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2020/12/20

阿川佐和子さんの「無意識過剰」を読んだ。

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『無意識過剰/阿川佐和子著(文春文庫)』を読みました。
ブックオフで110円、2002年第一刷の18年前の本になります。

阿川さん、基本的にこの時も今と変わらず、早くもボケ初(ぞ)め的症状が現われ(^_^;)、シャワーを浴びて体を拭くのも忘れ、下着を履こうとしたり、本人は気づかず、赤いドレスのことを青いドレスと言ったり(うちの妻もこの症状がある)、今聞いたばかりのことをオウム返しすると、ちがうことを言ってしまったりの状態です(*^_^*)

まあ、私も人のことは言えず、ばったり会った人に声を掛けられ、誰だかわからず、ただニコニコしているうちに、何かヒントを探そうとしたりします・・阿川さんと同じ…σ(^_^;)

でもって、そんな阿川さんですが、料理選手権の審査員なんて頼まれれば、あとで「どうしよう」とあわてふためくのに気安く引き受けてしまう。

また、雑誌の対談で知り合った石井好子さんにシャンソンのリサイタルに出てくれと言われて、これまた引き受けてしまい、舞台に立つことになってしまったり・・。

ほんとうに通常の人が普通の人生では味わうことの出来ないことを、どんどん経験していきます。
読んでいて、それが楽しい。また、阿川さんの“あわてっぷり”も面白い!

阿川さんは、便利だからと、紙袋をいつも持ち歩き、バッグを大きくするのではなく、紙袋の中から紙袋を出すという“技”で、手荷物を増やし、ずんずん歩いていくのでした。
で、デパートへの取材に出かけて、ライバルのデパートの紙袋を持っていってしまい、あわてふためいたりもしています。
何も紙袋でなくともいいのに、と思いますが、阿川さん的には大変便利に使っているようです。
だから、この本の表紙もバッグの他に紙袋をぶら下げる阿川さんのイラストとなっております(^_^;)

ただ単に、そんなエピソードを面白おかしく書いているのでもなく、けっこう普通だったら恥ずかしくて書けないような裏話まで書いてあって、そこが“プロ”の文章なのかなどと思ってしまいましたが、でも阿川さん、書かないといられない性分なのかもしれません(^^;)

愉快に読ませてもらいました。

さあて、今年もあとわずか、次は何の本を読もうか・・。

 

2020/12/13

中谷彰宏さんの「贅沢なキスをしよう。」を読んだ。

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『贅沢なキスをしよう。/中谷彰宏著(文芸社文庫)』を読みました。
ブックオフで110円!主にビジネス本や、啓発関係の本などで中谷さんが著者となっているものはものすごくよく見かけますが、今回のような内容の本は中谷さんの本では、私、初めて見ました。

・・だいたい、中谷さんの著書は何冊あるのか想像も出来ないような数で、毎週一冊出しているんじゃないか、というくらいの多作です。

サブタイトルが「快感で生まれ変わる63の方法」となっておりまして(^_^;)、「お前がこんなもん読んで何しようってんだ!」という声も聞こえてまいりますが、「いいじゃん、面白そうだから買ったんだよっ!!」d(^_^o)

読んで見ると、中谷さん、これは女性向けに書いているんですね、いきなり“お門違い”の本買っちまったわけですが、それはそれ、これはこれ、ガシガシ読むことにいたしました。

でねぇ、すごいです、中谷さん。
「心のボタンを外せ」ってわけで、「好きでもない人とするのは、よくない」「したい人とするのは、いい」と超力説!

生きていてよかったと感じられる時間を持つことが大事だ。
生きていてよかったという幸せを感じられる時間は、永遠です。

・・ということで、愛情を共有できる時間が存在すること、空間ではなく、時間の中に“エッチ”は存在する!と言い切る中田さん、・・なんかそういう気になってきた…σ(^_^;)

さらに、余計なこと、些細なことなどを気にする“コントロール”を放棄して、愛情を共有できる時間を持てるかが大事なのだと書かれていて、いやもう勉強になります(*^_^*)

最後にとどめっ!!
『人間は生まれ変わる瞬間に「快感」を得ます。』ときたもんだっ!

