「とかくこの世はダメとムダ/山本夏彦」を読みました。
『とかくこの世はダメとムダ/山本夏彦著(講談社)』を古本で見つけ、読みました。
2010年発行の本ですが、著者の山本夏彦さんが亡くなられてから8年経ち、息子の伊吾氏が新聞や雑誌などに発表された文章の中から単行本に収録されぬまま埋もれていた46編を選んで一冊にしたものです。
埋もれていたとは思えぬ“山本夏彦節”満載の本でした。
久しぶりに山本さんの文章を読んで、“言いにくい”ことを何度も何度でも繰り返し言う山本夏彦コラムの真骨頂を見た気がしました。
山本さんの最も勢いのあった頃から時代は変わり、政治の状況は当時の自民党を叩く新聞他のメディアは今や逆、政権、自民党にベッタリのテレビやコメンテーター、そして当時は無かったネットを通じてのネトウヨの跋扈。
でも、根本は山本さんが言っていたことから変わってはいないのです。
大勢の人に“ウケる”安全なニュース記事や批評などが横行し、それを皆自分で考えてもいないのに、自分が考えたものだと思い込み、一般大衆も大きな声で叫ぶ。攻守逆転しているものの、その構造は変わっていない・・そう思いました。
人は電気を引かなければならないから発電所をつくろうとして「なぜ」と問われると、夜を明るくして働くためと答える。
「夜も働くのか」と問えば、働くばかりではない遊ぶためでもあると答える。
夜は暗いもので眠るときだと言っても理解はされず、江戸時代までは眠っていた私達はそれまですぐれて文化的な時代を過ごしていた、ましてや二百なん十年も戦争のない時代を過ごした・・と山本さんが言えば、人力車の時代に返るのか、テレビを去れと言うのかと気色ばむ人がいる。
もう途中下車はできない。
自動車、電気、コンピューターの極は原水爆で、出来ない昔にかえれないものの随一で、邪悪なものを征伐するには更に進んだ邪悪なものに待つよりほかはないと渋々思うのだという。
大なり小なり私もその気分はわかる。なんだかすっきりしないがわかる。
それが山本夏彦の文でした。
当時の山本さんが書いていることに、「私達が目にする文、言葉は売買された挙句に目に入っているものだ」ということ。
印刷された言葉はもとより、しゃべった言葉にまで支払がある・・とすれば、それは値を付けた者が商売になると踏んだものだということ。
言葉は売買されて久しく、「われわれは商品でない言葉を読む機会をまったく持たない」という山本さんの言葉は、当時も今もその内容は異なれど、事情は同じである。
そんなことを何度も何度も繰り返し書く山本さんの文を久しぶりに読んだのでした。
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