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2023/04/30

日仏共同制作の映画「アダマン号に乗って」を見てきました。

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映画『アダマン号に乗って(Sur L'Adamant)/2022年 フランス・日本 監督:ニコラ・フィリベール [ドキュメンタリー]』という映画を見てきました。
本年度のベルリン国際映画祭金熊賞<最高賞>を受賞した作品でした。

地味で良い映画はやはり大手のシネコンなどには掛からないのか、千葉劇場で見られるようになっていました。チケットを買ったらこの映画の鑑賞記念カードをいただきました。些細なことですがうれしいものです。

“まさか”の金熊賞受賞だったらしく、内容はパリのセーヌ川に浮かぶ船のデイケアセンターに毎日いろいろな人たちがやってきて、創造的な活動などを行う、その様子をドキュメンタリーとして捉えたものでした。大掛かりな仕掛けやストーリーはありません。

精神疾患のある人々を無料で迎え入れ、即興コンサートや、色とりどりの絵を描いたり、船内にカフェを開きお客さんのお気に入りのカップにコーヒーを淹れるなど、小さくてもいろいろな活動を通じて社会とつながりを持てるようにサポートしているのが「アダマン号」です。

 

 

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この映画を見ていると、監督が『アダマン号の日々』をやさしく、そっと見ていることがわかります。
映像に生き生きと残されたアダマン号での人々の表情、語らいがその人たちの心の底にある部分にふわっと触れているような感じを持ちました。

社会的マイノリティーとされる存在との共存、その価値、それらをまったくあたりまえのものとして、とてもやさしい眼差しで捉えている作品だと思いました。
現代社会を見つめるその視線は、私にもとても参考になりました。

まだ上映が開始されてから間もないので、気になられた方はご覧になられるとよいと思います。人としての自分の立ち位置が少し“修正”されたような気になるかもしれません。

 

2023/04/29

伊集院静さんの「いろいろあった人へ」を読みました。

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『いろいろあった人へ -大人の流儀 Best Selection-/伊集院静著(講談社)』を読みました。
これは人気の「大人の流儀シリーズ」から選ばれ、まとめられたものです。
2018年発行となっておりますが、古本で買いました。

伊集院さんが様々な読者からの相談に答える形のシリーズですが、伊集院さん本人は、人の人生相談になんかまともに答えられるか、自分でも人に相談なんかしたことがない、とおっしゃっていて、相談にはその時々の自分の気持ちで答えていて、そうするくらいしかないよなと、私も思いました。

相談って、私も相談関係の部署で働いたことがありますが、ある程度答えを持っている人が相談に来ることが多いのです。
それに対して応援するか、あるいは“行き過ぎ”な答えを持ってきた場合はそれをちょっと抑えてあげるくらいしか出来ませんでした。

この本の内容としては、若い頃はけっこう“理不尽”な目に遭うことが多いけれど、それも嫌がって避けてしまうよりも、むしろそれを我慢してやってみた方がいいのだということや、亡くなってしまった人のことを毎日思い出して泣き暮らすよりも、「時」が薬になると思い、なんとかして日々過ごしていた方がよい、泣いている姿よりもそうした方が亡くなった人も安心するよ・・というようなことが主に書かれていました。

また、あの東日本大震災のときに多くの人が亡くなったけれど、不思議なことがいろいろなところで起きていて、たぶんそれは事実で、「霊」というものの存在についてふれているようなところもありました。

私もそう思います。
あちらこちらで耳にしましたが、通常では考えられないことが実際に起こっていたようです。亡くなった人たちが生きてなんとか頑張っている人達を支えてくれているような気がします。

人生って何だ? 生きるって何なんだ? なんて生きる意味を問うていたら訳がわからなくなる。
生きる意味なんぞ、誰か暇な奴が考えればいいの。とも言っていて(^_^;)・・・そうですね、そんなこと考えてもだえ苦しんでいるのなら、少しでも何か生きてやってみた方がいいかもしれません。

というわけで、またあっという間に読み終えた伊集院さんの本でした。
・・ほんと“癖になる”んだよな、伊集院さんの本。

 

2023/04/27

諸橋昭夫先生が亡くなられたことを知りました。

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Facebook友達の記事の中で諸橋昭夫先生が亡くなられたことを知り、先生の優しい表情を思い出しました。
その方の記事にも書かれていましたが、まさに『自治体の電子化において官民を繋いできた』方でした。

私は“素人”なのに情報関係の部署に異動し、職員8800人の情報系システム(メールやグルーブウエア、スケジュール管理、社内SNSなど)の構築と、さらに基幹系システム(事業活動を行うための業務システムと言えばいいのか)で使われているネットワークを情報系と統合しようという仕事をすることになり、勉強の日々でこれから先を考えると目の前が真っ暗になっているときに先生との出会いがありました。2007年のことでした。

仕事を進めるにあたり、学識経験者の意見を伺うことになり、お一人は大学教授、そしてもうひと方が行政情報研究所所長の諸橋先生でした。

川越に先生を訪ねることになったのですが、指定され、待ち合わせた意見聴取の場は、レトロで素敵な喫茶店でした。
やさしく、やわらかな物腰の先生らしい場所でした。
部下数人共々そこで美味しい珈琲をいただきながら先生の貴重で、しかも想像とは異なる現実の業務の進め方について指摘をいただきました。
厳しい意見もいただきましたが、私にはとても参考になりました。

 

 

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意見聴取が終わると、「川越の街をご案内しましょう」という意外な展開にちょっと驚きましたが、小江戸川越の街並みを案内していただき、菓子屋横丁などにも寄り、さらに古い神社仏閣などもご案内いただきました。

お寺の境内に入ったときに突然の雨に見舞われると、先生は境内にある茶店に雨宿りしようと皆を呼んでくれ、そこで「ところてん」などを食べつつ雨宿りするという風流なことになったあの風景も思い出しました。

その後も先生にお聞きすることがあると、「東京駅で待ち合せましょう」と、駅構内の喫茶店などでお話させていただいたこともありました。そのときもとても親身になって相談に乗ってくださいました。

無事にネットワーク統合と情報系システム構築の仕事を終え、私は東京事務所に異動となりました。
もう情報関係、IT関係には関わりが無くなったものの、先生は私が東京で始めた地元を紹介するFacebookPageを日々見ていただいていたようで、ある日私が省庁回りで不在にしているときに事務所を訪ねて来られたそうです(そのときの上司から聞いた)。