「エッチの快感を、生まれ変わるキッカケにしよう。」と締めに入ります。

私のような人間には、何言ってんだかわからない部分もありますが、なんだか男と女の本質をついていると思ったのです。

今回読んだこの本をテキストに・・大丈夫か?!・・ちょっと積極的に生きてみようと思いました。少し“マジ”です。

 

2020/12/09

武田鉄矢さんのラジオ番組を書籍化した「人生の教養を高める読書法」を読んだ。

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『人生の教養を高める読書法/武田鉄矢著(プレジデント社)』という本を読みました。
これは、ラジオ・文化放送の朝の番組「武田鉄矢・今朝の三枚おろし」で武田さんがその都度読んだ本から得たことを紹介するというものを書籍化したものです。

この番組はかなりの長寿番組ですが、私も今までの職場でクルマ通勤だった時、しかも時間帯が合う時に聞いてきた番組です。
現在の通勤時間帯にも合うので、ここ一年とちょっと、ほぼ毎朝聞いております。

武田さんが“三枚におろす”様々な本は、様々なジャンルのもので、今まで聞いたこともないような話、考え方に出くわすことも多いのです。

「植物は〈未来〉を知っている/ステファノ・マンクーゾ」の紹介では、唐辛子が辛いのは、人間の脳内に脳内麻薬と言われるものを分泌させて、言わば人間を“支配”して自らの種を人間に栽培させ、生き延びているんじゃないか・・、みたいなことを書かれています。

その場を動かず環境に適応して、順応していく“植物的”な生き方が人間にはひょっとして合っているのかも、という話にも発展していきます。
コロナ過の今、そういう考え方も大事なのかも、と思いました。

また「AIが神になる日/松本徹三」の紹介のときに、AIに様々な課題を検討させたりしているうちに、命令した人間が指示もしていないのに、AIが別のAIにコンタクトを取り、会話を始めたという話が書かれていました。
しかも、途中から人間にはわからない言語で一対一で会話をしだして、怖くなった人間側が一台を壊してそれを止めたという事例があるというのです。

ほんとか?と思いましたが、あり得る話でもあると思いました。

古くは星新一の「声の網」というSF小説で子供の頃に読んだことのある現象です。
また古い映画ですが、「ウォー・ゲーム」というアメリカの映画でも、戦争用のコンピュータが勝手に世界大戦を始めてしまうというのもありました。
それが現実化されてしまうのか、などと興味深く話を聞くことになりました。

最後に、ツイッターその他、いろいろなところでそんな武田さんのことを悪く言う人がいて、それが最近目につくのですが、ひとりの人間がただ自分が読んだ本から感じたことをラジオで話しただけで、ひどい言葉を浴びせている芸能関係の人もいて、「だったら、直接本人に言えよ」と思いました。
SNSで遠くから罵声を浴びせるのは失礼で卑怯だと思いました。・・と、最後に付け加えておきます。

 

2020/12/03

椎名誠さんの「男たちの真剣おもしろ話」を読んだ。

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『男たちの真剣おもしろ話/椎名誠著(角川文庫)』を読みました。
昭和58年に単行本として刊行され、昭和60年に文庫化されたものです。
だから・・すごぉい昔の本になりますd(^_^o)

椎名さんの対談本なんだけど、その頃だから対談相手の山下洋輔さん、東海林さだおさん、三遊亭円丈さん、山藤章二さん、村松友視さん、黒田征太郎さん、倉本聰さん、尾辻克彦さん、野田秀樹さんら、みぃ~んな若いっ!!

だから、今じゃ考えられないくらい、皆、発言がとんがっているし、勢いが止らない感じがありました。

野田秀樹さんなどは、自身の芝居に関する自信がみなぎっている発言がすごく、椎名さんも実際に野田さんの舞台を見たあとに対談しているんだけど、その芝居がよくわからずとも、その勢いに圧倒されている感がありありとわかりました。

あのフリー・ジャズでピアノにひじ打ちをかまし、挙げ句に火をつけてしまったりする山下洋輔さんが、意外とオフコースを武道館に聞きに行っている話なども飛び出している。
RCサクセションならバカにされないが、オフコースだと仲間からバカにされるんだ、などという話も面白かった。

三遊亭円丈さんの、落語を聞きにくる客に対するシニカルな見方や、笑いに対する考え方も、当時感じていたあの普通の噺家にはない感覚がよみがえってきました。

村松友視さんとのプロレスに対する世間の接し方と、椎名さん村松さんがプロレスに接するときの感覚の乖離の話なども、「あの頃は“わたし、プロレスの味方です”って本が流行っていたな」と自分もあの頃に戻って、当時のプロレス状況を懐かしむことになりました。

