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2023/09/05

吉行淳之介と開高健の対談形式本「街に顔があった頃」を読みました。

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『街に顔があった頃 浅草・銀座・新宿/吉行淳之介・開高健(新潮文庫)』を古本で見つけ、読んでみました。

古い本です。昭和60年4月に刊行されたものです。
大正13年生まれと昭和5年生まれの作家同士の対談、浅草・銀座・新宿という地域を中心に広がっていくわけですが、実は“ほぼ”猥談と言っていいお話しばかりです。

浅草などだけでなく、外国での体験談なども入っていて、この時代だから許されたのだろうと思いました。
これが印刷物となって発行されていたことに驚くのですが、でもかなり貴重な昭和二十年代の世相、風俗の資料ともなると思いました。

奥さんがこれを読んだらいったいどうなるの?!とも思いましたが、・・きっともう呆れていて読むこともなかったのかもしれません。

しかも、女性との奇天烈な体験談だけではありません、そういう趣味はないといいながら、男性とのある種の体験談もお二人とも書かれていました。
もうそういうことに対する興味関心は底なし状態であったのだろうと推察いたしました。
今の世の中で、そんな男は“絶滅”したと思われます。夫婦でも友達みたいにしたり、恋人でも“何もしない”関係なんて今どきよくある話なんじゃないかと思います。

残念ながら、対談の内容はここに書くことは出来ませんが、読んでみると当時の“プロ”の人たちとの会話やその場での存在の仕方、行為そのものについての様子が垣間見えるし、市井の人たちの夫婦の“いとなみ”の変わった嗜好などについても初めて聞くようなことが書かれていました。
一度読んで驚いてみるのもいいかもしれません(^-^;

 

2023/06/20

映画「青いカフタンの仕立て屋」を見ました。

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映画『青いカフタンの仕立て屋(The Blue Caftan)/2022年 フランス、モロッコ、ベルギー、デンマーク 監督・脚本:マリヤム・トゥザニ 出演:ルブナ・アザバル、サーレフ・バクリ、アイユーブ・ミシウィ』を見ました。

モロッコ、サレの旧市街、海沿いの町にある小さな工房でカフタンと呼ばれる結婚式やフォーマルな席に欠かせない、コードや飾りボタンなどで華やかに刺繍された伝統衣装をつくる職人と、その奥さん、若い弟子のお話しでした。

舞台となっているモロッコの首都ラバトと川一本隔てた古都、サレ。コーランが響く旧市街の市場や大衆浴場、カフェ、食卓に上がるタジン料理などの映像を見ているだけで素顔のモロッコを感じました。

また、色とりどりの滑らかなシルク地に刺繍を施す繊細な手仕事のクローズアップ、伝統工芸の美しさと、登場人物三人の“不思議”だけど濃厚な時間がこの映画の見どころでした。

 

 

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主人公の職人ハリムは、夫を誰よりも理解して支えてくれる妻ミナと暮らしていますが、ミナは病に侵され、余命わずかとなってしまいます。
妻をいたわり、最後の時間を大事にするのですが、実はハリムは男性を愛することもあり、弟子として入ってきた若い職人ユーセフとの関係もだんだんとわかってくるのです。

でも、「愛したい人を愛し、自分らしく生きる」という愛の物語になっていき、三人はミナの病状もあり、やがては一緒に住むことになり・・そこからはこの不思議な愛の物語をぜひ映画館で見ていただきたいと思いました。

上映時間は二時間もあり、ヘヴィーなシーンもけっこうあるので、精神的にもちょっと強いものが必要かもしれませんが、「愛する人にありのままの自分を受け入れてもらう」という美しいテーマが貫かれていて、良い映画だと感じました。
カンヌ映画祭や、アカデミー賞などでも部門賞を受賞しているとのことで、LGBTQ+に関連する法律を通したばかりの日本の議員さんたちにも見てもらいたいと思いました。
あの後退に後退を重ねて出来た法案に賛成した議員さんたちには理解不能なんじゃないかな・・。

ラストシーンは胸に沁みました。多くの人に見てほしいと思いました。

 

