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2023/06/05

【The Beatles 研究室・復刻版】Please Please Me[A-3]Anna (Go To Him)

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。一部修正を施してはいますが、ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。十数年以上前の文なので細部の表現・事実関係についてはお見逃しください。
今回は、デビュー・アルバムに収録されていた曲でジョンがボーカルを取っている「Anna(Go To Him)」の記事を復刻します。
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アーサー・アレキサンダーという黒人R&Bシンガーのカヴァー曲です。
この曲は1957年という説と1962年という説があってはっきりしませんが、アメリカでリリースされた曲で、ベスト40にもはいらなかった曲だったそうです。それをビートルズが見事にオリジナルかと思うくらいの出来でカヴァーしました。

特筆すべきはジョンの歌手としての実力で、どう聞いても風邪気味の声でコンディションが悪いのに、瑞々しい歌唱です。
しかも、録音時には22歳くらいだったと思いますが、大人の歌い方で、なかなかここまで歌い込める歌手はいないというくらい、哀愁まで漂わせています。
すでに、デビューアルバムにして、一級品の歌手としての実力を示しています。

この時点では、ポールにかなり水をあけている状態だったと思います。ただ、初期の曲だとジョンかポールか判別できないような歌いっぷりの曲もあり、この曲では語尾がちょっと舌足らずな感じがポールにちょっと似ています。そりゃ若いですから仕方ないかもしれません。

ビートルズは仮に作曲能力が無かったとしても、このジョンのボーカルとポールとジョージのコーラスで、コーラスグループとしてだけでも、きっとヒット曲は4~5曲は飛ばしていたのではないかと思います。
コーラスグループとしても卓越した実力を持っているのが、R.ストーンズなど他のロックバンドとの違いだと思います。

この曲でもポールとジョージのコーラスが入っていて新人グループとしてはなかなかの出来です。

ギターはジョージが低音弦をたぶんピックで弾き、高音弦を指でパラランと弾く奏法を見せてくれます(これもカントリーの大御所チェット・アトキンスの奏法を使ったらしいです)。
ポールはまあ普通のボンボンベース、ジョンはアコースティックギターのJ-160Eのようですが、よく聞こえません。

ただ、リンゴはこの曲独特のリズム(のちのラバーソウルでの「イン・マイ・ライフ」でも聞かれる“ズッ・タ・ド・・・タ・ドン・ドン”と聞こえる)をちょっと心もとない感じで叩いています。
イン・マイ・ライフでは、切れの良い素晴らしいリズムキープだったのですが、わざとジョンの心情が良く出ている曲の内容に合わせてたよりなく叩いているとは思えないので、このリズムは人からこうしろと言われて叩いたのか、自分でこうしようとして、未消化だったのかどちらかではないかと思います。
しかし、オカズの部分は素晴らしい切れで叩いています。

※このリンゴのドラムに関しては、下記の追記でオリジナルのアーサー・アレキサンダーの録音からそのドラム演奏を聞いて新たに知ったことが出て来ましたので、そちらもご覧ください。

だだのカヴァー曲ではなく、ジョンのシンガーとしての実力とビートルズの引き出しの深さを示した曲であると思います。


〈追記〉2023/06/05

この曲についても、ホームページ作成後にリマスター音源や、BBCのライブ音源が出ていますので、それらと、オリジナルのアーサー・アレキサンダーの音源も入手していたので併せて聞いてみます。


アーサー・アレキサンダーのオリジナル音源

メキシコ盤CDが手に入ったので、聞いてみました。
ドラムのリズム・パターンは、リンゴと同じパターンであったことが判明しました。
私はてっきりポールか誰かのアイデアであのリズム・パターンになったのだろうと思っていました。驚きました。
収録されているドラム自体の音は、実にハイハット、スネアともにキレがいいと感じました。
オカズ(フィル・イン)もリンゴが叩いているものとよく似ているので、リンゴはオリジナルに倣ったものだとわかりました。リンゴ独特の“くせ”が出たものかと思い込んでいましたが、これも意外やオリジナルに忠実だったことがわかりました。
ボーカルの切々とした歌い方についても、ジョン独特の歌い方かと思い込んでいましたが、オリジナルの歌い方に倣っていたことが判りました。全てが意外でした。
つまり、オリジナルが実にしっかりとした素晴らしいものであることがわかったのでした。


オリジナル・ステレオ2009年リマスター盤

ビートルズ初期のステレオなので、ボーカルとコーラスが右スピーカーから出ているパターンのマスターです。
ジョンの情感こもるボーカルがとても印象的。
ポール、ジョージのコーラスもアーサー・アレキサンダーのオリジナルに入っていた女性コーラスに倣っていて、とてもカッコいい。
全体的には、ボーカルを中心にミックスされているとも感じました。
リンゴのリズム・パターンは、ハイハットのハーフ・オープンが入る部分があり、そこがアーサー・アレキサンダーのオリジナルのドラムとは異なっていることに気づきました。
これはリンゴのドラムのカッコよさが出た部分でした。


モノ・マスター盤収録のミックス 2009リマスター盤

聞いてすぐに自然なミックスだと思いました。
ジョンのボーカルにけっこうエコーがかかっているようにも感じました。
エコーは、コーラスにはあまりかかっていないように聞こえます。
モノの方がジョージのギターがよく聞こえます。


オン・エア・ライブ・アットBBC

おとなしい演奏で、ポールのボンボン・ベースが目だってよく聞こえます。
ジョンは、手抜き無しのうったえかけるようなボーカルを披露。
リンゴのドラムは、音量的にはうしろに引っ込んでいるくらいの感じです。
リズムパターンもオリジナル録音のものにはこだわらず、流れにのって叩いていて、フィル・インもその場のアドリブ感が強い。


米国キャピトル盤「アーリー・ビートルズ」モノラル・バージョン

ジョンのボーカルが実に生き生きとして収録されている。ちょっと驚くくらい。
息づかいもわかるくらいの臨場感が出ています。
ジョージのギターも爪弾きがよくわかります。
リンゴのドラムもハイハット、スネアともにキレのよいいい音で入っています。