40年近く前の本を読むっていうのも、いろいろなことを思い出して、なかなか良いものです。
なんか、あの頃の“血が騒ぐ”若い感覚が戻ってきたようでした。

というわけで、今回もブックオフで、110円で手に入れた椎名さんの本のお話でした。

 

2020/11/26

「本の雑誌の坪内祐三」を読んだ。

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『本の雑誌の坪内祐三/坪内祐三著(本の雑誌社)』を読みました。

私が学生時代から読んでいた「本の雑誌」への坪内さんの三角窓口コーナーへの投稿や、「読書日記」などの連載、坪内氏自身へのロングインタビューなどを含め、本の雑誌に掲載された坪内さんの文がぎっしりと詰め込まれていました。

ほとんどの頁が四段組で、400頁の大長編です。
しかものどの章も項目も様々なカテゴリーでの坪内さんの本に関する“濃く”て“面白い”文が満載なのです。
だから、飽きない・・(*^_^*)

※以下に掲載されている膨大な書籍は、この本の巻頭に載せられていた坪内さんの書庫?!のほんの一部です。

 

 

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昼は読み、夜は飲む坪内さん。

・・これは私にとっても理想の世界だが、そんなことが出来る人は世にけっして多くはないと思います。
完全リタイアしたら、やってみたい・・なぁ・・無理だろうけど。

銀座の文壇バーを“はしご”で巡る企画も面白かった。
私のまったく知らない「文壇バー」の世界を垣間見ることができました。

古今東西の「追悼文」を過去にずうっと遡って語り尽くし、追悼文の名人はいったい誰かと迫っていくのもよかった。

 

 

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雑文家の番付を相撲の番付表のように、ああでもない、こうでもないと何人かで作っていたのも本好き、雑文好きには“酒の肴”になるくらい興味の尽きないものでした。

「文豪と編集者との関係」に迫ったもの、「ダメ人間作家コンテスト」も、あらゆる古書を含めた書物を読みに読みまくった者でなければ書けないもので、私も坪内さんの文の海に飛び込んだように泳ぎながら楽しみました。

本が好き、文が好き、本にまつわる人が好き、書店・古書店が好き、本と文にまつわるあらゆるものが好きな人間にとって、栄養満点!楽しい読書時間が過ごせる本でした。

活字中毒者への良薬でした。

 

2020/11/13

太田和彦さんの「ニッポンぶらり旅 可愛いあの娘は島育ち」を読みました。

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『ニッポンぶらり旅 可愛いあの娘は島育ち/太田和彦著(集英社文庫)』を読みました。
太田さんの一連のこのシリーズ、今回は豊橋、八丈島、酒田、福井、釧路、名古屋、木曽福島へのひとり旅・酔いどれ紀行でした。

太田さんの“ぶらり旅”、いつも読んでいて感じるのは、ふつうの人ならこんなにいろいろなものを見つけたり、出会いを楽しんだり、ふと立ち寄った居酒屋で、地の肴を好んで頼み、地酒を深く味わい、愉しむことなど、なかなか出来ないだろうということです。

つまり、私のようなふつうの人間は、どこかに出かけるとなると、いろいろと下調べをして、巡るコースもきっちり決めて、スケジュール通りのコースを、予定通りの店を訪ね、時間も“押せ押せ”の中で動くだろうと思うのです。

でも、太田さんは偶然見つけたものに興味を持ち、いろいろ地元の人に尋ねてみたり、地元の人に紹介された人や、店に出かけて思わぬ人や店、建物、風景に出会うのです。
こういうのを旅の達人というのでしょう。

それに、太田さんは「お酒」という最大の愉しみを深い知識と共に持っています。
それぞれの出会ったお酒に対する感想も、実に多彩な表現を用いて著わし、お酒、居酒屋の達人でもあります。

華やかな味わいを楽しめる一品
「清泉川(きよいずみがわ)/特別純米生原酒」

幻の酒米白玉を仕様した純米吟醸
「限定・上喜元(じょうきげん)」

秋あがり「俵雪」ひと夏を越した味わいを楽しみたい
「限定・羽前白梅(うぜんしらうめ)」

待ちに待った酒が来た
「限定純米大吟醸・三十六人衆」ひやおろし

酒田、百四十六年続いた「久村の酒場」の暖簾をくぐり、出会ったお酒が上記のラインナップでした。

で、太田さんはこれを選びました。

上等なお酒で、旨みもあり、スッキリしたキレの良い味わい
「東北泉・雄町純米吟醸 瑠璃色の海」

どれもこれも飲んだことがない…σ(^_^;)