そして、私のことを上司二人に話してくださったとのこと。
「あなた達上司は、〇〇さんの書かれているものを読んでいるのですか。読んでおられるならあの文章力に対して何も感じないのですか。よく人を見なさい。」と、言って去って行ったとのこと。

名刺をもらったのに、上司は「あの人は誰なんだ」などと私が帰社したら言ってきて、片方の上司はかつて情報部門にいたのだから先生のお名前くらいは知っていなければならないのに・・困った人達でした。

その後もさいたま市さんが企画した官民の交流会などで顔を合わせることもありましたし、私の個人のブログなどにも目を通していただいてコメントも何度もいただきました。
今でも先生独特の人と人を結びつけるあの“たたずまい”、やさしい表情、物腰が目に浮かびます。
諸橋先生、ありがとうございました。
仕事でも大変お世話になりましたが、そのほかでも教えていただいたことが多々ありました。
先生のことは忘れません。

 

2023/04/25

「田中角栄名言集/小林吉弥」を読みました。

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『田中角栄名言集/小林吉弥著(幻冬舎新書)』を読みました。
珍しく古本ではありません。
以前にも田中角栄の生い立ちから政治の世界に踏み込むところや、その政治手法などについて書かれた本を読み、そのご紹介をこのブログでしたことがありますが、今回は“仕事と人生の極意”と銘打って田中角栄の「名言」を集めた本です。

首相就任時には、“今太閤”と持ち上げられ、ロッキード事件が表沙汰になると一気に奈落の底にバッシングされた田中角栄氏ですが、あれから首相もずいぶん変わり、今や歴史上の出来事、歴史上の人物となりつつあると感じます。
若い人はほとんど知らないかもしれない。教科書で日中国交正常化を達成した首相として習ったくらいしか知識がないという人も多いかもしれません。

この本を読んでみると、田中氏は小さい頃から苦労に苦労を重ねているし、境遇的に独学で勉強するしかなかったが、ものすごい勉強をしていたこともわかりました。

また、人生の恩人と言えるような人とも何人か会うことができて、その人たちから様々なことを学び、「コンピューター付ブルドーザー」なんて言われていましたが、頭脳明晰であったことは当時の田中氏を知る誰もが言っていることがわかりました。

ここでは、その名言いくつも挙げてしまうと“ネタばらし”的に本の売り上げを下げてしまいかねませんので例示はしませんが、“敵”と言える野党の議員にも心遣いの出来る人であったことがよくわかりました。
面倒をみるときには、“とことん”みていたことも人づてに聞いたことはありますが、事実だったということがこれまたよくわかりました。その数も数えきれないほどのものだということも。

今現在の政治家を見渡してみると、敵を敵としてしか見ずに、その「敵対度」はまるで抗争を繰り広げるようであり、人と人としての相対のようなものを感じることがありません。

また、スピーチや国会での討論などを聞いていても、わかりやすい人はほとんどいない。
それに魅力ある語り口を持つ人もいない。
さらにユーモアのある人も皆無といっていいくらいいない・・。

田中氏への政治的評価、人間的評価は見る人によって様々でしょうが、でも、この名言集を読むと、まれにみる人物であったと思いました。

野党と渡り合う時でも、国民に語りかける時でも、もっと心に訴えかけてくる人が現れてくれないかな、などと思いつつ読了。
それにしても今回の統一地方選の投票率の低さにはがっかりしました。
もっと投票率が上がれば、きっと人々に自分の考えを訴えてみよう、語りかけてみようと思う志のある人が現れてくれるんじゃないでしょうか。

 

2023/04/23

昨日、映画「午前4時にパリの夜は明ける」を見てきました。

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映画『午前4時にパリの夜は明ける(LES PASSAGERS DE LA NUIT)/2022年 フランス 監督・脚本:ミカエル・アース 出演:シャルロット・ゲンズブール、キト・レイヨン=リシュテル、ノエ・アビタ、メーガン・ノータム、エマニュエル・ベアール』を見てきました。

フランスの映画で、時代背景は1980年代、その時代の雰囲気が出るようにミッテラン大統領の勝利のシーンや、そのときのヒット曲が流れたり、人気のあった映画、俳優のこともうまく映画の中に入って馴染み、さらにこの映画自体の画質もわざとこのデジタル時代の画質を粒子を荒くしたりして、80年代の懐かしい風合い、色合いの画面になっていました。

フランスの人には、その時代を彷彿とさせるものになっているのだと思います。

 

 

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物語は離婚したばかりで、娘と息子がいる母のこれからの生活、人生に不安を抱えている状況から始まりました。

なんとか深夜のラジオ局での電話取次の仕事をやっとのことで得たのですが、その仕事帰りの明け方に、行くあてのない少女を見つけて連れ帰り、奇妙な4人の生活が始まります。

派手な事件、事故、その他強烈な展開は無いものの、4人がそれぞれの立場で悩みや苦しみなどを抱え、それでもなんとか生きていく様子が描かれていました。

見ていて、これは日本で生活している私のような家族も同じだと感じました。
何気ない日常に、次々と様々な問題が発生して、でも家族はどことなくそれを感じ、励ましあったり、喧嘩してでもなんらかの解決を見出し、さらにそれぞれがそれぞれの恋愛をしたりする・・。

冒頭のシーンから数年後のシーンが後半出てくるのですが、4人が各自自分の人生の方向性を見出しかけているところで、一緒に“和気あいあい”とする場面があり(あのとき連れ帰られた少女も大人になり、血のつながりが無くとも家族のようにその中に入っている)、まだまだ不安要素や、これから頑張らねばならないことが眼前に広がっているけれど、でも家族、親子、友というものはいいものだとしみじみとしたのでした。

劇的な展開などは他の映画と比べてほとんど無いのですが、でもフランス映画らしく「完全決着のないストーリー」は、むしろこの映画を味わい深いものにしていました。

ここ数年、なかなか映画館にも足を運びずらい環境でしたが、今回も意を決して行ってみて、よかったと思いました。

 

2023/04/22

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《The Time Is Right / 1959》 Lou Donaldson

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ルー・ドナルドソンのアルバム、「ザ・タイム・イズ・ライト」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。

Lou Donaldson/as
Blue Mitchell/tp
Horace Parlan/p
Laymon Jackson/b
Dave Bailey/ds
Ray Barretto/conga

①Lou's Blues
②Be My Love
③Idaho
④The Nearness Of You
⑤Mack The Knife
⑥Crosstown Shuffle
⑦Tangerine