米国キャピトル盤「アーリー・ビートルズ」ステレオ・バージョン

こちらもジョンのボーカルが生き生きとしている。
ジョンのボーカルに限っても、モノラルよりも制御されたミックスであると感じました。
とても生きの良い音で、スタジオのミキシングルームでモニターしているような気分になるくらいの臨場感があります。
全体的には、ボーカル中心で、ドラムはちゃんと入ってはいるが、少し後ろに下がっているくらいのミックスになっています。
ジョージのギターは艶やかな音色で鳴っています。

 

2023/04/19

【The Beatles 研究室・復刻版】Past Masters ・ Volume Two[A-2]We Can Work It Out

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。一部修正を施してはいますが、ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。十数年以上前の文なので細部の表現・事実についてはお見逃しください。
今回は、ビートルズのシングル・ヒット曲でCD発売当初では「Past Masters ・ Volume Two 」に入っていた「We Can Work It Out」の記事を復刻してみたいと思います。

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邦題は「恋を抱きしめよう」でした。原題とはかけはなれていますが、当時の付け方だったのでしょうね。不思議と、この曲を聞くと邦題が頭の中に浮かんできたものです。

最初にこの曲を聞いたのは、中学時代で、「オールディーズ」という前期ベスト盤のようなアルバムでした。もちろんレコード盤です。
その中でもひときわ目立つ、キャッチーな曲でした。
“非の打ち所がない”と、当時も思いました。完璧なヒット・ソングです。さすがレノン・マッカートニーの共作です。

明らかに二人の作った曲を合体した感があります。
通常のメロディー部分は、ポール。そして、「Life is Very Short・・・」からのサビの部分はジョンです。

「きっと成し遂げることができる」と、前向きなのはポール。「人生は短い」と悲観的なのがジョン。その後の二人の生き方にも通じるような、それぞれの歌詞です。とても面白い!!
実情はポールの恋人ジェーン・アッシャーがロンドンを離れ、自ら役者として一本立ちするために劇団に入ることにしたことについて、ポールが「それはないよ、僕たちはきっとうまくやれる」と説得というか、泣きついたというか、強引に引き留めようとしたというか・・そんな状態の時に作られた歌のようです。

途中、“ブンチャッチャ、ブンチャッチャ”とワルツになる部分が、この曲の“ミソ”ですが、この部分については、ジョージのサジェスチョンがあったと聞いたことがあります。とすれば、ジョン・ポール・ジョージのコンビネーションが見事に開花した一作と言えるのではないかと思います。
それを見事に実現化したプロデューサーのジョージ・マーティンの手腕もさすがです。

ジョンはハーモニウムというオルガンのような不思議な楽器を弾いており、それが絶妙な効果を生み、さらにタンバリンも大きな効果を得ています。
ビートルズはやること、なすこと、結果的には皆最良の効果を出しています。この曲もその代表的なものという気がします。

英国では、「デイ・トリッパー」と両A面扱いでリリースされ、この曲も1位に輝いています。
米国と日本では、この「恋を抱きしめよう」が単独A面となって、もちろん全米1位に輝いています。
どちらかというと、米国向きな曲であると思うし・・・。

ポールも、ビートルズ解散後のソロ活動のコンサートで演奏しています。よりアコースティックなアレンジで。
やはり、ヒット曲らしいキャッチーな感じは今聞いても素晴らしいものがあります。

いい曲です。


〈追記〉2023/04/19

この曲についても2009年リマスター盤の他、ホームページ作成後に様々な音源が出ておりますので、それらを聞きながら追記してみたいと思います。


Mono Masters Vol.2 収録バージョン

とても落ち着いた感じのサウンドに聞こえる。
リンゴのドラムもタンバリンもあまり出過ぎない感じ。
ボーカル、コーラスも自然に全体のサウンドに馴染んでいるように聞こえる。


Past Masters Vol.2 収録バージョン

左側のドラム、タンバリンの音が際立ってクリアに聞こえる。
ハーモニウムの音もはっきりと区別できるし、ポールとジョンの歌声もとてもよく分離して聞こえる。またボーカルに掛かっているエコーもかなり大きい。


アルバム1(One)2000年リリース盤・収録バージョン

ボーカルへのエコーの掛かりは、薄められ、よりボーカルの“生感”が増している。
アコースティックギターの音がかなり前面に出てきていて、他のミックスよりもはっきり聞こえる。
ハーモニウム(ジョンが弾いていると言われている)の音量を曲の箇所の盛り上がりに依ってコントロールしているように感じた。
全体のバランスがとても良く、これがベストか、と思わせる。


アルバム1(One)2015年リリース盤・収録バージョン

これもいいミックスで、全体のバランスがバッチリ!
ジョンのボーカルがより際立って聞こえる。
サビの「ライフ・イズ・・・」のところから絶妙に真ん中に音が寄ってくるところがこのミックスの特徴のように思った。

 

アルバム1962~1966(いわゆる赤盤)・・2009年のビートルズ音源リマスター後に出たCD収録バージョン

基本的にパスト・マスターズのミックスと同じ。
盤としての音量が他の曲との兼ね合いで調整されているかもしれない。
でも、聞いてみると何となく異なっているようにも感じる。大きな変更・修正は為されていないが、少しはこの赤盤リマスター作製時にいじっているのではないかと思われる。

 

2023/03/07

【The Beatles 研究室・復刻版】With The Beatles[B-6]Not A Second Time

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。15年以上前の文なので細部の表現・事実についてはお見逃しください。
今回は、ビートルズ、デビューから二枚目のアルバム「With The Beatles 」から「Not A Second Time」の記事を復刻してみたいと思います。

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イントロ無しでいきなりジョンのボーカルから始まる初期ビートルズらしい曲です。
この頃のビートルズの最大の“売り”は、ジョンのボーカルとリンゴのドラムではないかと思います。つまり他に代えることができない素晴らしさを発揮していたのが二人だったと思います。
ジョンのせっぱ詰まったような、息せき切った唄い方は、聞いていた当時の若い人たちには、自分たちの言いようのない気持ちを表現しているような気がしたのではないでしょうか。

そして、リンゴは4人の中では既に完成した演奏ができる唯一のミュージシャンだったように思います。
この曲のブレイクのところでも、際立ったセンスを見せています。ここでも両手打ち炸裂です。

