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2023/06/05

【The Beatles 研究室・復刻版】Please Please Me[A-3]Anna (Go To Him)

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。一部修正を施してはいますが、ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。十数年以上前の文なので細部の表現・事実関係についてはお見逃しください。
今回は、デビュー・アルバムに収録されていた曲でジョンがボーカルを取っている「Anna(Go To Him)」の記事を復刻します。
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アーサー・アレキサンダーという黒人R&Bシンガーのカヴァー曲です。
この曲は1957年という説と1962年という説があってはっきりしませんが、アメリカでリリースされた曲で、ベスト40にもはいらなかった曲だったそうです。それをビートルズが見事にオリジナルかと思うくらいの出来でカヴァーしました。

特筆すべきはジョンの歌手としての実力で、どう聞いても風邪気味の声でコンディションが悪いのに、瑞々しい歌唱です。
しかも、録音時には22歳くらいだったと思いますが、大人の歌い方で、なかなかここまで歌い込める歌手はいないというくらい、哀愁まで漂わせています。
すでに、デビューアルバムにして、一級品の歌手としての実力を示しています。

この時点では、ポールにかなり水をあけている状態だったと思います。ただ、初期の曲だとジョンかポールか判別できないような歌いっぷりの曲もあり、この曲では語尾がちょっと舌足らずな感じがポールにちょっと似ています。そりゃ若いですから仕方ないかもしれません。

ビートルズは仮に作曲能力が無かったとしても、このジョンのボーカルとポールとジョージのコーラスで、コーラスグループとしてだけでも、きっとヒット曲は4~5曲は飛ばしていたのではないかと思います。
コーラスグループとしても卓越した実力を持っているのが、R.ストーンズなど他のロックバンドとの違いだと思います。

この曲でもポールとジョージのコーラスが入っていて新人グループとしてはなかなかの出来です。

ギターはジョージが低音弦をたぶんピックで弾き、高音弦を指でパラランと弾く奏法を見せてくれます(これもカントリーの大御所チェット・アトキンスの奏法を使ったらしいです)。
ポールはまあ普通のボンボンベース、ジョンはアコースティックギターのJ-160Eのようですが、よく聞こえません。

ただ、リンゴはこの曲独特のリズム(のちのラバーソウルでの「イン・マイ・ライフ」でも聞かれる“ズッ・タ・ド・・・タ・ドン・ドン”と聞こえる)をちょっと心もとない感じで叩いています。
イン・マイ・ライフでは、切れの良い素晴らしいリズムキープだったのですが、わざとジョンの心情が良く出ている曲の内容に合わせてたよりなく叩いているとは思えないので、このリズムは人からこうしろと言われて叩いたのか、自分でこうしようとして、未消化だったのかどちらかではないかと思います。
しかし、オカズの部分は素晴らしい切れで叩いています。

※このリンゴのドラムに関しては、下記の追記でオリジナルのアーサー・アレキサンダーの録音からそのドラム演奏を聞いて新たに知ったことが出て来ましたので、そちらもご覧ください。

だだのカヴァー曲ではなく、ジョンのシンガーとしての実力とビートルズの引き出しの深さを示した曲であると思います。


〈追記〉2023/06/05

この曲についても、ホームページ作成後にリマスター音源や、BBCのライブ音源が出ていますので、それらと、オリジナルのアーサー・アレキサンダーの音源も入手していたので併せて聞いてみます。


アーサー・アレキサンダーのオリジナル音源

メキシコ盤CDが手に入ったので、聞いてみました。
ドラムのリズム・パターンは、リンゴと同じパターンであったことが判明しました。
私はてっきりポールか誰かのアイデアであのリズム・パターンになったのだろうと思っていました。驚きました。
収録されているドラム自体の音は、実にハイハット、スネアともにキレがいいと感じました。
オカズ(フィル・イン)もリンゴが叩いているものとよく似ているので、リンゴはオリジナルに倣ったものだとわかりました。リンゴ独特の“くせ”が出たものかと思い込んでいましたが、これも意外やオリジナルに忠実だったことがわかりました。
ボーカルの切々とした歌い方についても、ジョン独特の歌い方かと思い込んでいましたが、オリジナルの歌い方に倣っていたことが判りました。全てが意外でした。
つまり、オリジナルが実にしっかりとした素晴らしいものであることがわかったのでした。


オリジナル・ステレオ2009年リマスター盤

ビートルズ初期のステレオなので、ボーカルとコーラスが右スピーカーから出ているパターンのマスターです。
ジョンの情感こもるボーカルがとても印象的。
ポール、ジョージのコーラスもアーサー・アレキサンダーのオリジナルに入っていた女性コーラスに倣っていて、とてもカッコいい。
全体的には、ボーカルを中心にミックスされているとも感じました。
リンゴのリズム・パターンは、ハイハットのハーフ・オープンが入る部分があり、そこがアーサー・アレキサンダーのオリジナルのドラムとは異なっていることに気づきました。
これはリンゴのドラムのカッコよさが出た部分でした。


モノ・マスター盤収録のミックス 2009リマスター盤

聞いてすぐに自然なミックスだと思いました。
ジョンのボーカルにけっこうエコーがかかっているようにも感じました。
エコーは、コーラスにはあまりかかっていないように聞こえます。
モノの方がジョージのギターがよく聞こえます。


オン・エア・ライブ・アットBBC

おとなしい演奏で、ポールのボンボン・ベースが目だってよく聞こえます。
ジョンは、手抜き無しのうったえかけるようなボーカルを披露。
リンゴのドラムは、音量的にはうしろに引っ込んでいるくらいの感じです。
リズムパターンもオリジナル録音のものにはこだわらず、流れにのって叩いていて、フィル・インもその場のアドリブ感が強い。


米国キャピトル盤「アーリー・ビートルズ」モノラル・バージョン

ジョンのボーカルが実に生き生きとして収録されている。ちょっと驚くくらい。
息づかいもわかるくらいの臨場感が出ています。
ジョージのギターも爪弾きがよくわかります。
リンゴのドラムもハイハット、スネアともにキレのよいいい音で入っています。


米国キャピトル盤「アーリー・ビートルズ」ステレオ・バージョン

こちらもジョンのボーカルが生き生きとしている。
ジョンのボーカルに限っても、モノラルよりも制御されたミックスであると感じました。
とても生きの良い音で、スタジオのミキシングルームでモニターしているような気分になるくらいの臨場感があります。
全体的には、ボーカル中心で、ドラムはちゃんと入ってはいるが、少し後ろに下がっているくらいのミックスになっています。
ジョージのギターは艶やかな音色で鳴っています。

 

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