大好きなルー・ドナルドソンのアルバムはたくさん所有していますが、先ずは有名なこのアルバムから掛けてみたいと思います。
一曲目は軽快なコンガで始まり、ルーとミッチェルの絶妙なテーマがすっと入ってきて、一気にルーの世界に入ります。
甘く流麗なルーのソロに最初から魅了されてしまいます。
ミッチェルのソロもクールだし、またまた大好きなパーランのピアノソロも木訥としていて良いです。
このアルバムは私の三大好物アーティストの競演でうれしいかぎりです。もうコンガとテーマ部だけで幸せになります。
このアルバム全体に言えることですが、何よりも艶やかなサウンドで統一されているのがとてもいいと思います。

次は私のだ~い好きな 「Be My Love」 、ルーのブリリアントで華麗なアルトが最初っから虜にさせてくれます。
ルーおじさんの男の背中に漂う哀愁、そのアルト・サックスに聞き惚れない人はいないでしょう。
いったい何百回この曲を聴いたことか。このアルバム最大の呼び物といえる曲です。
メロディの美しさがより強調されるルーの名演です。アルトの音が夜空に音符の形になっ
て星になり浮かんでいくような気になります。
そして、レイ・バレットのコンガが絶妙&最高!

三曲目はこれもコンガで軽快なリズムが刻まれ、体が自然に動いてしまいます。
「アイダホ」という曲名にピッタリの曲調です。、
軽々とソロを吹くルーですが、吹いているメロディーはなかなか素晴らしく、とてもこのスピードで軽快に吹いているものとは思えない味わい深いものがあります。
ミッチェルもセンスの良さを光らせます。
途中のコンガとベース(レイモン・ジャクソン)のソロ部分も実にカッコいい!達人同士の“探り合い”みたいです(^-^)

四曲目は、しっとりとしたパーランのピアノと、陰のあるミッチェルのトランペットがちょっとセンチになった人の心を鷲掴みです。
この曲はホーギー・カーマイケルの曲だったか?
一日の仕事に疲れた男が、バーで一人カウンターで飲んでいる姿など似合いそうです。そして、その陰にちょっとした華を添えるようなアルトをルーが聞かせてくれます。
“オトナ”の曲です。

五曲目は、有名な「マック・ザ・ナイフ」、色々な人が演奏している曲ですが、ルーの飾らないまっすぐな演奏もなかなか良いです。
そして、コンガがまた、ひとつ違った味わいをもたらしてくれます。
トップ・シンバルの音もコンガと絡んで非常に美しい音でリズムを刻み、ひとときの“ジャズらしいジャズ”タイムをプレゼントしてくれます。
ミッチェルのトランペットもとても“真っすぐ”な演奏で気持ちいい。

六曲目は、ルーのオリジナルです。
ちょっとすかした格好良さがミッチェルのトランペットにぴったりときています。
ミッチェルが持つ独特の空気感のようなものがこの曲調にマッチしています。
ルーと二人で吹くテーマ部分も息が合っていて心地よいです。

最後は、これまたコンガのリズムが引っ張り、深い味わいあるアルトをルーがまた聞かせてくれます。
相変わらず流れるようななめらかさでソロを吹くルーに、「もっと聞かせてくれっ」と言いたくなるほど、まだまだ聞きたい心境になります。
途中のルーのアルトとコンガの掛け合いなどはライブに来たようです。

このアルバムは、まだまだ聞きたいという気持ちになるグッドなアルバムです。
ほんと、オススメ!!

 

2023/04/21

「死の向こうへ/横尾忠則」を読みました。

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『死の向こうへ/横尾忠則著(PHP研究所)』という本を読みました。
ブックオフで見つけました。わずか200円。この横尾さんの“摩訶不思議”な体験などが綴られた本がわずか200円・・。

1998年発行のものでした。横尾忠則さん62歳の頃。

もう、次から次へと横尾さんの「霊体験」が書かれているのですが、それはさかのぼって2歳の頃母親に背負われていた頃から死を意識していたと書かれている。

父や母の死を二人が元気な頃から意識し、自分の死についても幼い頃から意識していたことがわかりました。

三島由紀夫との死の三日前のやり取り、谷内六郎、柴田錬三郎との別れなども書かれていて、横尾さんはその都度、さまざまな不思議体験をしています。

一番強烈だったのは、瀬戸内寂聴さんが平家のことを書くことになり、源平の合戦のあった屋島に登ろうと、妻と共に寂聴さんに付いて行く横尾さんの話。

事前に寂聴さんのお姉さんの営む仏壇屋に寄ると、寂聴さんからそこにあった般若心経の経本をポケットに入れてもらう。

横尾さんがその夜ホテルに泊まると、階上からもの凄い数の馬と人間が何やら時の声を上げながら頭上をけたたましく駆けて行く・・。
あわてて、寂聴さんからもらった経本を手に取り般若心経を唱える。
奥さんがホテルの人に聞くと、このホテルの場所は源平の合戦のあった一の谷であったとのこと。

さらに、帰京するとレコード会社から仕事が来て、アルバムジャケットのデザインをしてくれとのことであったが、そのアルバムのテーマが偶然にも「平家物語」であったという・・。

さらにさらに、そのディレクターが持ってきたデモ・テープには平家の鎮魂歌が入っていたのだが、終曲には横尾さんが一の谷のホテルで聞いたあの合戦シーンの音声が挿入されていて、横尾さん唖然っ!!

さらにエンディングには、“般若心経”が逆回しになって収められていたのだそうです。

瀬戸内さんとの屋島の取材、般若心経をもらったこと、ホテルでの夜の合戦の音、ホテルの場所が合戦の場であったこと、アルバムデザインの仕事が平家物語であったこと、レコードには合戦シーンと般若心経の音声が収められていたこと。
・・すべてがシンクロしていて、私もこの部分で一番驚いたのでした。

横尾さんは、死を待ち遠しく思ったり、逆に恐れたり、自分の作品の中で死を表現したりと、「死」というものがいつも頭の中に渦巻いているようでした。

上記エピソード以外にも、不思議な出来事がたくさん書かれていました。
このところ不思議・恐怖体験が続いている私には共感することだらけの本でした。

 

2023/04/19

【The Beatles 研究室・復刻版】Past Masters ・ Volume Two[A-2]We Can Work It Out

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。一部修正を施してはいますが、ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。十数年以上前の文なので細部の表現・事実についてはお見逃しください。
今回は、ビートルズのシングル・ヒット曲でCD発売当初では「Past Masters ・ Volume Two 」に入っていた「We Can Work It Out」の記事を復刻してみたいと思います。