曲自体もなんとはないような曲と思いがちですが、展開を追っていくと、実にドラマチックで、胸に迫るような情感あふれる良い曲です。

この曲も、ちょっと聞き込んでいるビートルズ・ファンには人気のある曲です。


〈追記〉2023/03/07

この曲もリマスターがステレオとモノが出て、さらにキャピトル盤でもステレオとモノが出ているので、あらためて聞いてみました。
アナログのモノ音源もあったので、それも含め。


2009年オリジナル・リマスター・ステレオ盤

各楽器全体にうまく調整されていて聞きやすい。
ジョンのボーカル(ダブルトラック含め)は、歌詞もちゃんと聞き取れて、全体にやさしい音に聞こえる。


2009年オリジナル・リマスター・モノラル盤

ちょっとボーカルが引っ込み気味に聞こえるが、当時AMラジオなどで聞いているとちょうど良い感じになっているのかもしれない。
ピアノの音も深い感じで、残響音もよく聞こえる。
リンゴのドラムもハイハット、スネアともキレのいい音が鳴っている。


いわゆる“モノ・ラウドカット”と言われるアナログ音源。

ジョンのボーカルは割れていない。
ピアノもリンゴのドラムもほどよい感じでミックスされている。
とても聞きやすい。


米国キャピトル盤ステレオ・ミックス

けっこうワイルドなミックスとなっていて、ジョンのボーカルは“割れ気味”だし、ピアノは“ガンゴン”うなっているしで、でもアメリカの人にとってはビートルズの勢いを感じてピッタリくるミックスなのかもしれません。


米国キャピトル盤モノ・ミックス

ステレオ盤よりは音は割れていないが、それでも英国のオリジナルに比べるとやはりワイルドな感じ。
ピアノもやはりキャピトルのステレオ盤同様、ゴンゴンいっているし、リンゴのドラムも特にハイハットが音量レベルが高すぎるように感じる。

 

2022/11/16

【The Beatles 研究室・復刻版】The Beatles (White Album)[B-9]Julia

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。15年以上前の文なので細部の表現・事実についてはお見逃しください。
今回は、アルバム「The Beatles (通称:ホワイト・アルバム)」からジョンの曲「Julia(ジュリア)」を復刻してみたいと思います。
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ジョンが単独で録音した唯一のビートルズソングと思われます。
このアルバム収録曲の中では最後のレコーディング曲となりました。
ひっそりと行われたものだとのこと。
ボーカルはダブルトラック、ギターは2回録音されています。

インドに瞑想旅行に行った時に作られたもので、アルバム中ひとつ前の曲にあたるポールが作った「アイ・ウィル」と同時期のものになります。
しかも同じアコースティック・ギター曲。
二人の気持ちはシンクロしていたのでしょうか。
インドでドノヴァンに教わったスリーフィンガー奏法をさっそく演奏に取り入れています。

曲は、母親とヨーコへの想いを一度に歌っているような曲です。
タイトルは母親の名前、曲中の“ocean child”は、“洋子”をそのまま英語にしたものであることからも、それがわかります。

windy smile 風の微笑み, seashell eyes 貝の瞳, silent cloud 静かな雲, sleeping sand 眠る砂・・などの歌詞はジョンならではのものですが、瞑想旅行中のインドに詩のような手紙をジョン宛に送って来ていたヨーコの影響もあるかも。

「僕の言っていることの半分は無意味だけど、ジュリアあなたに聞いてほしいがゆえ」という出だしの歌詞はたいへん印象的です。
自分を捨てた母親ジュリアは、ジョンが17歳の時に交通事故で亡くなりました。
母親に言おうとしても言えなかったことや、そんな自分をやさしく認めてくれたヨーコに対する静かなつぶやきのような、問いかけのような歌です。
前曲のポールの音楽職人的な曲作りとはまた異なったアプローチです。


〈追記〉2022/11/16

では、この曲についてもホームページ作成後に様々なテイクを聞くことができるようになりましたので、私の手持ちのテイクを聞いてみたいと思います。

「アンソロジー3」に入っているテイク

ギターの爪弾きの練習に近いテイク。
ジョンのボーカルが冒頭に入っているが、そのあとはギターの音のみが生音で入っている。
途中でギターをミスして止まり、ジョンがコントロール・ルームと会話している様子が入っている。


2009年「ステレオ・リマスター」のテイク

ジョンのダブルトラックのボーカルが水の波紋のように聞こえ、とても新鮮な印象。
ギターの音はほぼ生音で、低音部分を利かせてレコーディングされているように感じる。


2009年「モノ・マスター」のテイク

ほとんどボーカルにもギターにも大げさなエフェクトが掛かっておらず、とても自然な感じ。
ステレオ版のようなギターの低音部の強調もない。
ダブルトラックのボーカルも妙なエコー感がなく、ステレオよりも聞きやすいと感じた。
かなり良いテイクだと思う。初めてこの曲を聞いてもらう人にはこのモノラル・テイクが“おすすめ”。


50周年記念盤の「イーシャー・デモ」テイク

ジョンの歌い方が少しオリジナルと異なる。
ダブルトラックのボーカルもエフェクトの掛け方が異なり、曲全体の印象も変わっているように感じる。
ジョンのボーカルは、より“ささやき”感が強い。
ギターの爪弾きは「間違ってもいい、デモだから」という感じで、力強く大胆に弾いている。なので、ミスもあるが、あまり気にならない。
ジョン以外の人の声も複数聞こえる。コーラスをどうしたらいいいか試しているように思う。口笛なども入っている。


同じく50周年記念盤の「セッションズ」に入っているテイク

ギターはコードストロークで弾かれ、「どう料理してやろうか」とジョンが探っている感じ。
「もうちょっと速くしようか」とジョンが言ってからは、スリーフィンガーでギターを弾いている。
ボーカルはささやき気味に歌われている。
やさしい感じで歌ったみたらどうか、という感じで演奏されている。


さらに50周年記念盤の「ジャイルズ・マーティン・エディション」のステレオ・リミックス

ジョンのボーカルがリアルに聞こえ、さらにダブルトラックの方のボーカルも自然に聞こえるようにミックスされている。エフェクトはかなり強く掛けていると思われるが、それが不自然には聞こえない。
曲全体のサウンドが“深い”という印象になっている。
モノ・マスターも良かったが、こちらは技術で良いテイクにした感じがする。

 

