
『世なおしトークあれこれ/美輪明宏著(PARCO出版)』という本をブックオフで見つけ、ちょっと気になったので読んでみました。2007年発行日となっていますので、かれこれ16年前のものです。
あの美輪明宏さんが『オーラの泉』などのテレビ番組に出て、テレビでの露出も多かった頃に出た本だと思われます。
古い本ですが、今でも私が共感できることが書かれていました。
「日本のオッサンには文化がない」という発言です。
物欲、名誉欲、性欲、食欲を四本立てで生息し、利便性、機能性、経済性の三本柱で突っ張ってきた・・だから文化などはどこかに“置きっ放し”というか、眼中になかったのだと思います。
美術館、図書館、劇場、コンサートホールなどは、世界どこの国でも客の割合は男女半々だが、日本は八割から九割が女性、あるいは若者だけとなっている、とおっしゃっています。
男どもはどこへ行くのか、ゴルフ場、スポーツランドか飲み屋、風俗関係・・。
政財官界、マスメディアも含め、デスク以上が行くところは、料亭や高級クラブ、自分の商売には何の益にもならず、役立つ情報も得られない。
でもって、一般大衆から遊離したところにしか行けない。
現場の若い社員の情報には耳も貸さない。
自分の一週間の仕事のローテーションをこなすだけで精いっぱい、ビジネス関連の本以外は読書もしない。
劇場、音楽界、美術館など、一生に一回か二回行けば良い方・・。
テレビもニュースかスポーツ番組以外見もしない。
世の中がどう動いているかわからない。
ハードの時代はすでに終わり、ソフトの時代に突入しているのに気がつきもしない。
すごいです。ふだんから美輪さんが思っていることなので、矢継ぎ早に一気に書かれていました。
私が仕事をずっとしてきた中で、美輪さんが示した上記の“オッサン”以外にあたるであろう上司はせいぜい一人か二人でした。
地元の美術館から「田中一村」の企画展があるので、東京でのPRをする部署である私の職場に招待券が届き、それを各都市に持って行ってお知らせ方々配布するということがありました。
ついては、うちの部署からどなたか一度ご覧においでいただけるとありがたい、という話になり、いつも“つるんで”いる私の上司と部下が二人で出掛けていきました。
すでにNHKの「日曜美術館」などでも紹介され、話題を呼んでいた企画展でした。
帰ってきた二人に私が興奮して、「どうでしたか、一村の作品」と聞いたら・・
「ただ絵が飾ってあるだけだった」「何が面白いのかわからない」「見に行くやつの気が知れない」「5分で見てきた」・・だと・・。
美輪さんのいう典型的なバカ“オッサン”です。
どんなに早足で見てもあれだけの作品群は1時間では見切れないのに・・5分だと。
美術館内をジョギングしてきたのでしょう。
わるいけど、こんな人間の下で働いているのか俺は・・、とがっかりしたのでした。
そういえば、この上司、私の文書に対して「日本語が間違っている」と修正させようとしたことがありました。
私は、「いえ、私の使い方が正しい使い方です。辞書を確認してからおっしゃってください」というと、辞書を見て・・「あれ?最近意味が変わったらしい」だって。「前からずっとそうです」と思わず言っちゃいました。
中学生でも使わない間違った日本語を使っているその上司に「ちなみに毎月どのくらい本を読まれているのですか」と聞いたら「二年から三~四年に一冊、ビジネス書を読んでいるぞ」と自慢気でした。
「そうですか、私はだいたい月十冊くらいです」と言ったら、異星人を見るような目で見ていましたっけ。
話題がなんだか逸れましたが、ようするにそういうオッサンの文化への無理解がやがて日本の様々なことの衰退に繋がっていくのだ、ということが書かれた本だったのでした。
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