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邦題は「恋を抱きしめよう」でした。原題とはかけはなれていますが、当時の付け方だったのでしょうね。不思議と、この曲を聞くと邦題が頭の中に浮かんできたものです。

最初にこの曲を聞いたのは、中学時代で、「オールディーズ」という前期ベスト盤のようなアルバムでした。もちろんレコード盤です。
その中でもひときわ目立つ、キャッチーな曲でした。
“非の打ち所がない”と、当時も思いました。完璧なヒット・ソングです。さすがレノン・マッカートニーの共作です。

明らかに二人の作った曲を合体した感があります。
通常のメロディー部分は、ポール。そして、「Life is Very Short・・・」からのサビの部分はジョンです。

「きっと成し遂げることができる」と、前向きなのはポール。「人生は短い」と悲観的なのがジョン。その後の二人の生き方にも通じるような、それぞれの歌詞です。とても面白い!!
実情はポールの恋人ジェーン・アッシャーがロンドンを離れ、自ら役者として一本立ちするために劇団に入ることにしたことについて、ポールが「それはないよ、僕たちはきっとうまくやれる」と説得というか、泣きついたというか、強引に引き留めようとしたというか・・そんな状態の時に作られた歌のようです。

途中、“ブンチャッチャ、ブンチャッチャ”とワルツになる部分が、この曲の“ミソ”ですが、この部分については、ジョージのサジェスチョンがあったと聞いたことがあります。とすれば、ジョン・ポール・ジョージのコンビネーションが見事に開花した一作と言えるのではないかと思います。
それを見事に実現化したプロデューサーのジョージ・マーティンの手腕もさすがです。

ジョンはハーモニウムというオルガンのような不思議な楽器を弾いており、それが絶妙な効果を生み、さらにタンバリンも大きな効果を得ています。
ビートルズはやること、なすこと、結果的には皆最良の効果を出しています。この曲もその代表的なものという気がします。

英国では、「デイ・トリッパー」と両A面扱いでリリースされ、この曲も1位に輝いています。
米国と日本では、この「恋を抱きしめよう」が単独A面となって、もちろん全米1位に輝いています。
どちらかというと、米国向きな曲であると思うし・・・。

ポールも、ビートルズ解散後のソロ活動のコンサートで演奏しています。よりアコースティックなアレンジで。
やはり、ヒット曲らしいキャッチーな感じは今聞いても素晴らしいものがあります。

いい曲です。


〈追記〉2023/04/19

この曲についても2009年リマスター盤の他、ホームページ作成後に様々な音源が出ておりますので、それらを聞きながら追記してみたいと思います。


Mono Masters Vol.2 収録バージョン

とても落ち着いた感じのサウンドに聞こえる。
リンゴのドラムもタンバリンもあまり出過ぎない感じ。
ボーカル、コーラスも自然に全体のサウンドに馴染んでいるように聞こえる。


Past Masters Vol.2 収録バージョン

左側のドラム、タンバリンの音が際立ってクリアに聞こえる。
ハーモニウムの音もはっきりと区別できるし、ポールとジョンの歌声もとてもよく分離して聞こえる。またボーカルに掛かっているエコーもかなり大きい。


アルバム1(One)2000年リリース盤・収録バージョン

ボーカルへのエコーの掛かりは、薄められ、よりボーカルの“生感”が増している。
アコースティックギターの音がかなり前面に出てきていて、他のミックスよりもはっきり聞こえる。
ハーモニウム(ジョンが弾いていると言われている)の音量を曲の箇所の盛り上がりに依ってコントロールしているように感じた。
全体のバランスがとても良く、これがベストか、と思わせる。


アルバム1(One)2015年リリース盤・収録バージョン

これもいいミックスで、全体のバランスがバッチリ!
ジョンのボーカルがより際立って聞こえる。
サビの「ライフ・イズ・・・」のところから絶妙に真ん中に音が寄ってくるところがこのミックスの特徴のように思った。

 

アルバム1962~1966(いわゆる赤盤)・・2009年のビートルズ音源リマスター後に出たCD収録バージョン

基本的にパスト・マスターズのミックスと同じ。
盤としての音量が他の曲との兼ね合いで調整されているかもしれない。
でも、聞いてみると何となく異なっているようにも感じる。大きな変更・修正は為されていないが、少しはこの赤盤リマスター作製時にいじっているのではないかと思われる。

 

2023/04/18

「嬉しうて、そして・・・」城山三郎さん、を読んだ。

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『嬉しうて、そして・・・/城山三郎著(文春文庫)』を読みました。
これもブックオフで見つけたものですが、ここ数年、城山さんの本を読むといつも意を強くするのです。
起業家や、政治家、作家、その他いろいろな人と城山さんは出会ったり、取材したりしていますが、城山さんご本人の“ブレない”姿勢と、良いと思ったところは取り入れ、また悪いようなところは自らにも問うてみたり、私も生きていくうえで城山さんを見習いたいといつも思うのです。

今回この本を読んで私も同感したり、気になった部分をいくつか取り上げてみます。

〇[政治家についての城山さんの考え方]
一昔前までは、政治家になることは財産を失うことであった。全身全霊を捧げて国事に尽くすという以上、命も財産も捧げて悔いないというのが、本来の政治家の姿勢であった。

・・私もずっとそう思っていましたが、今やそんな政治家ひとりでもいるのかな、と思います。
威張っている人、自分だけは損をしないようにする人、国事よりも自党のこと、自らのことに夢中の人、そんな人ばっかりだと思います。


〇[官僚についても書かれていました]
最高学府を出ていて、その程度の学力、いや常識さえない人間が採用される、という今の仕組みに、根本的な再検討を加えるべきであろう。
彼等は、地位が上がるにつれ、庁内の目も、国民の目も意識しなくなる。彼等の関心は、権力の意向、天下り先周辺の動向だけに向かって行く。こうして、官庁は彼等にとっては、“政治屋”になるための支度部屋でしかなくなり、勤務中も退官後も、一貫して地位利用の日々を送ることになる。

・・まったくもっての同感です。これまたそんな人ばかりが多く、しかもそんな人が地位を上げ、いい思いをしていると思いました。


〇[国民・市民についても書かれていました]
わたしたちは、ただの受け身の僕(しもべ)ではない。わたしたち自身がこの世では主役であり、主権者である。そのことを思い知らせてやるためにも、選択し審判する権利を思う存分、行使することである。