2022/11/07

【The Beatles 研究室・復刻版】With The Beatles[B-5]Devil In Her Heart

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。15年以上前の文なので細部の表現・事実についてはお見逃しください。
今回は、初期ビートルズが必ずアルバムに入れていた他のアーティストの“カヴァー曲”である「デヴィル・イン・ハー・ハート」を取り上げてみました。

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“ドネイズ”という黒人のガールグループのあまりヒットしなかった曲のさらにB面に入っていた曲をビートルズが取り上げたものなんだそうです。
でも、いい曲だと思います。

原曲タイトルは“Devil In His Heart”で、あちらでは、律儀に女性の歌を男性が歌うときは“His”を“Her”に変換して歌うんですよね。

リンゴのスネア一発とバスドラ二発で「ンタッ・ドンドン」という感じで始まります。これが気持ちいい。

ジョンとポールが「彼女の心には悪魔が住み着いている」と歌うと、ジョージが「でも、彼女は魅力的」と歌う、掛け合いになっています。
コーラスのタイトル部分が妙に歯切れ良く歌われていて、ちょっと面白いです。

目立たない曲を取り上げた割には、非常に魅力的な曲で、初めて聞いたときは、いい曲だと感じて何度も聞いた記憶があります。

甘いギターのフレーズも、とても魅力的ですが、ジョージが弾いていると言われているのですが、ちょっとはっきりしません。
早く入り過ぎたり、やりそこねたりしているのを聞いていると実はジョンが弾いているのではないか、などと思うのですが、果たして・・。
一度聞いてみて判断してみるのも面白いですよ。


〈追記〉2022/11/07

まずはオリジナルのガールズ・グループ「THE DONAYS」の「DEVIL IN HIS HEART」の音源(メキシコ盤)を持っていますので、それから聞いてみましょう。

ドラムのイントロは同じです(*^_^*)
テンポはビートルズよりもかなりゆっくり気味。
ギターのリフも同じですが、プワンプワンとエフェクトが掛かっていて、女性が歌うこの曲にぴったりな感じがします。
歌い方は、ビートルズよりも感情を込めているように感じます。
特にサビのところは“歌い上げ”ています。
聞いてみると、とてもシングルB面の曲だったとは思えません。いい曲(^^♪
だからビートルズも気に入って、録音にまで踏み切ったんだと思いました。


アナログ盤、モノラル・ラウドカット

ジョージのボーカルと他のメンバーのコーラスが絶妙の音量でミックスされていて、コーラス曲であることをかなり意識していると感じる。
ギターもベースもフレーズがよくわかる。
リンゴのドラムの音もキレよく入っている。


シングルCD「ベイビーイッツユー」にカップリングとして入っているバージョン

録音過程のテイクと思われる。
まだジョージの歌が仕上がっていない感じ。
バックのコーラスがジョージを背中から応援しているように感じる。
途中、歌詞のあやしい部分もある。
リンゴのドラムも軽く“さぐりを入れている”ようなプレイになっている。


米国キャピトル盤「セカンドアルバム」ステレオ・バージョン

音はかなりワイルド。ノイズなど関係なく曲の盛り上がりを大事にしている。
心なしかジョージのボーカルが力強く感じる(^-^;テイクは英国オリジナルと同じにもかかわらず・・。
ベースはギターよりもやや引っ込んでいる感じ。
リンゴのドラムもややミックスは控え目。
ギターの音質は艶やか。


米国キャピトル盤「セカンドアルバム」モノラル・バージョン

キャピトル盤ステレオ同様ノイズなど無視して曲の勢いを大事にしている感じ。
だから盛り上がりがとてもいい!
コーラスもかなりノイズ混じりだが、ジョージを盛り上げている。
英国オリジナルミックスよりもベースは引っ込んでいるように感じる。
ギターもボーカルに比べ、やや引っ込んでいる感じがする。


ライブアットBBCボリューム2に入っているバージョン

ジョージはかなり頑張って歌っている感じ。
ジョンがコーラスをしながらジョージを途中で引っ張っていくところがある。
リンゴはかなり力を入れてドラムを叩いている。
ビートルズが観客に「聞かそう」としている意志が感じられるテイク。


2009年オリジナル・リミックス・ステレオ版

ギター、ベース、ドラム共にそれぞれがよく聞こえるミックス。
コーラスではポールの声が比較的よく聞こえる。
基本的にテイクは他と同じなのに、ジョージが必死で頑張っているように聞こえるから不思議。


2009年オリジナル・モノマスター

これはジョージのボーカルが中心にミックスされていることを強く感じる。
そしてポールのベースが曲を引っ張っているように聞こえる。
ギターはリズムギターのカッティング中心によく聞こえる。
このバージョンが一番自然な感じがする。

 

2022/10/27

【The Beatles 研究室・復刻版】The Beatles (White Album)[D-2]Honey Pie

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。
今回は、アルバム「The Beatles(通称:ホワイト・アルバム)」に収録されたポールの曲「ハニー・パイ」を取り上げます。
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1920年代風のジャズの香りが漂うような、優雅とも言えるような、そんなポールの才能とセンスが光る曲だと思います。
ポールはこういう曲が好きなんですよね。

SP盤に針を落としたときのスクラッチノイズとともに始まり、ポールの甘いボーカルでクラリネットとの絡みが絶妙です。

間奏の甘いジョンのギターもなかなかの味わいで、のちにジョージがそのプレイをほめていたようです。
そして、リンゴのドラムはブラシでのプレイで、そんなに難しくはなさそうですが、ジャジーな雰囲気を十分に出しています。

全体に凝り過ぎず、品良くまとめていて、さらに突き詰めずに途中で放り投げたような感じを残したのが素晴らしいと思います。

ポールはアルバム「サージェント・ペパー・・・」では、「ホエン・アイム・シックスティーフォー」で、そしてビートルズ解散後のソロになってからの BBC のテレビ番組「ジェームス・ポール・マッカートニー」では、「ガッタ・シング・ガッタ・ダンス」で、そしてウイングス時代にはヴィーナス・アンド・マーズの「幸せのアンサー」で、この曲のように懐かしくて“曲中曲”のような曲を披露しています。
シャウトしないときの優しいポールのボーカルにはぴったりな素敵な曲ばかりです。

ホワイトアルバムにはなくてはならなかった曲かもしれません。そう言えばあの加藤和彦さんもカヴァーしていました。かなりこのアルバムに近い形でカヴァーされていて、そのバージョンもなかなか良い出来でした。