いつの日か、これらのお酒と出会うことを夢見つつ、読了したのでした。

 

2020/11/07

黒川伊保子さんの『いい男は「や行」でねぎらう いい女は「は行」で癒やす』

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『いい男は「や行」でねぎらう いい女は「は行」で癒やす/黒川伊保子著(宝島社新書)』を読みました。

黒川さんは「妻のトリセツ」などの著書ですっかりお馴染み、私はテレビをほとんど見ないのでラジオによく出て“夫婦関係”をどうやってよくしていくのかなどを語る黒川さんの登場頻度に驚いています。
しかも話が明解で面白いっ!単なる脳科学・AI研究者ではない、人間的魅力のある方という印象です。

今回の本は、五十音のうちの特徴あるものについて、これをうまく使うと人と人の関係に“使えるよ”、というものを丁寧に考察・説明してくれています。

私が気になったのは「ふ」の項。

「ふ」は時間を止める、という効果があり、別れるそのとき、ほんの刹那でいいから時間を止めたい・・そんなとき、「ふっ」と息を吐く・・という黒川さん。

デート最後の「ふっ」は“魔法の終わり”ふんわりと散る息が、過した時間を幻想にしてしまう。

「ふ」で始まり、「ふ」で終わるデートは、けっこう永遠、オトナになったら、現実に持ち込まない、生々しくない、そんなデートの相手をひとり持っているとステキだと思う。

・・という、黒川さん。

帰り道に、現実の幸福(夫、妻)に感謝する、幻想の恋。
そんな幻花のひとつやふたつがあってこそ、夫婦は深くなっていくのかもしれないね。

・・だって。

夫がいて、夫のことをいつも書いている黒川さん、こんなこと書いていいのか、とも思うけど、でも、上記のことはある意味大切なことかもしれない、と思いました。
あとは言わない。

また「の」についての項も気になりました。

「神宮“の”イチョウ並木が色づいたの。一緒に散歩して」

「焼き鳥“の”おいしいお店見つけたの。行かない?」

「の」の入ったことばは、事実を“ものがたり”に変える「音韻効果」があるとおっしゃっています。
この「の」については、宮崎駿の映画タイトルに多用されています。

「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「隣のトトロ」「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」などなど。
ここにひとつの“異世界”があります。ということをうまくタイトルで表現しています。

その他この本では「は行」「な行」「さ行」などなど、様々な例が示されていて、実に興味深いものがありました。

自分が使っている言葉についても再点検してみようか、と思ったのでした。

 

2020/10/31

「大人のカタチを語ろう。」伊集院静著を読みました。

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『大人のカタチを語ろう。/伊集院静著(集英社)』を読みました。
このブログでも何度も伊集院さんの著書を、小説を含めご紹介していますが、今回は“生きていくために必要な「カタチ」を示す”エッセイです。

伊集院さんの力強いエッセイは、“歯に衣着せぬ”というか、最近の様々な作者が“おっかなびっくり”といろいろな人や団体、組織などに“怯えるよう”に書いているようなところが見当たりません。

だから気持ち良く読めて、よく売れているのだと思います。

それに伊集院さんの実体験は、並みの人では味わうことの出来ない“修羅場”のようなことばかりで、だから説得力があり、読んでいくうちに中に“入り込んで”いくことになるのだと思います。

痛快だったのは、

 ゲームばっかりに夢中になってるんじゃねぇよ。

 毎日、3時間TVゲームをしてる奴は、二十四年後には、飲まず、食わず、眠らず、糞にも行かず、まるまる三年間分、幻を見ていたことになる。

いつも私が思っていたことですが、これほどはっきり言ってもらうとスッキリしました。

 三年という時間があったら、どれだけのことができるか、少しは考えてみろ。

そのとおりだ。

深く同意したのは、以下の伊集院さんの発言。

 一方で、悪党ほど良く眠り、悪党ほどのさばっているのが世の中の道理であることも事実だ。
 だから世間は面白いのである。

私も人生長いことやっていますが、悪党はいつもそんな様子で過していますね。
だから、悪党に対して“ああだこうだ”と思い詰めたり、悩んでしまうことはきっぱりやめました。悪党・・勝手にすればよいのです。

