「わたしたちの秘密/中江有里」を読みました。
『わたしたちの秘密/中江有里著(中公文庫)』を新年最初の本として選んで読みました。
初出は「読売プレミアム」に2018年に連載され、単行本としては2019年に『トランスファー』という題名で刊行されたものです。
私は、それを加筆修正し、改題され、文庫本として2022年に発行されたものを古本で手に入れました。
主人公は姉妹なのですが、姉?妹?の方は(最後になって二人の姉妹関係がはっきりする)、片方は現実世界に生きて生活をしている、そしてもう片方の女性は読み進むうちには生きて病床にいるのか、それともこの世に身体は無いのかわからない状況・・。
ある日現実世界に生きる女性の方が仕事や男女関係、そして過去に生んだ子供との関係に悩み、苦しみ、駅のホームで死んでしまおうと思った瞬間に二人の姉妹の心が入れ替わるというものでした。
小説の内容としては、SFチックであり、スピリチュアルでもあり、さらに現実世界に疲れた働く女性の姿を描くものでもあり、男女関係の物語でもあり、人と人の繋がりを描いたものでもあり、親子関係の物語でもありました。
実に様々な要素が入り組んでいるのですが、難解にならず、読物として面白い展開でした。
自分とは別の人間となり、心だけは自分で生きていくとどんなことになるのか。
また、そうなることによって元の自分という人間を見直すきっかけともなっていて、人生の機微のようなものも垣間見えるような内容でした。
著者、中江さんはテレビ・ラジオなどで書評を発せられていますが、いつもわかりやすく興味深く感じるような表現、話しぶりで引き付けられます。
また、中江さん個人に、人としてのとても魅力的なものを感じます。
かつてアイドルのような仕事をされていたことも記憶にありますが、この本を書いたことがきっかけになって歌手活動も復活されたと巻末の作詞家・松井五郎氏との対談で書かれていました。
中江さんの著作は、それぞれが異なる世界観を見せてくれるようで、多彩な物事への感じ方、考え方を持たれている方だと感じました。
また中江さんの本を読みましたら感想をこのブログでご紹介したいと思います。
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