ポールの佳曲、そして“天邪鬼”のジョンが、ねたみ半分に嫌いそうな曲です。


〈追記〉2022/10/27

この曲についても、ホームページ作成後にリマスターや記念盤などが出ているので、その音源をたどって聞いてみたいと思います。

まずは、「アンソロジー3」に入っているバージョン。

軽くポールがアコースティックギターを爪弾き、歌っているバージョンです。
この段階でもう雰囲気がかなり出ています。セミプロだったポールのお父さんの影響かもしれませんが、ポールはこういう雰囲気の曲を幼いころから聞いていたのかもしれません。

続いて、「2009年ステレオ・リマスター」バージョン。

クラリネットと、ギターの甘い感じの音色がベストマッチしていると思います。
ポールのボーカルもやわらかい音で、曲全体のムードがとてもよいと感じました。

さらに同年「2009年モノ・マスター」バージョン。

ポールのボーカルはほとんど“生音”に聞こえるくらい自然な音になっています。
これもステレオ版リマスターに劣らず、とても聞きやすいいいミックスになっていました。
一番“自然”に仕上がっているのではないかと思います。

さらに、「発売50周年記念盤」のイーシャー・デモ。

とてもラフな演奏だし、ボーカルの歌い方もラフだけど、そのワイルドさが逆に魅力になっているようなバージョン。
ビートルズのメンバーに得意気に「こんな曲つくったよ」と聞かせているポールの姿が目に浮かぶよう。
たぶんジョンだと思うけど、「オー・イェーッ」と掛け声まで出ているのが聞こえる。
・・仲いいじゃん・・。

もうひとつ同じ「50周年記念盤」のセッションズに入っている「インストゥルメンタル」バージョン。

バックの優雅なクラリネットを中心とした演奏とジョンの素敵なギター・プレイの見事なマッチングがよくわかるバージョンとなっています。
けっこう細部にジョンの“気遣いある”ギター・テクニックを聞くことができます。
ボーカル無しで聞いてみると、この曲がもともとしっかりとした素晴らしい曲であることを再認識できます。

最後は「50周年記念盤」のジャイルズ・マーティン編集、本番バージョン

左右の分けもオリジナルとかなり異なっています。
ポールのボーカルが豊かな音に聞こえます。息づかいまでよくわかる。
バックのクラリネット中心の演奏は全体に馴染むようなやさしい音色と音量に調整されている。それが流れるように展開しているのが実に見事です。

 

2022/10/04

【The Beatles 研究室・復刻版】Past Masters ・ Volume One[B-7]Bad Boy

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。
今回は、「パスト・マスターズ」に収録された「バッド・ボーイ」を取り上げます。
一部の方には、あまり馴染みのない曲かもしれません。
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アルバム「 Help ! 」のレコーディング時に録って、結局アルバムには入らなかった曲です。
逆にアメリカでは当時英国オリジナルと全く異なるアルバムが出ていたため、1965年に先に「 BeatlesⅣ」というアルバムに収録されて発売されていました。

イギリスでは、シングルにするという話もあったのですが、リンゴの強硬な反対があったらしく、お蔵入りになり、やっと「 A Collection Of Beatles Oldies 」というベストアルバム的なアルバムに『未発表曲』として収録され、発売となりました。

日本でもこのアルバムは1967年に発売され、私も所有しておりますが、とても素敵なアルバムで、初期から中期にかけての珠玉のアルバムとなっています。

解散後に出た俗に言う『赤盤』よりもずっといい構成です。これがCDで発売されるのを心待ちにしているビートルズ・ファンはきっと多かったと思いますが、『赤盤』があるからでしょう、未発売。 
そして、同じく、CD未発表のライブ盤「 Beatles At The Hollywood Bowl (※このホームページ作成時には未発売であったが、その後に再編成されたCDが発売される)」でも曲の途中のおしゃべりの中で、「これはオールディーズだけど」と言ってわずか1~2年前の曲を紹介している様子が入っていましたが、このアルバムのタイトルもわずか数年前の曲をビートルズは“オールディーズ”として扱っているのです。

さて、「バッド・ボーイ」ですが、一緒の頃に録音された「ディジー・ミス・リジー」とサウンドも演奏も似通っています。
そして、ラリー・ウィリアムスのカヴァーであることも同じです。
セカンドアルバムの「マネー」にも演奏が良く似ています。

ジョンはなりふりかまわぬ、腹の底から突き上げるような歌いっぷりで、得意の唱法です。
ジョンのギターもリッケンバッカーで小指を拡げるブルースっぽいフレーズを弾いています。
ボーカルを後から録ったのだと思いますが、同時に演奏するとなるとけっこう難しい演奏かもしれません。

ジョージはギターをダブルトラックで2回被せていて、特有の高くて細くてしかも丸みのある音でなかなかいいフレーズを弾いています。
リンゴは相変わらずの鞭がしなるようなフィルインを決めていますが、シングル発売を反対したところをみると気に入らないプレイだったのでしょうか?

中学生の時に初めて聞いたとき、私もちょっと元々のこの楽曲の持ち味に対して“やりすぎ”(騒ぎすぎ?!)かなと思いました・・・ジョンのボーカルもそんな感じ・・・。
うしろの方でそぉっと聞こえるオルガンも入っていて、これもジョンのハモンドかもしれません。
いずれにしても、アルバム「オールディーズ」の中では、他の曲がヒットソングばかりだったので、ちょっと見劣りする感じの曲ではありました。


〈追記〉2022/10/04

この曲も2009年リマスターや米国キャピトル盤がホームページ作成後に出ているので、それらを聞いてみました。

2009年リマスター盤「パストマスターズ(ステレオ)」

モノマスターズに比べ、音はクリア。
ジョージのギターの音も伸びやか。
突出して何かの楽器の音が耳に残るようなミックスはされておらず、とても常識的できちんとリマスターされたものだと感じました。


2009年リマスター盤「モノ・マスターズ(モノラル)」

楽器やボーカルの分離というよりも、曲全体の勢いを大事に、音が固まってくる印象。
各楽器の音もやや“こもり気味”に聞こえるが、全体的には聞きやすくなっている。
ただもうひとつ“突き抜ける”ような感じがない。


