「日本人と日本文化/対談:司馬遼太郎_ドナルド・キーン」を読みました。
『日本人と日本文化/対談:司馬遼太郎_ドナルド・キーン(中公文庫)』を古本で見つけ、読みました。
もともとは中央公論社から1972年に同タイトルで刊行されたもので、1984年に文庫化されたものです。
日本文化の「ますらおぶり」と「たおやめぶり」について、また忠義と裏切りについて、上方と江戸の違いについて、日本にきた西洋人など興味深いことについて丁々発止のやり取りをしています。
どちらも引かない感じ(^_^;)
特に日本人というものの存在、あり方について儒教が大きく影響しているというキーンさんと、ほとんど関係ないという感じの司馬さんのまったく互いに譲らない感じの対談は緊張感がありました。
キーンさんは、徳川時代の日本人は、生まれたときにまず神道の神に告げ、結婚式も神道だが、ふだんの生活は儒教で、死ぬときは仏教的な法事が行われてきた。
矛盾している三つを同時に信じられるのが日本人だという。
対して、司馬さんは「日本人は神道だ」の一点張りです。
・・私には司馬さん、不利な感じに読みました。
また、司馬さんは江戸時代というものは好きではないと言い、戦国時代が好きだという。
対してキーンさん、一般の日本人にいちばん親しみやすい時代は江戸時代という。
江戸時代の伝統的な匂いが残っているような人だったら、それは職人とか商人のような人と言っています。
江戸時代の前半は侍がつくった文化だった(近松、芭蕉、松永貞徳などの士族が思い起こされる)が、後期になると、文化のにない手はほとんど町人だったと言っていて、江戸という侍の町に、いちばん町人を喜ばせるような文化が町人の手ででき上ったというのです。
これについても私はキーンさんの見方に近いです。
今も町人がつくった文化について興味津々だし、そういうことについて書かれた本にも惹かれます。
読んでいて、全般的に司馬さんは荒っぽい理論で、決めつける感じ。
一方キーンさんは、丁寧に事実を拾っていって、立てている仮説もユニークだけど自然な導きのように感じました。
とにかく、最後まで綱引きのように“引いて引かれて”みたいな駆け引きのようなものもあり、最後までこの対談を楽しく読みました。
お二人の無限のような知識にも驚いた本でした。
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