2023/06/18

「アガワ流 生きるピント」を読みました。

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『アガワ流 生きるピント/阿川佐和子著(文藝春秋)』という本を読みました。
ブックオフで古本として購入、2021年発行のものですから比較的最近の本です。

内容は、仕事、恋愛、家族、生活について読者からの悩み事を人生相談的に阿川さんがお答えするというものです。
もちろん阿川さんが答えるのですから、ラジオなどでやっている「テレフォン人生相談」のような弁護士さんやその他専門の先生方がお答えする回答とは異なって、阿川さんの人生経験からくる独自の不思議な説得力ある回答が返ってくるのでした。

読んでみて、意外と阿川さんの回答は“実戦的”だと感じました(^^;)

妙に相談者に対してやさしい声も掛けないし、自分が若い頃はこうだった、とか、厳しい結果を覚悟しつつこうしてみなさい、だとか、けっこう私も参考になりました(^_^;)

家族が認知症になったりだとか、介護が必要になったときなどの実際に直面する実例なども挙げられていて、かなりその部分などは真剣に読ませてもらいました。私にもいつ直面する事態かもしれない。

あと、話はちょっと逸れますが、今のマイナンバーカードの不具合というか、事故というか、不祥事というか、こういう事態のとき、上に立つ人の姿勢はこうでなきゃいけない・・ということも、かつていろいろなリーダーと言われる人達にインタビューした経験から書かれていた部分があって、私もそのとおりだと思った部分がありました。

かつてパナソニックで、石油温風器による事故が起きた際の当時の社長のとった態度、行動について書かれていたのです。

すべての商品コマーシャルを中断させて、ユーザーに回収を促す告知CMに切り替えた。
そしてその実行が速かった!
「すべて回収するまで通常のコマーシャルは出しません」という決断をよくぞなさったと感動した阿川さん。

社長の中村氏にインタビューすると、「誰でも失敗するんです。大事なのは失敗したあとの処置。そこで躊躇したらダメですね」とおっしゃったとのこと。
どこぞのデジタル大臣に聞かせてやりたい。

「社内外のコンセンサスを取ってからとか、マスコミに漏れないようにしばらく伏せておこうなどと、姑息なことは考えない。まっすぐに堂々と即座に立ち向かう。トップは誰もが肝に銘じておくべき覚悟だと思います。勇気がいりますけどね。」

「システムの信頼になんの揺らぎもない」だとか「ヒューマンエラーによるもので心配ない」だとか言っている人がいますよねぇ、上記の社長さんの言葉、よく噛みしめて、自分の拙い行動に照らし合わせてみるといいと思いますよ。

というわけで、ちょっと脱線しましたが、阿川さんの人生相談本、興味深く、そして楽しく読ませていただきました。
よい本でした。

 

2023/06/01

映画「パリ タクシー」を見て来ました。

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映画『パリ タクシー(Une belle course)/2022年 フランス 監督・脚本:クリスチャン・カリオン 出演:リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン、アリス・イザーズ』を見て来ました。

これから見る人は“ネタばれ”があるので映画を見てからこの先を読んでください。

パリの街を走るタクシーの運転手(ダニー・ブーン)に依頼があり、92歳のマダム(リーヌ・ルノー)が一人で暮らすことが出来なくなり、施設に連れて行くことになるところから物語は始まりました。

 

 

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マダムはタクシーに乗ると、ゆっくりと今までの人生を振り返り、思い出し、運転手に話しかけます。

「ちょっと寄り道してほしい」ということで、マダムのパリでの思い出の地を巡ることになります。

初めてキスをした時の甘い経験や、結婚してからの夫の暴力に苦しむ話(回想シーンはアリス・イザーズが演じる※美人です!)、自分や子供への暴力に耐えかねて夫にとんでもない仕返しをして裁判で有罪となり・・・などと運転手のダニー・ブーンも想像出来ないようなことが次々と語られます。

最初は無愛想だったダニー演じる運転手も、心を開き、打ち解けて様々な思い出の地を二人で訪ねて施設に着いたときには日付も変わってしまうのでした。
ダニー・ブーンも自ら妻との出会いから今までのこと、現在の生活の苦しさなどを心を許して語り出しました。