もうひとつ、納得の発言がありました。

 金を持つ人間には、己のその傲慢さは見えない。
 金を持たない人間は、ただただ金を持つ輩のやり方を信じるのである。
 -余るほどの金を持つ奴に碌なやつはいないから・・。-私はいつもそう言う。
 実際、私がこれまで逢ってきた人間のうち、必要以上の金を手にした輩で、まともな態度や考え方の者は誰ひとりいなかった。

ほんとだ、私が逢った金持ち達も、誰ひとり“まとも”な奴はいなかった。

人に借金をしてキュウキュウに生きていた人間が、金を手に入れた瞬間から、人が変わったように、はしゃぎ、威張り、傲慢な態度を平然とする。・・と、おっしゃっています。

そうです、全員が全員そうでした。

などと、そうだそうだと言いつつ読み終えました。

悪党や金持ちや、スマホばかり見ているヤツ、ゲームばかりやっているヤツ、などとは一線を画して私らしく、一介の町人として、飄々と生きていきたいと思った次第です。

 

2020/10/29

小川洋子さんの「ホテル・アイリス」を読んだ。

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『ホテル・アイリス/小川洋子著(幻冬舎文庫)』を読みました。

海辺のホテルで働く母娘の“娘”が主人公の小説なのですが、その主人公の娘は高校に行かなくなり、ホテルの仕事を手伝うようになる・・という状態で物語は始まります。

ホテルは“くたびれ気味”な感じ、父親は不審で悲惨な死に方をしていて、主人公の幼い頃の記憶に染みつくように残っている。

そしてそのホテルに泊まった老人と主人公の娘がふとしたきっかけで一緒の時を過すようなことになり、あとは少女と老人が共有する切なく淫靡な世界が繰り広げられます。

老人は観光船が行き来する島にひとりで住み、その島は夜になると観光客がいなくなり、無人の世界、老人がロシア語の翻訳という仕事を細々としている古い屋敷の密室で究極なエロティシズムの世界が進行していくのでした。

普通に読めば、とても薄気味悪く、エロティックなシーンも汚らしく感じるのでしょうが、著者の小川さんが描く世界は、主人公の無垢な感じも手伝って、ある意味“神聖な世界”にも見えてくるのでした。

で、終盤に老人の「甥」と名乗る青年が登場するが、その人物には「舌」が無く、老人の屋敷に滞在する夏期休暇中は、老人がつくる全てドロドロの液体で出来た料理を食べているという・・摩訶不思議な世界に連れて行ってくれます・・行きたくなかったけど。

エロティックシーンにはさらにその甥まで加わってしまい、ラストは映画のような、救いようのないような、ある意味あきらめがつくというか、元の世界に戻ってくるようなことになりました。

小説の世界に私も旅をしてきたような感覚です。
まるで外国の海辺のような景色と、不思議と淫靡な世界を味わいたい人には、この旅もなかなかだと思いました。

 

2020/10/24

太田和彦さんの「居酒屋道楽」を読んだ。

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『居酒屋道楽/太田和彦著(河出文庫)』を読みました。

太田さんの1990年代の「東京人」や「旅」、1990年代後半から2000年代に入ってからの「小説新潮」などに掲載された文、また、その後の新潮文庫「居酒屋道楽」をまとめたものになっています。

文庫にまとめられたこの本は、内容充実、特に『隅田川に沿って、東京の居酒屋を歩く』のところは、太田さんの“得意エリア”でもあり、文章が“冴え”ます。
また、風景や建物のたたずまい、お店の主や、女将さんなどの様子も見事に描かれていて、名調子が心地良く流れていくようです。

「銀座百点」に掲載された『銀座、ビアホールの街』なども、あのビアホールの風景が眼前に蘇ってくるようでした。
たまたま隣席となった老人のビールの飲み方、そのつまみの選び方を参考にした話なども“いい話”として私の心にも残りました。

また、女性に弱い太田さんの面目躍如!眼鏡の美人秘書と居酒屋などを巡る話では、太田さん、年甲斐もなく、わくわく、どきどきしたり、照れたり、シュンとしたり(^_^;)、・・男はみんなそうなんだよな、と思いましたよ。

帯にも「幻の傑作、復刊!」と書かれていましたが、酒好きにはとても楽しめる本でした。
おすすめ本です。

 

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