遠藤周作の古い講演の活字化「人生の踏絵」を読みました。
『人生の踏絵/遠藤周作・講演(新潮社)』を読みました。
これもブックオフで見つけたのですが、1960年代から1970年代にかけて、作家の遠藤周作氏が自らの著書とキリスト教についての講演について活字化したものです。
発行が2017年になっていますので、近年、遠藤氏原作の「沈黙」がマーティン・スコセッシ監督で映画化された際に古い講演で「沈黙」などの作品について語っているものを長い年月は経ていますが、活字化したものと思われます。
遠藤周作さんについては、私は中学・高校時代に愉快な「狐狸庵シリーズ」などのエッセイをよく読みました。シリアスな文学としては、「沈黙」と「イエスの生涯」他数点を当時読んだきりです。
バラエティー番組に回答者として出演している時もユーモアあふれる人でしたが、この講演でも内容はシリアスなものながら、所々に(爆笑)と添え書きのあるようなユーモアも交えながらの講演であったことがわかります。
何度も遠藤さんは書かれていますが、キリスト教作家などと言われるが、「キリスト教はいいよ」だとか、本文の筋がキリスト教礼賛の結論に向けて動いていくようなそんな作品を書いているわけではないことと、作品「沈黙」の中で踏絵を踏んでしまう人物について書かれているように、大変な局面で踏絵を踏んでしまうような人、そのときの人間の心の中、葛藤や、その他去来するものについて・・それが自分が書いている作品の大きな部分を占めている、というようなことが講演で語られていたと私には読めました。
ようするに、キリストが、宗教が、なんらかの助けをしてくれるわけでなく、道の方向を示してくれるのでなく、その極限的な状態にするっと入り込んできて、自分というものを見つめるきっかけのようなものになる・・というようなものなんじゃないかと書かれていたと私には読めました。
そこで、ハッと思い出したのは、ジョン・レノンがビートルズを解散して出したソロ・アルバムの中の曲「GOD(神)」で、「神というものは、私たちが自らの“痛み”を感じるときの“物差し”のようなものだ」と歌っていることでした。
似ている感覚なんじゃないか、と思いました。
私たちが人生の中で様々な苦悩を抱え、傷つき、苦悶し、自らを見つめなおすときには何らかの指標のようなものがそこに存在していると、私も今までに何度か感じてきました。
それがこの講演で語られていたことの中にあったのではないか、というのが今回この本を読んでの一番の感想です。
ジョンもビートルズ時代を経て、ソロになり、自分のことを赤裸々に語る曲を作るにあたって、あのような歌詞が生み出されたのではないかと思いました。
いつも本を読むと、今まで霧がかかっていたようなことが少し見えてきたりします。
それが私の読書するときのモチベーションとなっているのです。
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