二人のタクシーの中での会話は実に奥深く、示唆に富み、人生の辛さ、苦しさ、愛の尊さ、人としてのよろこび、などが語られます。様々な回想シーンと共に。

 

 

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もうラストの驚きの展開が始まり、どんどんシーンが進んでいくうちに一緒に見ていた妻も、私も涙が出てきて、それをハンカチで抑えながらラストを迎えました。

とてもいい映画でした。
あちこちで泣いている人がいました。
今回も見てよかったと思える映画でした。ものすごくおすすめです。

 

2023/05/14

「夫婦という他人/下重暁子」を読みました。

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『夫婦という他人/下重暁子著(講談社+α新書)』を読みました。
いつものとおりブックオフにて安価購入(#^.^#)
読書人の雑誌「本」2017~2018年に掲載されたエッセイ「その結婚、続けますか?」を書籍化し、2018年に刊行されたものです。

下重さんの著書については、このブログでも何冊か既に読後感を書いていますが、私も自分の年齢が上がれば上がるほどその内容が身に染みてまいります(^-^;
今回は、『夫婦』という人類が永年にわたり形成してしてきた形態について、いつもどおり“ガツン”と書かれています。

全編に渡り、下重さんのどちらかと言えば現在社会一般で維持されている「夫婦」という形態に疑問を投げかけている考え方が綴られているのですが、その中で私が気になった部分をご紹介します。

「結婚生活の悲劇は、相手に期待しすぎるから起きる」

というものです。

下重さんは、人に期待しない・・を基本にしています。
家族、親や子や夫・妻も自分と違う人なのだ、と考え(私も近年このような考え方が強くなっています)、期待したら裏切られるのは当たり前で、いちいち傷ついていたのでは身が持たない・・と。

思いがけず向こうが何かをしてくれると、期待していないだけに余計嬉しい・・とも(^-^)・・そうかもしれない。

後半に入ってくると、夫婦でも互いに異性の別の人といろいろな関係を持ってもいいんじゃないか、とか、夫婦という形態の間で子供が出来なくてもそれはいいのではないか、とか、子供を育てる形態についても新たな考え方を書かれていました。

今のこの時代、様々な考え方、生き方、人との関係の持ち方、異性との関係の持ち方、あるいは同性でも同様のことが考えられるし、下重さんがここで書かれていることに時代が追いついてきた感があります。

LGBT関連の法案が与野党で揉めていて、「差別は許されない」を「不当な差別はあってはならない」に変更しようとする議員などには考えも及ばない下重さんの考え方が書かれていました。
きっと、変更しようとする議員さん、「あってはならないことが起こってしまいました」という対応で差別をしても逃げてしまいたいんだろうというのが見え見えです。

そんなことがいっぱい書かれていた本ですが、NHK入局当時の一年先輩の野際陽子さんとの想い出なども書かれていました。
初めて知ることがたくさん書かれていて、驚いたり、なんだかしみじみとしたりもしました。

下重さんのかなり“力強い”語調にあふれた本、読み応えがありました。

 

2023/04/23

昨日、映画「午前4時にパリの夜は明ける」を見てきました。

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映画『午前4時にパリの夜は明ける(LES PASSAGERS DE LA NUIT)/2022年 フランス 監督・脚本:ミカエル・アース 出演:シャルロット・ゲンズブール、キト・レイヨン=リシュテル、ノエ・アビタ、メーガン・ノータム、エマニュエル・ベアール』を見てきました。

フランスの映画で、時代背景は1980年代、その時代の雰囲気が出るようにミッテラン大統領の勝利のシーンや、そのときのヒット曲が流れたり、人気のあった映画、俳優のこともうまく映画の中に入って馴染み、さらにこの映画自体の画質もわざとこのデジタル時代の画質を粒子を荒くしたりして、80年代の懐かしい風合い、色合いの画面になっていました。

フランスの人には、その時代を彷彿とさせるものになっているのだと思います。

 

 

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物語は離婚したばかりで、娘と息子がいる母のこれからの生活、人生に不安を抱えている状況から始まりました。

