「新聞記者 司馬遼太郎/産経新聞社(著)」という本を読みました。
『新聞記者 司馬遼太郎/産経新聞社・著(扶桑社・発売)』という本を読みました。
司馬さんが、かつて新聞記者であったということは知っていましたが、どんな状況下で、どういう仕事をしてきたのか、約15年ほどあったその期間の司馬さんについて書かれた文献などにもふれてこなかったので、興味深く読みました。
そしてこの本は、司馬さんが戦後の混乱期に新興の新世界新聞や新日本新聞という今はもうない新聞社を経て、やがて産経新聞社に入り記者生活をしていた頃のことが書かれています。
記者というと、駆け出しの頃は事件を担当し、警察署などを回るのですが、司馬さんは宗教・大学などを担当していたそうです。
それも産経新聞時代から京都にいたので、西本願寺、東本願寺などを中心とした宗教関係の人たちや、京都大学周辺の学問・研究などの関係にも人脈が広がっています。
しかも、寺院や大学内に出来た記者クラブなどに出入りし、その間、多くの本も読めたし、研究することも出来たようです。
知識の塊のような司馬さんの話が何よりも面白い、というのが当時を覚えている人たちの記憶に残っていて、有名な作家などにも「その話をそのまま小説にしたらいいものになる。」などとアドバイスを受けたりしています。
また、その時代に司馬さんが“記者としてのあり方”を説いてくれた先輩二人に出会い、その考え方はずっと司馬さんの心の中にあったということもわかりました。
《新聞記者は、その無名性と新聞の公共性を武器に権力や権威の中枢に容易に接近して取材できる。そこで得られる情報の機密性、意外性は一般人の及ぶところではない。》
司馬さんの直木賞作品「梟の城」の主人公である忍者の行動は、そっくり新聞記者のそれではないかと思われると書かれていました。
出世も求めず、特ダネを取っても無名性の中にただ存在し、記者としての人生を淡々と生きる先輩を最後まで心から尊敬していた様子も書かれていました。
さらにエピソードとして大御所の作家が連載小説の原稿が間に合わず、連載が“落ち”そうになったときに、記者であった司馬さんが空いてしまった一回分をその作家がいかにも書きそうな書きぶりとストーリーで書いてしまい、そのまま載せてしまったエピソードも書かれていました。
その大御所作家が「著者病気のため」などと書かれて空白となった連載スペースを見ようと新聞を広げると、なぜか小説の続きが載っている。しかも面白い。
ということで、その作家は怒らず、「これはいったい誰が書いてくれたのだ」という話になり、司馬さんの筆力に驚いてしまったということです。
などなど、いろいろな話題と共に司馬さんの新聞記者時代のことを書いたこの本、面白く読みました。
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