米国・キャピトル盤「BeatlesⅣ」ステレオ

ジョンのボーカルが艶やかに聞こえて、とてもいい感じ。
リード・ギターのフレーズもとてもよく聞こえる。
ジョージがダビングで弾いていると思われるが、ギター二台の音も分離よく両方のフレーズも音色もはっきりとわかります。
リンゴのドラムはやや引っ込み気味。
全体的にまとまりのよいミックスとなっています。


米国・キャピトル盤「BeatlesⅣ」モノラル

聞きやすいが、ジョンのボーカルになぜか霧がわずかに掛かっているような感じがして視界がやや悪いような感じに聞こえる。
ジョージのギターはフレーズ等はっきりと聞こえるものの、ミックスはやや抑えめの音量で、もうひとつ前に出るようにしてもよかったのかもと思いました。
全体的にはちょっと不完全燃焼か。


“内緒盤”の、なんと「オールディーズCD化」モノラル

これが一番じゃないかと思われる音のクリア度だが、全体的にはマイルドなミックス具合となっており、素晴らしい出来上がり(^_^;)・・これでいいのか。
各楽器の音色もベストな感じで、ボーカル、ギター、ドラムともにフレーズもよくわかり、安心して聞く事ができた。


あと、“謎”のリンゴが反対したシングル化について上記を聞きながら考察したのですが、リンゴのプレイは“キレ”もよく、リンゴらしい叩きぶりなので、自己のプレイに不満があったわけではなさそうです。
私もここに書きましたが、曲としてのスケール感というか、“力”がシングルにするには不足していると感じたんじゃないかと思います。
ドラマーって大局観がある人が多いので、リンゴの“正しい判断”だったのだということに結論づけたいと思いますd( ̄  ̄)

 

2022/09/23

【The Beatles 研究室・復刻版】Abbey Road[B-11]Her Majesty

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。
今回は、アルバム「アビー・ロード」から「ハー・マジェスティ」を取り上げます。
英国では、女王の国葬が行なわれたばかりですが、この曲は、ポールが女王陛下を歌った曲で、ギターを爪弾きながらつぶやくように歌っています。

日本では、今年「エリザベス 女王陛下の微笑み」という映画が公開されました。
女王在位70周年の祝福の年として2021年に製作されたものですが、その映像中にもポールが女王陛下と会話するシーンがありました。
そしてもちろんこの曲「ハー・マジェスティ」もラストのエンドロールで流れていました。しかもアルバム以上に長い“フルバージョン”で!

 

 

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“ユー・ネヴァー・ギブ・ミー・ユア・マネー”から始まるアナログ盤で言うB面3曲目からのメドレーが“ジ・エンド”の大団円を迎え、ロックミュージック史上最高の演奏を終えると20秒ほどの沈黙があり、「ズジャン!!」というコード音の後、この曲が始まります。

女王陛下に対して、「女王陛下は、なかなかプリティ・ナイスガールだ、あんまりおしゃべりは上手じゃないけど、いつか“モノ”にしてやる」という歌詞をアコースティック・ギターのつま弾きでポールがわずか23秒で歌います。

しかも最後の音はスッと絞られてしまいます。
ビートルズの数ある名アルバムの中でも、屈指の、そして空前のメドレー、名演奏のあとに、このジョークはさすがビートルズと言いたいところですし、素晴らしい演奏の余韻が残るなか、気取ったところを残さずに下卑た感じで終わらせるのも“彼ら”らしいと思いました。
サージェントペパーの最後みたいです。

この話には、後日談があって、実はこの曲、B面の“ミーン・ミスター・マスタード”と“ポリシーン・パム”の間に本来は入っていたのですが、通して聞いたポールが「これはいらないから捨てろ」と言ったことから始まりました。

「どんなクズ音源でも捨ててはならぬ」という社則を忠実に守ったエンジニアがアルバム録音テープの最後“ジ・エンド”の後に余裕をもって20秒、間隔をあけて、保存しておいたのでした。
チェック用のアセテート盤には、エンジニアも忘れてしまった「ハー・マジェスティ」が残されたままとなり、チェックしていたポールが最後に入っていたこれを聞いて「おもしろい、残そう」と言い出して、世紀の大傑作のラストにこの“冗談”が残ってしまったわけです。

ですから、“ミーン・ミスター・マスタード”の最後のコード音がそのまま、この曲の前に「ズジャン!!」と入ってしまったままになっているのです。

ビートルズはこのアルバムを女王陛下に送り(よくやるよ)、陛下からはお礼状が届いたというおまけつきです。向こうの皇室はジョークもわかってくれたようです。

そして、このアルバムは全世界で最大のセールスを記録し、マイケル・ジャクソンの“スリラー”に抜かれるまでアルバムセールスの記録を誇っていました。


〈追記〉2022/09/23

この曲についても、ホームページ作成後「アビー・ロード・アニバーサリー・エディション」が世に出て、いくつかのテイクが手に入ることとなりました。

それら音源について再度聞いてみて追記いたします。


2009年ステレオ・リマスター盤

ギター以外に楽器もなく、ものすごいサウンド・エフェクトがかかっているわけでもなく、しかも26秒(このCD)という曲の短さ!なんとも言いようがありませんが、ポールの声には割と深いエコーがかかっています。ギターの音は、繊細というか細くてシャープな感じで録られています。


アビー・ロード・アニバーサリー・エディション盤

こちらはポールのボーカルにエコーはほとんどかかっていません。生声をそのまま生かしたようです。なので逆にその場にいるような感覚になります。
ギターの音は、割と“こもり”気味というか、なにか個室で秘かに弾いているような雰囲気をねらったのか、低音の方が強調され、オリジナルバージョンの方がきれいな音に聞こえました。


アビー・ロード・アニバーサリー・エディション Disc One に収録されたもの

これは録った時の自然な音になっているように感じます。
ここでは、三つのテイクが入っています。
一つ目はオリジナル・バージョンと変わらず自然な感じ。
二つ目のテイクは冒頭間違ったり、ちょっとノドがいがらっほい感じ。
三つ目のテイクは、オリジナルでは消えてしまっている最後のギターの「ポーンッ」ていうポールのギターの締めまで入っています。
エリザベス女王の映画で使われたテイクはこのテイクか。


アビー・ロード・アニバーサリー・エディション 「セッションズ」に入っている「The Long One」
※アビーロードB面のメドレー中に本来「ハー・マジェスティ」が入っていたところに実際収めてメドレー全体を編集し直したものです・・貴重!