・・私たちには、選挙という権利の行使が用意されているというのに、このあいだの統一地方選第一弾でも投票率は低かった。
国民、市民はこんな気持ちでいるのだ、というのを示さねば、私たちは“なめられる”ばかりなのに。


〇[あとがきに城山さんの娘さん、井上紀子さんが《父から残された宿題》として書かれていた部分]
「書くこと」だけにこだわり、無所属で走り続けた父。その父の残した宿題、それは「当たり前のことが当たり前にできる世であり続けること」。
つまり、自分で考え、自分で判断し、自分で選択できる世の中であること。選択肢があるが故の「悩める」ことの幸せ。
言論・表現の自由があってこその平和。その為に、人間としての品格をもった、成熟した大人になること。
心は少年少女でも、人間は「大人」でなければならない。知らず識らずのうちに恐ろしい世の中になってしまわないように。

・・これは、まさしく“今現在”の日本のことを言っているのではないかと思いました。
『チャットGPT』で政府答弁を作ろうなどと言っていた大臣もつい最近いました。自分で考え、自分で判断して、そして“悩む”ことが人の喜びなのです。ほんとうに情けないと思いつつ報道を聞きました。
言論・表現の自由も現実の今の日本には無言の圧迫、統制が存在していると思いますし、国会の議論を尽くさず、“別立て”で予算を倍加し、兵器を調達していく今の様相は、タモリさんが言っていたように『新しい戦前』が静々と始まっているように思います。

この本を読んで、私も今まで心の中で強く思っていたことの基本的なことについて、絶対に“ブレない”ようにしようと意を強くしたところです。

 

2023/04/17

『あさひの芸術祭 #あさげー』に出掛けました。

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昨日、体調もまあまあだったので、旭市で4月1日~5月7日の土日祝日に開催されている表題の『あさひの芸術祭 #あさげー』に出掛けました。

ざっとチラシを見渡しただけでも、旭市内17か所でさまざまなアーティストがそれぞれの作品を展示していて、スタンプラリー形式で多くの人が会場を巡っていました。

 

 

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とりあえず、私は中学時代の担任で美術の先生が「さわやかホール」という場所で『南展』を開催しておりましたので、そこに出掛けました。
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今回は、ふだん福祉関係の施設の講堂として使われているホールが会場となっており、いつもとは異なる余裕ある展示でした。
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今までの個展でも展示されていた作品もありましたが、これだけ一同に先生の作品が並ぶと壮観でしたし、とても楽しかった(#^.^#)
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ゆっくりとお茶などを飲みつつ先生とのお話も出来て愉快なひと時でした。

また、会場を訪れる親子連れなどは、大きな模造紙の巻紙にどんどん絵を描いたり、石に彩色して作品を作ったり、会場のあちこちで笑い声が聞こえるなど、今までとは異なった“盛り上がり”を感じました。

 

 

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ゴールデンウイークまでやっているので、旭市近郊の方にもぜひスタンプラリーをしながら行かれることをおすすめいたします。

2023/04/14

東海林さだおさんの「明るいクヨクヨ教」を読みました。

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『明るいクヨクヨ教/東海林さだお著(文春文庫)』を読みました。
これまたブックオフで見つけた本ですが、古いですよ。1997年9月~98年11月にオール読物に「男の分別学」として連載されたものを改題し、単行本としては1999年2月に刊行されたものです。

だからもちろん話題も古く、長野オリンピックで里谷選手がモーグルで金メダルを取ったときのことも書かれていて、なぜ平らな方がいいゲレンデにわざわざコブを作っているのか、などと東海林さん独特の“文句”をつけています(^_^;)

《老人力》というものが話題となっていた頃でもあったのでしょう、老人力という言葉の発端となった赤瀬川原平氏と対談もしています。
でも、赤瀬川さんの“ゆるう~い”それこそ老人力そのものの受け答えは、何ごとも体系化したり、決めつけて面白がる東海林さんの話はあまり噛み合っていませんでした(^^;)
《老人力》って、その言葉の流行を面白がるよりも、自分が老人になってきたなぁなどと自己をみとめるようなことなので、赤瀬川さんを『開祖』として老人力時代年表を作ろうなんて話はちょっと“お門違い”に思いました。

築地魚河岸見学ツアーに参加した話は面白かった(^-^)
現在、築地市場は移転してしまいましたが、当時の様子が知れて興味深く読みました。
マグロの“セリ”の現場もかなりリアルで詳細に書かれていました。
こういうときの東海林さんはかなり“生き生き”としています。

そんなこんなでサッカーという競技にいちゃもんをつけたり、鹿児島までさつま揚げツアーに出掛けたり、開通したばかりの長野新幹線に乗って松茸狩りツアーに行ったり、東海林さんの興味はいろいろなところに向けられていました。

今回も、あっという間に読んじゃいました!
話題は古いものが多かったけど、楽しめました。

 

2023/04/12

「夫婦公論/藤田宜永・小池真理子」を読みました。

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『夫婦公論/藤田宜永・小池真理子著(毎日新聞社)』という本を読みました。
ブックオフでまた見つけたのです。この本。
初出は1993年10月~95年3月の毎日新聞日曜版連載と記載されていました。

藤田宜永さん(作家)と、小池真理子さん(同じく作家)のご夫婦がリレー形式で自分達夫婦のことを書いたものです。
当時、ご夫婦は40代後半、軽井沢に移り住み、作家同士なので二人の生活はその家で密接しています。
そんな中、夫婦互いが互いをどんなふうに思っているのか、感じているのかを互いの文を読んで「ふざけんな」状態でリレーしているのでした(^^;)

私にはよそのご夫婦がどんなふうにして仲良くしているのか、喧嘩しているのか、お出かけしているのか、留守番しているのか、などなど知る由もないのですが、この本でのお二人は遠慮会釈無く(^_^;)お互いを“ののしり”つつ、“褒め殺し”しつつ様々なテーマで夫婦の「有り様」を書いていました。

スポーツ観戦や、車の運転、買い物、献立、節約と浪費などという、いかにも夫婦で“揉め”そうなテーマについても書かれています。
作家だろうが、サラリーマン夫婦だろうが、基本的には男と女が一緒に住んで夫婦をやっていると揉める様子は変わらない(^-^;ようです。
なんか、すこし安心しました。

本自体が古かったので、調べてみたら夫の藤田さんは2020年に亡くなられていました。
なんだかんだ言いながら結局互いを認め、仲はいいんだこの夫婦、と読後に思っていたのですが、ちょっと寂しい気持ちになってしまいました。