なんとか深夜のラジオ局での電話取次の仕事をやっとのことで得たのですが、その仕事帰りの明け方に、行くあてのない少女を見つけて連れ帰り、奇妙な4人の生活が始まります。

派手な事件、事故、その他強烈な展開は無いものの、4人がそれぞれの立場で悩みや苦しみなどを抱え、それでもなんとか生きていく様子が描かれていました。

見ていて、これは日本で生活している私のような家族も同じだと感じました。
何気ない日常に、次々と様々な問題が発生して、でも家族はどことなくそれを感じ、励ましあったり、喧嘩してでもなんらかの解決を見出し、さらにそれぞれがそれぞれの恋愛をしたりする・・。

冒頭のシーンから数年後のシーンが後半出てくるのですが、4人が各自自分の人生の方向性を見出しかけているところで、一緒に“和気あいあい”とする場面があり(あのとき連れ帰られた少女も大人になり、血のつながりが無くとも家族のようにその中に入っている)、まだまだ不安要素や、これから頑張らねばならないことが眼前に広がっているけれど、でも家族、親子、友というものはいいものだとしみじみとしたのでした。

劇的な展開などは他の映画と比べてほとんど無いのですが、でもフランス映画らしく「完全決着のないストーリー」は、むしろこの映画を味わい深いものにしていました。

ここ数年、なかなか映画館にも足を運びずらい環境でしたが、今回も意を決して行ってみて、よかったと思いました。

 

2023/04/12

「夫婦公論/藤田宜永・小池真理子」を読みました。

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『夫婦公論/藤田宜永・小池真理子著(毎日新聞社)』という本を読みました。
ブックオフでまた見つけたのです。この本。
初出は1993年10月~95年3月の毎日新聞日曜版連載と記載されていました。

藤田宜永さん(作家)と、小池真理子さん(同じく作家)のご夫婦がリレー形式で自分達夫婦のことを書いたものです。
当時、ご夫婦は40代後半、軽井沢に移り住み、作家同士なので二人の生活はその家で密接しています。
そんな中、夫婦互いが互いをどんなふうに思っているのか、感じているのかを互いの文を読んで「ふざけんな」状態でリレーしているのでした(^^;)

私にはよそのご夫婦がどんなふうにして仲良くしているのか、喧嘩しているのか、お出かけしているのか、留守番しているのか、などなど知る由もないのですが、この本でのお二人は遠慮会釈無く(^_^;)お互いを“ののしり”つつ、“褒め殺し”しつつ様々なテーマで夫婦の「有り様」を書いていました。

スポーツ観戦や、車の運転、買い物、献立、節約と浪費などという、いかにも夫婦で“揉め”そうなテーマについても書かれています。
作家だろうが、サラリーマン夫婦だろうが、基本的には男と女が一緒に住んで夫婦をやっていると揉める様子は変わらない(^-^;ようです。
なんか、すこし安心しました。

本自体が古かったので、調べてみたら夫の藤田さんは2020年に亡くなられていました。
なんだかんだ言いながら結局互いを認め、仲はいいんだこの夫婦、と読後に思っていたのですが、ちょっと寂しい気持ちになってしまいました。

夫婦というものは、傍から見ていると仲が悪そうな二人が意外と仲が良かったりするもので、その実態は如何なるものかはわかりません。私ども夫婦がよそ様からどう見えているのかわかりませんが、まあ“中の上”くらいの仲の良さ具合なのかもしれません。

夫婦生活の「50」の難関について“夫婦リレー”で書かれた本、あなた方夫婦も読んでみた方がいいと思いますよ。

 

2023/04/01

「いまも、君を想う/川本三郎」を読みました。

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『いまも、君を想う/川本三郎著(新潮文庫)』という本を読みました。

文学、映画、旅などの評論、エッセイ、翻訳の執筆活動をされている川本三郎さんの奥様、服飾評論をされていた川本恵子さんが亡くなり、「いまも君を想う」というタイトルどおり、奥さんの恵子さんとの馴れ初めから結婚生活の想い出、そして亡くなる間際の出来事、妻への思いなどを綴った本でした。