「ミーン・ミスター・マスタード」と「ポリシーン・パム」の間に「ハー・マジェスティ」が入っています。
もともとはこういう並びだったんですけど、“いまいち”据わりが悪いというか、居心地があまりよくないように感じました。

あの「ズジャン」というオリジナル盤の冒頭に入っていた音から始まり、なるほどここにこうして収まっていたのかとまずは納得。

で、曲の終わりは、オリジナル同様にポールのギターの“締め部分”はカットして、そのまま連続させる形で「ポリシーン・パム」が被さるように入ってくるように編集されていました。

実はこのアニバーサリー・エディションが出る前にラジオで日本のDJの方がこの部分を自分で編集して作ったメドレーを流していたのを聞いたのですが、そっちの方が「本当はこうだったんじゃないか」というくらい“鮮やか”な手際で編集されていました。
ようするに、編集によっては、このメドレー中程で「ハー・マジェスティ」が入ってくる方が良いのかも・・と思わせることも出来たということで・・。

でも、最終的判断はあのポピュラー・ミュージック史上に残るアルバムの流れで遺っているわけで、それが正解なんだと納得することにいたしました。
いたずらっぽくて、ビートルズ最後のアルバムらしいと思います。

 

2022/09/09

【The Beatles 研究室・復刻版】Past Masters ・ Volume Two[A-8]Revolution

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。
15年以上前の文なので細部の表現・事実についてはお見逃しください。
今回は、アルバム「パスト・マスターズ Volume Two」から「Revolution」を取り上げます。
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ジョンがアップル・レーベルからのシングル第一弾用に書いた曲ですが、それは元々「ホワイト・アルバム」に収められている「レボリューション“1”」でした。

しかし、他の三人のメンバーにスローなブルース・バージョンはシングル向きではないということで、このアップテンポなロックンロール・バージョンに変更したというわけです。でも、結局シングルA面はポールの「ヘイ・ジュード」に取られてしまったんですけど。

この曲はニッキー・ホプキンスというピアノ奏者を呼んで、エレクトリック・ピアノを弾いてもらっていますが、ちょっと割れた感じの音色とクルクル回るようなフレーズなど、なかなかビートルズに馴染んだ素晴らしいプレイを聞かせてくれます。
ローリング・ストーンズのアルバムなどでも活躍しているミュージシャンです。
ここでの成功が後のゲットバック・セッションでのビリー・プレストン招聘に結びついたのかもしれません。

曲全体は圧倒的なギターのファズサウンドが支配し、豪快で爽快なロックンロールに仕上がっています。元々のスローなバージョンを想像することができないくらい、このアップテンポ・バージョンは出来がいいです。

リンゴはバスドラムとスネアのみでリズムを刻み、これも跳ねながら圧倒的な低音強調リズムになっています。

これを書くにあたり、アナログのシングル盤(日本盤のオデオン・レーベルとアップル・レーベルを所有していたので)、それから米キャピトル輸入アナログ・レコード盤の「ヘイ・ジュード」収録バージョン、そしてこのパストマスターズ収録曲を聞きました。

アナログ・シングル盤はモノラル録音で、実はこれが最高に良い出来でした。
音の固まりになってスピーカーから飛び出してくる迫力、リンゴのドラムの音もステレオ盤と異なり適度に低音が抑え気味で絶妙です。
オデオンもアップルもほぼ同じ音でした。

米キャピトル・アナログ盤はステレオで、右からギター、左にリンゴのドラム、真ん中にジョンのボーカルという配置ですが、低音を強調し過ぎている感があります。アメリカ好みなサウンドなのかもしれません。

CDの方は基本的に上記キャピトルのステレオ盤に準じていますが、ドラムの低音はやや抑えめです。
ただ、ステレオ・ミックスはアナログもデジタルもジョンの声が真ん中から痩せた感じで聞こえてきて、それがちょっと気になります。モノラルでは全く感じませんでした。

レボリューションには、プロモーション・フィルムとして世に出ているバージョンもありますが(クリアなビデオ映像)、ここでのポールとジョージの「ポップ・シュビデュワ」とコーラスが入るものも素晴らしい出来です。
ここでのビートルズは演奏もプレイする姿も格好良すぎです。

レボリューションの詩の中身はどうかというと

「でも、何でもぶっこわせという話なら 悪いけど、僕は“イチ抜けた”だ 憎むことしか知らない人のために金がほしいというんなら 僕にいえるのは“兄弟、ちょっと待った”だ」

「それが社会の構造だっていうんなら 自分の精神構造をまず自由にしたほうがいいんじゃないの」

など、ジョンらしいものになっています。訳詞を見ながら聞くのもいいかもしれません。

トレブリーでノイジーなギターサウンドと共に、ジョンの世界を堪能できる一曲です。


〈追記〉2022/09/09

このオリジナル・ホームページを書いた頃には、まだ2009年リマスター盤が出ていませんでした。
なので、今回そのリマスター盤を含め、現在聞くことのできるバージョンを聞いてみて、追記いたします。

さらにマッシュアップされた「LOVE」バージョンや、近年出された「ホワイト・アルバム」のデラックス・エディションに入っているものもあり、さらにさらに、レボリューションには、「レボリューション1」や「レボリューション9」と、もともとレボリューション9が演奏の後部に付いているものもあり、「ホワイト・アルバム」の曲を研究・ご紹介のときにもそれらについて書こうと思っています。

とりあえず今回は、テンポの早いシングル向けの「レボリューション」に近い録音を聞き直してみます。

まずは、デラックス・エディションの「イーシャー・デモ」から

ジョンがアコースティックギターでオリジナルと同じくらいのテンポで歌っています。
複数人の手拍子も入っています。楽器というか、演奏はそのギターと手拍子のみです。
意外とシンプルでいいです(*゚▽゚)ノ
ちょっとくだけた感じのコーラスも入り、リラックスした演奏はとても楽しい。
曲全貌はもう出来上がっていて、あとはエレキ・ギターやベース、ドラムをどう演奏するか、みたいなところまでいっています。

