気分だったのではないでしょうか。ベースとの絡みも絶妙です。
五曲目は、バーンスタイン作曲のミュージカル曲「サム・アザー・タイム」をやはりリリカルにそして何か物語りまでを感じさせる美しい出来です。素晴らしい!
最後は、マイルス・コンボにわずか一年ばかり在籍したことのあるエバンスですが、そのときにとりあげていたマイルスのナンバー「マイルストーンズ」を演奏していますが、これもピアノによるテーマの演奏がスピード感はありますが、やはり幻想的です。
トリオがそれこそ一体となって、この有名な曲をさらにグレード・アップさせたかのような演奏で疾走して行きます。
ジャズの一番純粋なところを、純粋なまま聞くことができる珠玉のアルバムと言えます。
〈追記〉2023/03/31
あらためてCDをオーディオ装置にセットして聞き直してみると、やはり音がいいし、曲はいいし、演奏もいいし、ライブを行っているヴィレッジ・ヴァンガードの雰囲気もよく伝わってきます。
ドラムのポール・モチアンのブラシの音なんかすごい臨場感で身体が痺れるくらい素晴らしい。
スコット・ラファロのベースも存在感が凄く、グイグイとリスナーをこのトリオの世界に連れて行ってくれます。名演中の名演だと、あらためて思いました。
そしてピアノのビル・エヴァンスも名演ですが、もう“神がかって”います。
いつも思うが、「いいもの聞かせてもらった」という感じです。
ずっと以前に職場の後輩が「最近、ジャズを聞き始めたんですが、おすすめのアルバムはありますか?」と聞かれ、このアルバムをすすめるのは“いかにも”って感じがしてためらったのですが、結局「心地よい音楽だけど、それだけじゃない、いいアルバムだよ」とすすめました。
クラッシックのアマチュア・オーケストラに所属していた彼は、聞いたあとに感想をくれました。
「素晴らしいアルバムでした。〇〇さんを見直しました!」・・だって(^_^;)
今まで俺をどう見ていたのかなぁ~と思いつつ、「それはよかった」と応えました。
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