「ビートルズ アメリカ盤のすべて」という本を見つけ、読んでみました。
『ビートルズ アメリカ盤のすべて/中山康樹・小川隆夫著 (集英社インターナショナル)』という古本を見つけ、読んでみました。
発行は2004年、二十年ほど前のもので、あのアメリカのキャピトル盤がCDで4枚一組の箱入りで発売された頃の本だと思います。
そして、著者の中山康樹氏、小川隆夫氏ともに著書としてはジャズ関係のものが多く、中山さんに至っては、元スウィング・ジャーナルの編集長だった方ではないかと思います。
そんなジャズ関係を主に仕事をされていたお二方が書いたビートルズ本、けっこう深いところまで書かれていて、単なるビートルズ・ファンを超えた深い内容となっておりました。
中山さんはこの他にもビートルズ本を何冊か出されていました(このブログでも何冊かご紹介いたしました)が、2015年に亡くなられています。
私が自分でビートルズのレコードを買い、夢中になって聞き始めた頃には、既にビートルズは解散していて、当時の日本で売られているビートルズ・レコード盤の状況は、かなりややこしいものでした。
英国のオリジナル盤に準拠したもののほか、日本独自編集盤(「ステレオこれがビートルズ」なんてタイトルのものもありましたし、ジャケットだけ異なるもの、アメリカ盤と同じジャケットなのに別の曲目となっているものなど)、そして今回取り上げている本で色々細々と探求されているアメリカ盤が日本の東芝音楽工業からも売られていたので、どれがどの時期のレコードかもわかりずらく、特にアメリカ盤は英国では同じアルバムに入っている曲が別のアルバムに分割されて入っていたりして、何がなんだかビートルズ初心者には訳が分からないのでした。
ビートルズのアメリカ盤は、当初大手キャピトルが発売を渋っていたことから、ビィー・ジェイという中小メーカーから「イントロデューシング・ザ・ビートルズ」というアルバムが出ることになりました。
その影響からこのヴィー・ジェイのアルバムと曲目がダブらないようにアメリカでのキャピトル・デビュー盤が出た関係で英国とは曲目、曲数がかなり異なることになったのがアメリカ盤でした。
私も印税節約や、アルバムの曲数を減らして残した曲やシングル曲などを集めてもうひとつアルバムを作ってしまうやり方を後で知って「なんだい、それ?!儲け主義なんじゃないの」などとずっと思っていたのでした。
しかし、冒頭で書いたボックス入りのキャピトル盤CDが出ることとなり、実際に聞いてみると、「ミート・ザ・ビートルズ」や「セカンド・アルバム」などというキャピトル独自盤をその曲目・曲順で聞いていくと「ミート・ザ・ビートルズ」は、オリジナル中心の英国バンド、なかなかやるな!という感じになっています。
そして「セカンド・アルバム」にしても、通して聞いてみると、R&B寄りのロックを歌い、演奏する四人組バンドというイメージが強くなります。
だから、粗製乱造かと私が思っていたキャピトル盤は、意外やアメリカ人の心を捉えていたんじゃないかと、聞いてみて初めて気づいたのでした。
「ハード・デイズ・ナイト」や「ヘルプ」などの映画サントラ盤は、アメリカ盤の方がむしろ本来のサントラ盤として作られていたりします。
英国盤はビートルズのサントラというよりも、オリジナル盤のイメージが強い。
そして、なんといっても傑作なのは「マジカル・ミステリー・ツアー」がキャピトルが編集したアルバムなのに、実に堂々として“オリジナル盤然”として優秀なものになっているのです。ついには、英国も正式にオリジナル・アルバムとすることになりました。
さらにボックス化され発売されたCDからも、以前のレコード盤からもキャピトル盤で感じたのは、特に初期のビートルズの力強さが顕著に感じられることです。
私はビートルズのアルバムを iPad や iPhone に全部入れてランダムに聞いたりするのですが、キャピトル盤の曲が掛かったときにはすぐにわかります。
特にロックンロールが力強く、迫力があって“一聴瞭然”です(※ノイズなどはほとんど除去されていなく、雑な感じだけど・・それでいいという感じ)。
というわけで、アメリカ盤ビートルズの魅力や秘密について著者のお二人がたっぷりエピソード混じりに語り、書いた本となっていました。
とても面白く、ビートルズ・ファンにはうれしい本でした。
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