著者の川本三郎さんは、ほんとうに奥さんが大好きで愛していたのだな、というのがどの頁を読んでみてもわかりました。

恵子さんは夫の川本三郎さんがまだ二十代なのに、ある事件をきっかけに勤めていた新聞社を辞めることになっても、自分がいるから大丈夫、あせらずに今後の方向を探しましょう・・というような感じで支え続け、その後も様々なことについてフォローもすれば背中も叩き、さらに健康にも注意を払い、たくわえができれば、二人の想い出をつくりに旅に出たり、ふたりの数々のエピソードは読んでいて心あたたまるものでした。

それぞれのエピソードは克明に記憶されていて、そのときの奥さんの表情や、仕草、そしてたぶんこういうことを考えてくれて、こんなことを話してくれたのだろう、ということがたくさん書かれていました。
それはもう、驚くばかりの鮮明な表現で・・。

後半になると、奥さんの癌が見つかり、その後のお二人の様子がこれも克明に書かれているのですが、恵子さんが気丈に振舞えば振舞うほど、涙なしには読めないということになってしまいました。

でも、読後感はとても爽やかでした。
夫、三郎さんの「ああすればよかった」「自分のとった行動はあれでよかったのか」という気持ちも書かれていましたが、これだけ奥さんのことを考え、思い、最後の日までのことを書ききったという事実が「爽やか」な印象を残すことになったのだと思います。

心に残る素敵な本でした。

 

2023/02/25

川上弘美さんの「どこから行っても遠い町」を読みました。

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『どこから行っても遠い町/川上弘美著(新潮文庫)』を読みました。
平成20年に刊行されたものの文庫化です。

連作短編集となっていて、それぞれの短編に登場する人たちが微妙につながっていて、それぞれがそれぞれの人生を歩んでいるんだなぁと、あたりまえのことを思いつつ、でも現実の世界も同様で、あの人もこの人も、私も、私のごく周囲の人たちも、皆が皆、悲しかったり、つらかったり、ほんのりとしあわせを感じたりすることもある人生を歩んでいることにあらためて気付くのでした。

それにしてもこの短編小説に出てくる人たちは“よろこび少ない”人ばかりで、男が女に対しても、そして、女が男に対しても、希望なんて見えてこない人が多すぎる・・のでした。

自分の奥さんと浮気した男と、奥さんが亡くなってから一緒に住むおじいさん二人だとか、大学生なのに、下宿に社会人の男を招き入れ、同棲し、学校をおろそかにしながらアルバイトを超えた仕事で男を支える・・が、最後は男を刺してしまう女性など、次々とさまざまな男女が登場します。

読んでいて、なにかどこかで聞いたような話だと思い、どこだろう?と思っていたら、ラジオの「テレフォン人生相談」に出てくる人たちでした。
時々、その人生相談を聞くことがあるのですが、「この人はいったいぜんたいどういう人生を歩んでいるんだ」と驚いたりあきれたりする人が毎日毎日途切れることなくわんさか相談の電話を掛けてきます。
その人たちにこの小説の登場人物は“酷似”していると思いました。

ということは、奇想天外な絵空事ではなく、この小説に書かれていることは“人間の業”を背負った人たちのノンフィクションではあるものの、実話と言ってもいいくらいの現実味を帯びたものであると思いました。

読み終えたあとも、どよんと重いものが体の中に残るような連作短編小説でした。
からだには“こたえ”ました。少し具合が悪くなりました。


と、ここまで書き終えたときに「あれ・・この本読んだことがある!」と思い出しました。
調べてみたら10年前に読んで、このブログに感想まで書いています。
覚えていないもんだねぇ~(^^;)
読み終えて感想書いたら、やっと思い出しました。

ついでなので、その10年前にこのブログに書いた感想文、全文を続いて載せておきます。
10年前の方がいい感想かも?!なんて思ってしまい、ちょっとがっかりもしたのですが、でもいいや、これも自分の記録です。
あらためて載せておきます。