夫婦というものは、傍から見ていると仲が悪そうな二人が意外と仲が良かったりするもので、その実態は如何なるものかはわかりません。私ども夫婦がよそ様からどう見えているのかわかりませんが、まあ“中の上”くらいの仲の良さ具合なのかもしれません。

夫婦生活の「50」の難関について“夫婦リレー”で書かれた本、あなた方夫婦も読んでみた方がいいと思いますよ。

 

2023/04/10

【はっPのアナログ探訪_0172: STEPPIN' INTO ASIA / RYUICHI SAKAMOTO ( Single )】

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坂本龍一さんが亡くなられて、音楽の世界でも大きな損失でしたが、その他坂本さんは歯に衣着せぬ形で様々な発言もされていました。
日本は自由な国であるはずなのに、放送や新聞などのメディアも統制下にあるような“及び腰”な態度が昨今、目につきます。
そんな中、坂本さんは勇気のある方だと思っていました。
私のような、なんの権力も身分もない一市民の発言でもTwitterなどではちょっと国の施策にこれはどうかと思うと書いただけで表示が控えられるようなことが何度もありました。
なので、Twitterにはそのような発言は流れないようにして別のメディアで発言するようにしています。

話を元に戻して、このピクチャーレコードです。
どのような経緯で、どこで買ったのかも記憶にないのですが、たぶん、ふつうのレコード屋さんで買ったと思います。
盤面には1985年の表示があります。

 

 

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「ステッピン・イントゥ・エイジア」というタイトルのこのシングル盤、掛けてみるとまさに“坂本龍一ワールド”な音楽とサウンドです。
テイストは“アジアン”な感じ。メイン・ボーカルは若い女性の声で、ラップ風に歌われていて、トモコ・アサノと表示されていて、英詩は矢野顕子さんと盤面に印字されています。

途中、コーラスで矢野顕子さんの声も聞けます。

 

 

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製造上の理由で音質についてはご容赦を、というような注意書きが同封されていました。
でも、逆にこういう音楽にはあえてこんな、ややロー・ファイな音が似合うのではないかと思いました。

B面も続編が入っていて、よりその“ワールド”の深みに入っていく感じです。
サウンドも演奏もより“実験的”な雰囲気が漂います。
それに矢野顕子さんのボーカルもさらにフィーチャリングされています。

とても面白いレコードでした。
久しぶりに聞いて思い出しました。

坂本さんのご冥福をお祈りいたします。
私の学生時代に様々な音楽で台頭していた方が次々と亡くなり、寂しいかぎりです。

 

2023/04/08

「島耕作も、楽じゃない。」を読みました。

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『島耕作も、楽じゃない。/弘兼憲史著(光文社新書)』という本を読みました。
これもブックオフで見つけたものです。2016年初版発行となっていました。

著者、弘兼さんは言わずと知れた、「漫画 課長・島耕作(※やがて会長・島耕作にまで出世)」の作者です。
私もそのコミックスをお医者さんの待合室や、その他いろいろなところで読んだし、時にはブックオフで何冊か買ってきて読んだこともあります。

いわゆる会社員の“出世物語”ですが、けっこう“お色気路線”的な部分もあり(※この本を読んだら、元々は出版社側の要望でそういうものを描けということだったらしい)、また周囲の人達の人生模様も描かれ、さらにこの漫画には必須というか、悪い人が悪だくみするシーンも満載です。

そんな漫画の主人公「島耕作」の生き方を中心に『仕事・人生・経営論』という展開で書かれた本になっていました。

弘兼さんは会社員人生というか、組織での人の動き方や、内部の状況を細部に渡って描かれていて、この知識というか、経験的なものはどこから?といつも疑問に感じておりました。

読んでみたら、弘兼さん、大学卒業後に松下電器に就職され、三年間の日々を過ごされていたとのこと。わずか三年間で様々なことまで、しかも“機微にふれるところ”まで体得していたようです。もちろん、これも書かれていましたが、様々な人達への調査、インタビューなどもかなりされてきたわけですが。

この本は、弘兼さんが思う『仕事を通じた人生』を俯瞰するような形で書かれたもので、成功する人でも「実力半分、運半分」だとあらかじめ思っていた方がいいのだということも書かれていました。

後半には、世間でもよく知られている成功者と言われている人達へのインタビューも掲載されていました。
ファーストリテイリングの柳井氏や、九州旅客鉄道の唐池氏などのお話は、まさに島耕作の“リアル版”みたいでしたが、私のような人間には、その考えが遠い世界のことのようで、ただ呆然として読み進むしかありませんでした。
ようするに、私の人生には“関係ない”ことなのでした。

読んで面白い本でしたが、仕事に生きるって大変だよな、それだけで生きていたらつらいよな、と、この歳になって日々感じていることをあらためて感じさせてくれるものでした。

 

2023/04/07

【南先生の玉手箱_0059_坂〇苑交流会に参加して】

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私の中学時代の担任で美術の先生の現役時代の資料やメモなどの文書を掘り起こして活字化する作業。
今回は平成17年12月9日の日付が入った当時の通信文を活字化します。
先生が当時勤務されていた学校は春・秋の二回、学年を分けて施設を訪ね、お年寄りとの交流をされていたようです。
それについての文章を見つけましたので、読んでみようと思いました。

以下、先生の文章です。

《坂〇苑交流会に参加して》

春と秋、学年を分けてお年寄りのみなさんと児童の交流を持つ。
今年も一緒に参加をして、私ごと、昨年お会いしたおばあさんのところに一年ぶりにおじゃまをした。
昨年のことを覚えていてくれた。

子どもはいいねえとの話から、偶然だが、戦争のことや平和や命の大切さに触れて昔を思い出しながらひと時いろんなお話をしてくれた。

毎日思ったこと、あったことなど素直な気持ちで書き続けている日記、続けるということ、私などなかなかできない。三日坊主のまま年を重ねてきた。
今からでもまた日記はじめたいと思った。

昨年の交流会のこと、部屋に来てくれた大総っ子の二名、名前も書いてあった。
昔をふりかえって今の子どもたちには分からないだろうけど、今は豊かで平和ないい時代だ。
食べるものや買うものもがまんした60年前の暮らしの中で、あと少しで戦争が終わる時に、自分の子を戦争でなくしたこと、日本中の男の人がたくさんなくなった時代に国民のひとりとしてたくさんの苦労をしてきたおばあさんのいろんなお話を大総っ子がどんな気持ちで聞いただろうか。

