『本はこれから/池澤夏樹編(岩波新書)』を読みました。
2010年第一刷発行の本で、いよいよ電子書籍が今までの“紙”に印刷された本を凌駕するのではないか、などという話が出てきた頃でしょうか。
そして、もし“電子書籍・隆盛”ということになって来たら、書店、古書店、図書館、取次、装丁・編集、書き手、読み手はどうなっていくのか、という、“本好きな私”にとって重大な件について、三十七名の様々な立場の人達からのエッセイがまとめられていました。
そんな本を14年後の今読んでみたわけです。
エッセイの内容は、それこそ、それぞれの方が“ばらんばらん”でした(^_^;)
本屋などでの本との偶然の出会いが人生上も、研究などをしている時は仕事上も大事なのだ。だからデジタルなんてとんでもない。という意見。
デジタル化していく時点で日本は遅れを取る、しかも古文書などは画像として残さざるを得ず、文化そのものの喪失があるという意見。
デジタル大歓迎、場所は取らないし、検索が容易になって膨大な知識が手元にある環境はとても自分にとって役立つという意見。
電波を通じて情報記号を吸い取るだけの端末を一台持つことの「便利さ」という詭弁とひきかえに書物なる多様体への信頼を捨てることになれば、私達は書物というイデアのなかに蓄積されてきた身体と知性をめぐる記憶のすべてを、市場と効率性の原理へと売り渡すことになる、という・・私の意見ともかなり近いものもありました。
古書を扱っている人は、「当面は何の影響もない、取り扱う古書はいくらでもあるし、百年は大丈夫」と、電子書籍化など“どこ吹く風”なご意見もありました(*^^*)でも、そりゃそうだとも思いました。
特定の、特にアメリカの企業が独占的に書籍情報を収集し、コントロールするのではないか、という意見もありました。
これからもずっと共存せざるを得ないのだ、デジタルの利便性と、紙の本という人間にとってのメリットは、どちらかになってしまうということはない、という意見もありました。
デジタル化した文書は、結局保存するメディアや、方式がどんどん進化・変更されるので、更新を常に続けねばならず、その作業量は膨大であるという意見・・間違いなく発声する・・もありました。
さあ、この本が出てから14年を経ている現在、どうなっているのかというと、当時言っていたような電子書籍の発展・隆盛はそんなに感じません。
かと言って、駅前の書店などはどんどん閉店し、大型書店も閉店していく中でまだ残ってはいますが、そこにはメジャーな通りいっぺんの本しかないことが多く、“本との出会い”なんて本好きの人間にはとても満足できる状況ではなく、アマゾンなどで書籍を購入する人はたくさんいるのでしょうが、結局そのとき必要な本をピンポイントで探し、買っているだけです。
私が思うに、電子書籍で本を読もうなんて人に、あまり本好きはいないと思うのです。
必要だからこれは読んでおかなきゃ、という人、あるいは単に電車に乗っているときなどのヒマつぶしということもあるかもしれない。
本好きって、偶然の出会いも大切だし、本そのものの存在、手触りや読み進むうちに残りページを意識しつつ味わっていく感じ、読み終えたときの独特の感覚は現物の本を手にしていないと感じることは出来ません。
以上、この本の中で語られていることと、私の意見も交えて感想を書いてみました。
そして私は、これからも年間約150冊の本を読む生活を続けていくのでした。
カセットテープや、今やほとんど見ることのないMDに15年以上前に録音したラジオ番組が残されています。それを聞きながら一句詠みました。
【 古いラジオの録音聞く 夏座敷 】
《背景》季語:夏座敷[夏]
ここ最近、15年以上前のラジオ番組の録音をあらためて聞いている。
そんなに変わり無いのかと思ったら、話しのテンポも掛かる曲も割とゆったりしていて、しかも今と違ってどうでもいいような話しは少なく、心に残る内容が多いことに驚いた。
こんなラジオ番組を聞くには、夏を涼しく過ごそうとした昔の夏座敷が似合うと思った。
襖や障子を取り外して風を通したり、籐の敷物や茣蓙などを敷き、麻の座布団にしたり・・そんな夏の座敷を懐かしく思った。
『わたしの週末なごみ旅/岸本葉子著(河出文庫)』を古本で手に入れ、読みました。
2008年「ちょっと古びたものが好き」と2009年「週末ゆる散歩」の二冊の単行本について加筆修正し、写真を再構成したものとなっています。
2012年に初版発行されています。
最近、岸本さんの著書については何冊かご紹介していますが、この本は俳句についてのものではなく、主に骨董、アンティークなどで普段づかいできるようなものを岸本さんの思いのこもった解説で紹介している前半部分と、後半は柴又や谷中などを岸本さんが散歩して、独特の視線からその愉しみを書かれている、という構成になっていました。
前半のティーカップやその他器などを旅先の骨董品店に出向いて探す様子などは、著者のわくわくする気持ちや、その器がいつ頃のもので、どういう人が使っていたものか、などに思いをはせている様子が手に取るようにわかり、私も以前骨董市などに出かけていたのでとても面白く読みました。
高価なものや、貴重なものを求めるのでなく、自分の生活の中で“よろこび”と共に使っていくことのできるものを求めている著者の気持ちがよくわかりました。
掲載されていた写真を見ても、「なるほどねぇ」という感じ(#^.^#)
そして、後半はお馴染みの柴又や、谷中方面などにも出かけています。
あの有名な「夕やけだんだん」にも出かけていて、私も行ったあの観光地でもない、でも人が集まり、なんだかいい気分で歩き、コロッケを買ってビールを飲んだりするような雰囲気のところを紹介されていて、こういう散歩・・いいなと思いました。
読み終えて、骨董についても、以前のように骨董市などを探して出かけたくなりましたし、また東京の下町などをゆっくりと散歩してみることも復活させたいと思いました。
コロナ禍で、すっかりご無沙汰になっていました。
岸本さんの著書については、まだ俳句についてのものをストックしているので、また読みましたらご紹介いたします。
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