以下、2013年9月24日にこのブログに書いた「どこから行っても遠い町」の感想全文です。

『どこから行っても遠い町/川上弘美著(新潮文庫)』を読みました。
川上さんの小説には、いつもしみじみさせられてしまうのですが、男二人で奇妙な同居をしながら魚屋をやっている二人の話では、魚屋に住み込んでいるその男性が、魚屋の親父(もうおじいさんだが)の亡くなった妻の浮気相手だったりして、その不思議な関係には読んでいて不思議がる登場人物共々違和感と不思議感でいっぱいになりました。

主婦と姑の関係の話もありますが、それがまた通常のパターンではなくて、互いに変なヤツだとは思いつつ微妙な仲の良い関係になっている話もありました。
むしろ夫よりも互いに理解を深めつつあったりして、その不可解さがまた川上さんの小説の真骨頂でもあります。

小料理屋の女将と若い板前との三度のくっつき合いと、別れの繰り返しの話もありましたが、ただの色恋沙汰ではないところがまた読み甲斐のあるお話でした。女将の「女」としての理不尽というか、訳の分からないところも妙に人生の機微を感じさせてくれました。

この本に出てくる十一の短編は、全ての話がゆるくどこかで繋がっていて、結局世の中って、一言では語り尽くせないそれぞれの不可思議な物語が連なって成り立っているのだと思うと、私も身の回りが急にいとおしくなったりするのでした。

しんみりと深みにはまった本でした。

 

2023/01/18

「異 ISEI 性/角田光代・穂村弘」を読みました。

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『異 ISEI 性/角田光代・穂村弘(河出書房新社)』という本を読みました。
これもブックオフで格安にて入手いたしました。

小説家の角田光代さんと、歌人の穂村弘さんがリレー形式でエッセイを書いているのですが、二人が考察しているのは「異性」「恋愛」についてです。

もう最初っからお二人とも“本音”で、“正直”に異性について語られていますし、互いに質問・疑問をぶつけ合っています。

いくつか私が気になった部分の例を挙げると、例えば別れた相手について、角田さんは次の女に対して自分が連れて行ってもらったレストランなどよりも高級なレストランへ別れた男が連れて行ったら“損”をした気になって許せない。

というようなことを言っていて、私にはこれが理解不能でした。
妻にも聞いてみたのですが、理解不能とのこと・・角田さんの心の持ち方がちょっと変わっているのか・・。

また、角田さんは好きになった相手には、ずっと自分だけを見ていてほしいし、恋愛当初にしていた劇的な愛の行動(突然、歩道橋上で抱きしめるとか、クリスマスの日にサンタの恰好をして窓の外から「今、カーテンを開けて外を見てごらん」などと電話を掛けてサプライズ的行動をするなど)は、自分のことが好きならずっと続けてほしい・・という・・(・_・;)
穂村さんがそのことについて書かれていますが、男としてはそんなこと毎回したら“ドン引き”されたり“キモい”と思われるんじゃないかということで、私も同意見です。

お二人のリレー会話の中で、ドキッとした話題は、男がモノを集めたりするのが好きなのは、例えば別れた後にその別れた恋人を資産目録に載せることがうれしいんじゃないか、“集める”“所有する”のと共通しているのではないかというものでした。

これはけっこう言えているんじゃないかと思いますよ。
もう別れたから関係ないのに、これこれこんな感じの美人でお嬢様だったとか、いろいろ頭の中の資産目録に搭載している男っているんじゃないのかなあと思いました。

私自身についても、若い頃はそんな傾向があったと思います・・・イヤな奴だな・・。
今はそういうの、どうでもよくなりましたが。

角田さんが言うには、女性にはそういう資産目録的な感覚はないんじゃないかとのことでした。
むしろ付き合っている現在が大事で、私の“好み”はこういう人、私が着ているものは、まさに私を表している、私が食事に出かけるところは、今の私の感覚はこういうもの、など、今の私を表現するものであるというのです。
これも言えているような気がします。

お二人が互いに“発見”続きの中、リレー・エッセイはずんずん続いたのですが、これは読み応えがありました。
私が若い頃にこの本を読むことが出来たなら、恋愛中に起こった数々のトラブルや問題はかなり避けられたと思いました(^_^;)残念。

でも、まだわかりません。
これから恋愛することがあるかもしれないので、もう一度読んで“そなえて”おこうと思いましたよ(#^.^#)

 

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