「死んでいない者/滝口悠生」を読みました。
『死んでいない者/滝口悠生著(文春文庫)』を古本で見つけ、読んでみました。
「死んでいない物(※初出 文学界2015年12月号)」と「夜曲(※初出 文学界2016年3月号)」が収録されていて、この文庫本は2019年3月に第一刷が発行されています。
この「死んでいない者」は第154回芥川龍之介賞の受賞作品です。
ある老人が亡くなって、親戚関係が集まり、通夜があるのですが、亡くなった人を中心にその子供、その配偶者や孫など多くの人がこの小説の登場人物になります。
そのたった半日の物語ですが、実に長く感じます。
誰が主人公ということもありません。
集まってくる人それぞれに人生が有り、ストーリーが有り、悩みが有り、複雑な背景が有り、過去が有り・・と、それぞれの人に次々とライトが当り、そこに映し出される個々が持っているものはどれもため息が出るような深さや傷を持っています。
読んでいて感じたのは、自分が経験した葬儀などでも、ほぼこの小説と同じようなことが起こっていたということ。
あの人は誰だい?ええっ今何処に住んでいるの。結婚したの。離婚したの。子供はどうなっている?仕事はどうした・・などなど、たった一日というか半日程度で様々な人生模様が目の前に描かれ、繰り広げられるのです。
驚いたり、がっかりしたり、茫然としたり・・。
この小説もひょっとしたら、著者が実際に通夜、葬儀で経験したことが7割以上再現されているのではないかと思われるくらいの臨場感がありました。
他人事と思えば読み流すことも出来ようかとも思えるのですが、実際に読んでいくと「それで、それで」となってしまい(^_^;)妙にイヤな気分になるようなエピソードばかりのこの小説、途中でその一族になったような気になり、うんざりとするのでした。
そんな、どこの通夜・葬儀においても親族が経験するようなことを事細かに小説として表現されているのがこの作品でした。
最後はちょっと具合が悪くなりつつ読み終えました。
もう一篇の「夜曲」も、この作品のスピンアウト的に感じるような短編でしたが、もう“ごちそうさま”状態になり、“げっぷ”をしながら読みました。
様々な人の人生模様、ごちそうさまでした。
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