次は「モノ・マスターズ」

非常にバランスよく楽器の音が聞こえるし、スピーカーから“一体”となって音が飛びだしてくる感じです。
ギターの音などは激しくオーバーロードしているにもかかわらず、耳障りとなることなく聞きやすい。ジョンのボーカルの音量も抑制が効いています。まさに“ちょうどいい”というミックスです。

次は2009年・ステレオ・リマスターの「パスト・マスターズ」

アナログでは違和感のあったドラムやベースの異常なくらいの突出した音量も制御されています。
ディストーションのかかったギターもうるさくなり過ぎないところで抑えられていて、こちらも聞きやすいと感じました。
ジョンのボーカルは、モノラルよりも生音っぽい印象があります。
リンゴのドラムもスネアの音などとてもカッコイイ音でミックスされています。

次は「青盤」のリマスター

上記ステレオと同じミックスのはずですが、なんだかこっちの方がワイルドなサウンドに感じます。ギターの音も歪み具合が強いように感じる・・そんなことはないはずなのに。
でもって、ボーカルなどの音は角が取れているというか、“面取り”したみたいな“まろやか”さを感じるという・・気のせいなのか (・_・;・・でも、とてもいいミックスだと思いました。

続いてマッシュアップ・アルバムの「LOVE」から

音は少し“もこもこ”している。だが、バスドラムやベースはけっこう思い切ってボリュームを上げています。
ギターは過剰なくらいにオーバーロードしている部分を強調して、ハウリングもそのまま生かしている。
これはけっこう“きつい”感じで作っていて、聞いているこちらも“しびれ”ました。

デラックス・エディションの「セッションズ」に入っている「テイク14」

これは、演奏だけでボーカルのないものです。
このくらいギターのディストーションは効かせようというような“探る”段階なのかもしれません。
ジョン独特のハンマリング・オンをしながらのリズム・ギターをよく聞く事ができます。
本番の音はさらに過激になっていくのですが、このバージョンも面白い。

同じくデラックス・エディションの「セッションズ」の「アンナンバード・リハーサル」バージョン

こちらはまだハードなギターサウンドになっていない頃のもの。
ジョンのギターは“生音”に限りなく近い。
ジョージもまだどう弾こうか試しながら弾いています。

 

2022/08/25

【The Beatles 研究室・復刻版】Beatles For Sale[A-3]Baby's In Black

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2004年から2008年にかけて作成したホームページ「The Beatles 研究室」・・2009年リマスター発売後の一部追記も含めてのブログにての復刻版です。ほぼ当時のまま、そして復刻後追記も付しております。
15年以上前の文なので細部の表現・事実についてはお見逃しください。
今回は、アルバム「ビートルズ・フォー・セール」から「ベイビーズ・イン・ブラック」を取り上げます。
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ジョンとポールの共作で、しかも二人仲良くハモるという、ビートルズファンとして一番うれしい展開です。
イントロは唐突ですが、でもジョンとポールの歌声が聞こえてきて、それもすぐ忘れてしまいます。
特にサビの部分のポールが高い方を歌うところは最高に盛り上がります。

特筆すべき部分は、やはり、リンゴのドラムです。
なんでもないようなリズムを刻んでいますが、右手のシンバルは、はねるようなリズムを安定して叩き、左手のスネアはワンショットずつリムショット気味だったり、はっきりストロークしたり、16分音符をちょっと入れてみたりして、平凡なこの曲をちゃんとした曲にするのに効果大です。
途中で右足だけのバスドラムでリズムを刻む部分も工夫たっぷりです。

1965年から1966年にかけてのコンサートで、この曲は取り上げられています。
もちろん1966年の日本武道館公演でも歌われています。
日本人にとっても思い出の曲です。


〈追記〉2022/08/25

この曲も今となればいろいと聞くことのできる音源がありますので、取りだして聞いてみました。

米キャピトル盤の「ビートルズ'65」ステレオ・バージョン
ジョンのメインボーカルもバックのポールのボーカルもはっきりと聞き取れます。
リンゴの刻むシンバルのリズムもとてもクリアに聞こえます。
曲の楽しい感じがよく伝わってきます。

同じく米キャピトル盤「ビートルズ'65」モノラル・バージョン
ボーカル、楽器、どの音もはっきりと聞こえる。
英盤2009リマスターよりも“押し出し”が強い。特にコーラス部分が気持ちよいくらい前に出てくる感じがする。
リンゴのタムタムのフィル・インも迫力がある。

2009年ステレオ・リマスター版
米盤と異なり、ジョンとポールのボーカルが一体となって聞こえてくる感じ。
リンゴのドラムもやや後方にいる感じに聞こえます。
リンゴのリズムがバスドラムだけになる部分もややぼやけた感じに聞こえます。

2009年モノ・リマスター版
全体がとても自然なバランスで、とても聞きやすい。
ギターの音も突出した感じはなく、楽曲の中に自然に存在しているように聞こえます。
リンゴのスネアの“キレ”がとても良いことも発見!

武道館公演7月1日バージョン
とてもテンポが遅い。テープを遅く回しているのかと思うくらい。
ギターソロが始まると、歓声が沸きあがり、オーバーロードして音が歪んでしまうくらい。
バンド全体が確かめるような感じで演奏している。

武道館公演6月30日バージョン
7月1日よりは少しテンポは速いが、それでも“ゆっくり”な感じ。
観客の声を抑え気味に録った武道館初日なので、観客の声で音が歪んでしまうことはない。
どちらかというと、ポールがうしろからジョンを支えて引っ張るような感じで歌っているのが印象的。

ライブ・アット・ザ・ハリウッドボウル
ジョンはやや笑いながら余裕のボーカル。
テンポはややゆっくりめ。
ジョンとポールはお互いの声が聞こえている感じがして、確かめ合いながら歌っているように聞こえる。
ポールの高音で歌う部分は声を“張って”、力が入っている感じ。
ベースの音もかなりしっかり入っている。

シングルCD「リアル・ラブ」に入っているもの
1965年8月のハリウッドボウル公演のものかと思われるが、音はかなりクリア。
ジョンはうれしそうに歌っている。ポールも誇らしげ。
観客の声も歪まずに入っている。

シェイ・スタジアム1965年バージョン
リズムはレコードと同じくらいのスピード。
音の分離はよくないが、ジョンとポールのボーカルはよく聞き取れる。
演奏はやや“ながれ”気味で、メリハリに欠ける。

 

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