「歳時記くずし/阿部達二」を読みました。
『歳時記くずし/安倍達二著(文藝春秋)』という古本を見つけ、読んでみました。
「オール読物」に2006年から2007年まで連載されていたものに加筆し2008年に単行本化したものです。
著者の安倍達治さんは編集者として出版社勤務の後、「江戸川柳で読む平家物語」「藤沢周平残日録」などの著書を残しています。
今回私が読んだこの「歳時記くずし」、巡る季節を様々な話題で綴っているのですが、著者の知識・教養には驚くべきものがありました。
歌舞伎、相撲、落語から歌謡曲、映画にプロ野球・・話題は留まるところを知りません。
一年の各月に分けて様々な「歳時記くずし」が書かれているのですが、二月のところでは、あの二・二六事件にふれていた部分が気になりました。
その年は雪の多い年だったようです。
事件前の二月四日にも、東京は五十三年ぶりの大雪に見舞われ歌舞伎座では帰宅できない観客続出のため桟敷席を開放して宿泊の便宜をはかり、炊き出しまで行っていたとのこと。
NHKで放送予定があった噺家で後の五代目小さんは事件当日、占領された鉄道大臣官舎に留め置かれ、士気鼓舞のためにその場で一席やらされたと書かれています。
もちろん、将校達はクスリともしない・・^_^;
いろんなことがあったんですねぇ。
ラジオでは「決して外出しないで。窓際には夜具布団を積み重ね、その陰にいてください。」と放送されていたとのこと。
永井荷風の文に、二・二六事件首謀者十七名中、十五名は七月に死刑執行されたはずだが、「上海より帰り来たりし芸人の話に昭和十一年二月政府の元老重臣を虐殺せし将校皆無事に生存し上海に在るを見しと云。さもあるべき事なり。」というものを発見したことも書かれていました。
不思議な話が当時流れていたのだなと思いました。
とにかく、“微に入り細を穿つ”ように様々なことが書かれていました。
知らなかったことばかりが眼前に現れるような貴重な本でした。
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