少しの時間ではあったけれども、今日の体験がどこか心の一部に残ってくれることを願う者であります。

豊かな時代にこの施設に暮らすさみしさも語ってくれました。


[みんなが食堂に集まって小さな舞台の上で大総っ子が歌や踊りを精一杯発表した。
お年寄りのみなさんが見てくれて拍手をくれて、子どもはいいよね~となごやかでいい顔をしてくれた交流会場でのひと時。

舞台の上でまたあいさつの態度やお年寄りのみなさんへの心くばりなど大総っ子がそれぞれ今年の成長ぶりを見せていた。

今日は交流を通しての勉強のひと時だが、老いも若きもみんなお互いの世代が持つ良さがぶつかり合う今の時代に大きな課題でもあるたくさん地域や学校でかかわることのひとつの体験日だった。]


以上が先生の文でした。

戦争を知っている人から話を聞くということが、もうかなり難しくなってきました。

最近聞いた話ですが、タモリさんが黒柳徹子さんから「今、どんな時代なんでしょう」と聞かれ「新しい戦前が始まっている」と答えたとのこと。

私もなんだかうすら寒い気持ちになりました。
あまりにも政府や政治家の話や動きに無頓着。
もっと敏感に反応しなければならないことが日々伝わってきますが、あきれるほど無関心な多くの国民。
その間に国会での議論を経ずに着々と戦争を経験したことのない人間が戦争の準備をしていると・・私も感じています。
それについては、このカテゴリーではないところで、ブログに書きたいと思っています。
今回は、お年寄りと子どもたちの交流についての文章活字化でした。

この作業、まだ続けます。

 

2023/04/06

伊集院静さんの「無頼のススメ」を読んだ。

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『無頼のススメ/伊集院静著(新潮新書)』を読みました。
2015年発行のもので、ブックオフで見つけました。

タイトルどおり、伊集院さん流の“無頼”について書かれている本なのですが、最終的には政府や行政に頼ったりしていても、あるいはお願いするばかりではどうにもならないことばかりなので、何とか自分で自分の始末をつけないと世の中やっていけない・・という話になり、「そうか、自分もけっこうブログその他で色々怒ったり、主張したりすることがあるが、ある程度“いい意味”でそんなことは諦めて、自分なりに生きるしかないな、とも思いました。

読んでいて、すこし気になった“キーワード”のように感じた部分を書いてみます。

〇昔に比べると最近の人はとかく早口で、要領よくしゃべろうとします。大事な話は間を置きながら、間違えてはいけないところでは沈黙を交え、ゆっくり話すこと。

という部分でした。
この頃は、ニュースなどで街角でのインタビューまで、語尾の部分と次の会話をくっつけて編集しているのを聞きますが、短時間でまとめたつもりでも、聞いている方は整理がつかず、頭が追いつくことができません。・・そんなのばっか・・。


〇世の中で金をたくさん儲けたやつの八割は悪党だと思っておけ。

昔も今も世の中では悪党のところに金は行く、というわけで・・そのとおりだと思いました。


〇暇さえあればスマホを取り出していじる。テレビや新聞の言うことを丸呑みする。いつも誰かと集まって、騒ごうとする。

私と“キライな人”が合致しました(^_^;)


〇空海の「虚しく往きて実ちて帰る」という言葉から・・・
 スマホやネットや日々目の前を過ぎて行く情報に踊らされるのは、空海とは真逆で、どうでもいいことで実ちて往きて、何も得るものなくして虚しく帰っているだけではないかな。

情報に踊らされ、流行りものに飛びつき、浮かれている・・悪いけどそんな人がいっぱいいる、と私も思いました。

以上が、「無頼のススメ」を読んだ私の簡単な感想です。
伊集院さんの本はまだ手元に何冊かありますので、また読んだら読後感を書こうと思います。

 

2023/04/05

気分転換に映画「コンペティション」を見てきました。

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映画『コンペティション(OFFICIAL COMPETITION)/2021年 スペイン・アルゼンチン 監督:ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン 出演:ペネロペ・クルス、アントニオ・バンデラス、オスカル・マルティネス』を見てきました。

コロナのこともあって、映画には、なかなか足を運べない状況でしたが、最近いろいろと体調不良が続き、家にこもっているとますます落ち込んでしまうような気がして、出掛けることにしました。

千葉劇場という小さなところで上映されていましたが、この映画、本当だったら飽きるヒマもない面白い展開なので、もっと大きなところで上映されてもいいんじゃないかと思いました。

大富豪が自分の名を後世に残したいという不純な動機から映画製作を思いつき、抜擢された監督がペネロペ・クルス、出演者に選ばれたのは格式高い演技で知られた超一流のベテラン俳優(オスカル・マルティネス)とエンタメ作品で世界的な人気を獲得したスター(アントニオ・バンデラス)という配役で物語は進められます。

 

 

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ベテラン俳優とエンタメ人気の俳優は、お互いに“大嫌い”な気持ちを抱きつつ、また監督役のペネロペ・クルスも一筋縄ではいかないぶっ飛んだ監督で、三人が三人とも互いに騙しあい、ののしりあい、ある時は親密に、ある時は“エクササイズ”だと言いながら考えられない過酷な状況での演技を強要したり、非道とも言えるような試練を与えたりもします。

大どんでん返しが何回もあったり、三人の表情から、見ているこちらも、どこまでが本当か、どこまでが裏切りか、どこまでが演技か、ハラハラしたり迷ったりの不思議な映画製作ストーリーでした。

この映画は、今どきの上映スピードを速くして見たりする人には意味のないものになっています。
微妙な“間”や、役者の表情、時間の経過がとても重要な部分を占めているのです。
“あらすじ”だけわかって、映画を見た・・なんて言っている人は「お呼びじゃない」のです。

大人のための大人のいい映画でした。
行ってよかった。

 

2023/04/03

「日本地図の謎 おもしろ島々地図」という本を見つけて読んでみました。

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『日本地図の謎 おもしろ島々地図/地図ミステリー愛好会・編(廣済堂文庫)』という本をブックオフで見つけて、読んでみました。
2007年刊行のものなので、「島」という話題になると、いろいろ国境や国防・警備などの話題もあってその当時の状況で書かれているのですが、おもしろかった!

