【忖度(そんたく)についてもう一度考える/過去に会った人、過去にあった出来事について振り返る №72】
少し前に『忖度』について書きました。
話題となっている県知事の報道がなされている最中だったことも手伝ったのか、意外と反応が大きかったのに驚きました。
そんなこともあり、再度、私が感じた「忖度」というものについて思い出しつつ考えてみようと思いました。
今回は、《忖度しろ》と《忖度するな》という二つのタイプについての考察と再現を。
最初は“忖度しろ”タイプの人。
私が東京に勤務することになったばかりの頃のボスは、そんな感じだったらしいです。
幸いに、私が外出中にそのボスが来て、上司二人がうちの事務所が入っているビルの車寄せで迎えると「大袈裟に出迎えるなっ!部屋の場所くらいわかってる、無駄なことをするな」と怒鳴られたそうです。
えっ?じゃ「忖度するな」の人じゃないの、と思うかもしれませんが、二人で迎えたことを時間と人のムダだと怒鳴りつけたかったらしい。
部屋に入り、お茶を出すと「私はまずい茶は飲まないっ!」と怒りだし、「水の方がまだましだ」と言ったとのこと・・ですが、来客用のお茶は指定されていて、それを一番よく知っていなきゃならないのはこのボスです。
予算削減だということで決まったことなのに。
じゃ、普段は誰が高級なお茶をボスに“本社”で用意しているのか・・おそらく“本社”秘書のえらい人あたりが高級茶葉を自腹で買っているのかもしれません。想像ですけど。
さらに東京に来た理由は華々しい場所に御呼ばれがあり、そこに行くまでの控室的に寄ったのですが、せっかく正装して輝かしい日においでになったので、職員が記念に写真をと思いカメラを用意すると、「安いカメラなんかで私を撮るなっ!」と怒鳴ったとのこと。
「カメラは用意してきた。こういう高級カメラで撮れ。」と渡されたカメラは、こちらで用意したカメラよりもずっと安いカメラだったとのこと。
プライド高く、自分以外は皆安っぽい人間だと思っていたのではないでしょうか。
やがて数か月の内にそのボスの不祥事でボスは交代となりました。
今度は「忖度するな」タイプのボス。
東京にやって来て、次々と国の色々な部署のエラい人と会い、議員さんとも会う一日となり、私が同行。
上司からは「昼食もとらなければならないが、和・洋・中どれもすぐに案内できるよう事前によく調べ怠りないようにしろ」と命令がありました。
午前中も活発に回り、お昼になりました。
私から「昼食は何がお好みですか?和洋中どれでもおっしゃっていただければ、すぐにご案内できます。」と言うと、「そういうの僕はいいの!サクッと食べてサクッと出て来れるところないの?」とのことで、へえ・・とおもった私は「わかりました、ここの社食にしましょう。」と職員さんがガヤガヤ・ザワザワしている社食にお連れしました。
プラスチックのトレイを渡し、「皆さん並んでいますから、ご自分で食券を買って、列に並んで空いているテーブルで食事してください。ちょっと面白いでしょ。」
「それからいつも誰かが一緒にいて気が休まらないでしょうから、私はその間にあちこち回り、資料取りをしています。お一人でたまにはぼんやりするのもリフレッシュできますよ、ちなみに食後にお茶・珈琲ということであれば、この建物内にある喫茶店とマクドナルドの場所の案内図を差し上げておきますのでどうぞ。」
というと、ボスのお顔は喜びに晴れ晴れとしていました。
「何かあれば携帯に連絡いただければすっ飛んで来ます、安心してお昼休憩していてください」と、その場はいったん別れました。
午後にまたあちこち回り出すと、きょうは夕方地元に帰ってから、何箇所か地元の会合に出席して挨拶回りがあるとお話しされました。帰りは夜遅くなるとのことでした。
「毎日こんな感じなんでしょう。お身体大丈夫ですか?いくらお若くても心配してしまいます。」と言うと、
「何言ってんの、私はこの立場になりたくてなったんだよ、これが私の喜びでなくてなんなの。今、いちばん幸せだよ。」とのお言葉。
あっ、この人はすごい人だ・・と驚きました。
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