「字幕屋の気になる日本語/太田直子」という本を読みました。
『字幕屋の気になる日本語/太田直子著(新日本出版社)』という本をブックオフで見つけ、買ってまいりました。
映画の字幕を作成されている方だから気になる日本語や、字幕づくりならではの難しさ、私たち映画を鑑賞する側が知らない字幕づくりの世界も垣間見ることができました。
前半は、主に著者・太田さんが気になる日本語について書かれ、後半は、映画の字幕作りをしていて難儀だと感じることや、自分が翻訳した映画以外の映画を実際に見に行ってその中で感じたことなども書かれていました。
太田さんが感じている“気になる日本語”は、私が日常感じているものに近いものがあって、「オレだけじゃなかったのか」と少し安心しました ^^;
少しばかりその例を挙げてみると
「しっかり」と「いただく」の使い方でした。
政治家が「しっかりと検討します!」などと語気を強めて言っているときって・・ごまかされているような気がします。
だいたいが、しっかり“何”をやるかは言わないものです。何をやるのかよくわかっていない人が「しっかり」を使うんだと思います。太田さんと同じ気持ち。
「いただく」もそんな感じで政治家がよく使います。
「~と認識させていただいております」とか「~と申し上げさせていただきました」など、「認識しています」「申し上げます」でいいのにと思います。
「させていただ」かなくても結構!
スポーツ選手などが「元気を与えたい」などと言うのも何かひっかかるものがあります。
「率直にうれしい」の“率直”もなんだか変!?
「こちらが問題となっております食材というような状況になります」・・なんかおかしいよなぁと私は感じます。
ラジオ、テレビなどに出てくる今勢いに乗っている社長やリーダー的な存在である人が「弊社はグローバルカンパニーたるべくコンプライアンスを重視しベストソリューションを求めてチャレンジ・・」こんな“カタカナだらけ”のしゃべりをする人も何言ってんだかわからない・・というのが太田さんも私も同意見。
こんなことから後半は実際に『1秒4文字』で表現しなければならない字幕の世界についても書かれています。
実際に英語ではどういうセリフになっていて、それがこういう字幕になったという例が示されていますが、ふだん何の意識もなく映画を見ている私たちにはその苦労がこんなにも大変だったのか、というのがよくわかりました。
けっこう“キツい”仕事だと思います。
中には吹き替え版と字幕を比べて「違うじゃないかっ!」と怒る人もいるようで、そりゃ違うでしょうよ、と ^^; と素人の私でも思いましたが、世の中“律儀”な人がいて、そんな律義者が字幕なんか作ったら読んでいる間に次のシーンに移ってしまうような長文字幕になることでしょう(#^.^#)
というわけで、翻訳されている方だけに、言葉へのこだわり方はかなりのものだと思う本でした。
面白く、初めて知ることがいくつもあった本でした。
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