身近なところでは房総半島南部にある鴨川市の「仁右衛門島」も載っていました。
平野家という個人が所有し、代々世襲で《平野仁右衛門》を名乗り、島に住んでいるという珍しい島。

手漕ぎ船で渡してもらって、夏などは観光客が日がな一日“海と島”を満喫するという、私も子供が小さい頃家族で行ったことがあります。

平野家がこの島を手に入れたのは、戦いに敗れた源頼朝を島に“かくまった”礼に与えられたという逸話が残っています。

また、のんびりした島が現代アートで注目されることになった瀬戸内海の「直島」、今やすっかり有名になった「軍艦島」、ひょうたんの形をした瀬戸内の「黒島」は人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルだったらしい・・など話題は尽きません。

私が仕事で島根に行った時の夜、部下を連れて夜に飲みに行くと、テーブルに着いた女の子に「この辺の若い娘はどこで遊ぶの?お気に入りのスポットみたいなところはあるの?」と聞くと「もうねぇ、ここらへんは何と言ってもみんな“大根島”に行くよ!」と即座に明るく返事をしてくれました(^^;)

思わず笑ってしまって「なんじゃそりゃっ!」となったのですが、聞いたらまだ二十歳にもなっていないその娘たちは「ステキなところだよ、一度行ってみるといい」と笑顔で応えてくれました。

その「大根島」も載っていましたよ!(#^.^#)松江や米子から車で30分、湖の中にぽっかりと浮かんでいる島とのことで、年間80万本ものボタンの花が咲き乱れる美しい島なんだそうです。
今度、島根に行ったらぜひ行ってみようと思います(^.^)/

涙なしには語れない悲恋伝説の残る島や、家康がつくった人工島「佃島」は、もともと大阪にあった佃村の人達に家康が世話になり、お礼に同じ名の島を江戸につくり、そこに村人を呼び寄せて漁業権を与えた・・なんて話もありました。

貧しい時代の厳しい話などもあり、つらい部分もありましたが、でもそれぞれの島の話題がそれぞれに興味深く、あっという間に読み終えました。

とりあえず「大根島」には一度行ってみたい(*^-^*)

 

2023/04/02

聴力を失うところでした。

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最近、内容は詳しく言えないのですが、耐えられないほどのストレスを受けることがありました。
気を失う直前までの激しいストレスでした。

それから数日後のことでした。

夜中に異変を感じて目を覚ますと、ものすごい耳鳴りがしていました。
ぐわんぐわん、じょわんじょわんと、何か鴎の大群が飛んできたような感じでした。

「これはいったいなんだろう?」と最初は建物の外で何か大きな音の出る作業でも深夜にやっているのかと思いましたが、どうやら違う、自分の頭の中というか、左耳の中でこの騒音は発せられている・・。

そして気付くと左耳からは外部の音があまり入ってきていないように感じる。

あわてて階下に降り、落ち着くため白湯を一杯飲み、自室に入り左耳を触ってみたが、その触っている音も、ものすごく“こもって”いる。

しばらくじっとしていれば治まるんじゃないかと腰かけていましたが、まるでダメ。

二階に上がり、妻を起こして事情を説明し、また二人で階下に。

医学書などを見たり、手持ちの漢方薬で効くものがないかと探したりしていたのですが、左耳の様子がどんどん悪くなっているのがわかる。

イヤフォンを出して左右の耳に装着。
音楽を流して、左右の違いを調べると、左耳は二割くらいしか聞こえていないし、さらに“ぐわんぐわん”共鳴音のようなものが聞こえて、ほとんどどんな音が流れているのかもわからなくなっている。

以前の様々な職場で、四人の突発性難聴になった人のことを思い起こすと、そっくりの症状でした。
どの人もすぐに医者に行って、高気圧酸素療法などを行った人もいましたが、皆、片耳の聴力を失いました。

私もそうなるのかもしれないと、ある程度覚悟をしましたが、もう眠ることもできないほどに落ち込み、翌日に耳鼻咽喉科に行こうと妻とは話をして、妻は寝かせて、午前二時くらいから朝まで私はひとり自室で椅子に掛けていることにしました。
朝起きたら聴力を完全に失っていたら悲しいと思い、ずっと起きていて、状態を確認し続けようと思ったのです。

途中、ネコが心配して何度か部屋に入ってきたりもしましたが、一人で夜を過ごし、やがてウトウトしてハッと目が覚めると朝。

あわてて左耳を触ってみました。

あっ、聞こえている。

かなり回復していました。涙が出るほどうれしかった。

もう音楽を聞くときも、よく聞こえず、しかも大きな雑音混じりになるんだろうなと思っていたのですが、なんとかそれは回避出来たようでした。

ストレスというものの怖さがとてもよくわかりました。

今後はなるべくストレスからは逃げ出そうと思いました。どんなこと言われようと、その方がいい、その場を逃げ出した方がいい、と強く思ったのでした。

今は、ゆっくりおとなしく家で過ごしているところです。

 

2023/04/01

「いまも、君を想う/川本三郎」を読みました。

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『いまも、君を想う/川本三郎著(新潮文庫)』という本を読みました。

文学、映画、旅などの評論、エッセイ、翻訳の執筆活動をされている川本三郎さんの奥様、服飾評論をされていた川本恵子さんが亡くなり、「いまも君を想う」というタイトルどおり、奥さんの恵子さんとの馴れ初めから結婚生活の想い出、そして亡くなる間際の出来事、妻への思いなどを綴った本でした。

著者の川本三郎さんは、ほんとうに奥さんが大好きで愛していたのだな、というのがどの頁を読んでみてもわかりました。

恵子さんは夫の川本三郎さんがまだ二十代なのに、ある事件をきっかけに勤めていた新聞社を辞めることになっても、自分がいるから大丈夫、あせらずに今後の方向を探しましょう・・というような感じで支え続け、その後も様々なことについてフォローもすれば背中も叩き、さらに健康にも注意を払い、たくわえができれば、二人の想い出をつくりに旅に出たり、ふたりの数々のエピソードは読んでいて心あたたまるものでした。

それぞれのエピソードは克明に記憶されていて、そのときの奥さんの表情や、仕草、そしてたぶんこういうことを考えてくれて、こんなことを話してくれたのだろう、ということがたくさん書かれていました。
それはもう、驚くばかりの鮮明な表現で・・。

後半になると、奥さんの癌が見つかり、その後のお二人の様子がこれも克明に書かれているのですが、恵子さんが気丈に振舞えば振舞うほど、涙なしには読めないということになってしまいました。

でも、読後感はとても爽やかでした。
夫、三郎さんの「ああすればよかった」「自分のとった行動はあれでよかったのか」という気持ちも書かれていましたが、これだけ奥さんのことを考え、思い、最後の日までのことを書ききったという事実が「爽やか」な印象を残すことになったのだと思います。

心に残る素敵な本でした。

 

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